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30.俺、料理に挑戦してみたい!

なんか料理パート書きたいなぁ。でもあまり自炊とかしないんだよなぁ。ま、できる範囲で適当に書けばいっか!

て感じて生まれたのが今回の話です。

「その紙は?」

「手紙だ。これを貴様らに届けてもらいたい」

「届けるって、誰に?」

「王都の東門を出てすぐに小さな村があるんだが、その村のトレイジディ一家だ。そうだな、ついでに泊めてもらうがいい」

「ここに泊まっちゃダメなのか?」

「言っておくが、我は貴様らと一つ屋根の下などごめんだ」

「ああそうかい」


 手紙を受け取って部屋から出ようとする俺の背中に、クロード声をかけた。


「にしても、貴様が『私』とはまた、随分と丸くなったものだな」

「うっせ」


 俺はぶっきらぼうに返すと、今度こそ部屋を出ていった。


 村に向かう道中、クロードが最後に言った言葉についてしつこく聞かれたが、俺は鋼の精神力でもって無視をし通した。

 村に着いた俺は、通りがかった村民に声をかける。


「トレイジディ一家をご存知ですか?」

「ええ、まあ。アンタもスクープだなんだって聞きに来たクチかい?ならやめときな。あの家族は今はアンタらのくだらない取材に応じられる程元気じゃねえんだ」

「えっと、私はただ手紙を渡すよう頼まれただけなのですが……何かあったので?」

「おや、そうだったのかい。すまないねえ、勘違いして」

「いえいえ、お気になさらず。それより、何があったかお聞きしても?」


 親切な村民に話を聞いたところ、どうやらトレイジディ家の娘さんがひと月程前から行方不明らしい。

 そして行方不明になる少し前から、不審な人物の目撃情報もあったため、関連性が疑われているとか。

 また、その不審人物が帝国の手の者ではないかとの噂もあるらしい。


「不審な人物ねぇ……話してくれてありがとう。お礼に一つ、とある黒いメガネから聞いた話なんだが、帝国が王国に宣戦布告したらしい。明日辺りには情報が広まるとは思うが」

「なんだと!?いや、でもクロードさんが言うなら……ありがとう。村の皆に伝えてくるから。あ、ピアソンの家はこの村で二番目にデカい家だからすぐ見つかると思うよ。それじゃ!」

「あ、ありがとう……」


 黒いメガネで通じるなんて、流石というか何というか。


 情報を手に入れた俺たちは、トレイジディ一家のものと思われる家の扉をノックした。


「トレイジディ一家はここで間違いないか?クロードから手紙を渡すよう言われてきた者だ」


 暫くすると扉が開き、中から若い男性が姿を現す。

 その男の頬は痩せこけ、明らかに弱々しく元気がない。


「どうも、ピアソン・トレイジディと申します。クロードさんからの手紙という事でしたが……」

「こちらです」


 ピアソンは手紙を受け取って覇気のない笑顔を見せる。


「どうも。折角ですからどうぞ上がっていってください。中で話しましょう」


 そう言って家の中に案内するピアソンは幽鬼のようなユラユラと今にも倒れそうな歩き方をする。


「お邪魔しまーす」

「お、お邪魔します」

「おっ邪魔しマース」

「おっ邪魔っしまぁ」


 俺たちは家の中に入ってピアソンの後を追う。若干二名テンションが高い気がするのはきっと気のせいだろう。

 俺たちは彼に促されるまま椅子に座り、彼が出したお茶を飲む。

 若干二名が一気飲みしておかわりっ!などと言っていたが空気を読めと言いたい。

 そしてそのオーダーを嫌な顔せず受けているピアソンにそれでいいのかとも思う。


「そうか、アイツはまだあの事を知らないんだったな」


 ピアソンは手紙を読むと、一言そう零した。


「それでは、やる事も終わったので私たちはもう行きます」

「君たち、まだ宿泊先も決まっていないのだろう?暫くここに泊まっていくといい」

「え、いいの!?」

「久々の屋根のある家、満喫するしかないわ!」


 ピアソンの言葉に真っ先に反応したのは、やはりハーフエルフと精霊の二人だった。

 まぁ泊めてくれると言うのならば否やはない。


「いいのか?」

「もちろんです。それに言ったでしょう?中で話しましょうって」

「ではお言葉に甘えて、暫く世話になろうか」


 ふと外を見ると、日が沈みかけていた。


「もうすぐ日が落ちる。折角だし、今日の夕飯は私が作ろうか。とは言っても、簡単なものしか作れないが」


実は食材をユリウスと街を歩いている最中に大量に仕入れたのだ。折角だからここで少し使ってしまおう。


「いいのかい?」

「これから住まわせてもらうのだから、これくらいはさせてくれ」

「そうか。じゃあ、よろしく頼むよ」


 それから俺は食事の準備を始めた。

 米と釜を取り出して釜に水と米を適量入れて米を炊く。

 その間に味噌汁を作ってしまおう。

 出汁は……昆布でいいや。

 鍋に水を適量入れて昆布を投入。それから弱火で鍋や昆布に気泡が出始めるくらいまで熱するのだが、その間に乾燥ワカメを水で戻して水気を抜き、豆腐を賽目状に切る。


「あとは……」


 取り敢えずキャベツを取りだし千切りにする。そして人数分の皿に乗っける。


「えっと……」


 豚ロース肉と薄力粉を取り出して肉を薄切りにし、薄力粉をふるう。

 今度はボウルと生姜、醤油、砂糖、料理酒を取り出し、生姜は皮を剥いてすりおろし、ボウルにすりおろした生姜とその他を入れて混ぜる。ちなみに量は俺の当てにならない目分量である。


 次は沸騰しそうな鍋から昆布を取り出して、豆腐とワカメを入れ、そのまま煮立たせ、沸騰して具材にもよく火が通ったら一度火を止め、沸騰が収まったら味噌を溶き入れる。


 これで味噌汁は完成かな。


「何を作ってるんですか?」

「夕飯」

「ルクス様がご飯を!?これはなにか良くないことが起きる前兆……?」

「ティア、君は私をなんだと思ってるんだ……あ、そうだ。米が炊けたら火を止めてくれないか?」

「分かりました。赤子泣いても蓋取るな、ですよね?」

「お、おう」


 何故それを知っているのだろうか。


 そんな思考は他所にやって、フライパンを取り出して中火で熱し、ゴマ油をひいて薄力粉をふるった豚ロース肉を入れてコンガリと両面に焼き色がつくまで焼き、先程作ったタレを投入。

 ……玉ねぎも入れよっと。

 即座に玉ねぎを取り出して刹那の間もなく切られた玉ねぎが投入される。

 後は中火で炒め合わせて全体に味が馴染んだところで火からおろす。


「まあ悪くない出来だろう」


 出来上がった生姜焼きを千切りキャベツの乗った皿に盛っていけば今日の夕飯は完成でいいかな。


「ティア、そっちはどうだ?」

「もう少しです」


 見ると釜の蓋が物凄い勢いでコトコトコトッとなっていて、吹きこぼれもちょくちょくでている。なんか見ていて不安になる。


「も、もう……」

「いえ、まだです」

「けど……」

「まだです」

「……」

「……」


 そのまま二人して無言で釜を眺めていると、更に激しく吹きこぼれが出始める。その時、ついにティアが動いた。


「ここですっ!」


 シュバッ!という擬音が聞こえてきそうなほどの俊敏さで蓋を取る。

 吹きこぼれが収まると、ティアは蓋を隙間を少し開けて閉じ、そこから中を覗いて何かを確認すると蓋を完全に閉めて火を消した。


「あとはこのまま少し蒸らしておけば完成です。この間、絶対に蓋を開けてはいけませんよ?」

「あ、ああ。気をつけるよ」


 何と言うか、今のティアには言い知れぬ気迫があった。

 そして俺は、料理冷めちゃわないかなと少し心配になったので、料理に保温の魔法をかけておいた。

あらゆる部分があらぬ方向に折れ曲がった少女の骨を出来るだけ元に戻そうとする夢を見ました。

思い返してみるとすごい怖いのにやってる時は特に何も感じずに淡々とやってた自分に恐怖した今日この頃。

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