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3.黒の魔王カゲツ・ヒラツキ

 クロノスさんはそれから色々話してくれた。

 魔王の事。勇者の事。神々の事。そして、それらが引き起こした大戦のことを。


 話を要約すると、カゲツ・ヒラツキという強大な魔力を持って生まれた少女が、不幸の象徴だとして虐げられていたらしい。だが優しい彼女はそれでも、人々に危害を加えず、寧ろその力で、人を助けていたという。

 だが、人々は彼女を恐れた。人の繋がりは九割の打算と一割の信頼でできている。当然、無償の助けなど、そんな都合のいいものは無い。信じられらない。どんな事にでも必ず代償は存在する。その代償を、彼らは恐れた。

 それは何故か、自分達がそうだからだ。自分がやっている。ならあいつもそうするに違いないと、そう考えたのだ。タダより怖いものは無いとはよく言ったものだ。

 ともかく、人々は恐怖し、神に縋った。そして神も、あまりにも強大な力を持った少女を脅威だと感じていた。

 故に神々は、異界から六人の勇者を呼び出した。勇者は神々から強大な力と、強力な神器を授かり、魔王を倒すように命じられた。

 それが、今では神話ですら語られることのない、人魔大戦の始まりである。

 勇者は魔王を討つべく、魔王のいるという場所へと赴いた。

 一方黒の魔王の烙印を押されたカゲツ・ヒラツキは、彼女に救われ、彼女についていくことを決意した者たちと共に小さな村を作り、慎ましく暮らしていた。

 だが、勇者たちはその村に火を放った。村の者たちは抵抗したが、神から強大な力を授かった勇者には適わず、無惨にも陵辱され、殺されていった。

 それを見た彼女は大層怒ったそうな。実行に移した勇者ではなく、それを命じた神に。彼女はそのまま怒りに任せ、その力を行使した。その力の矛先は神々に向き、その荒れ狂う膨大な力は、神々を消滅させた。

 だが、六人の勇者は、その力の余波で瀕死になりながらも、最後の力で彼女を封印した。

 そして残ったのはクロノスと、彼女を封じている魔力の結晶だけだった。


 て感じだ。


「我は己の弱さを呪ったよ。我に力があれば、あれ程惨めな結果にはならなかった。同じ過ちを二度と繰り返さぬよう、ひたすら自分を磨いた。まぁ、もうその時の文明は滅び、神々も数十年前に新しい者に代わった。結局我は、仇も取れず、惨めなままこれまで生きてきてしまった」

「……」


 なんと言うか……相変わらずというか、やっぱ人間は人間だなぁ。

そんなことを漠然と考えていると、俺は無意識の内に口を開いていた。


「あなたは同じ過ちを二度と繰り返さぬようと言ったが、過ちを繰り返してはいけないのは人間の方だ。あなたは非力な存在だったかもしれないが、心はとても強い。それにもう、あなたは非力なんかじゃない。それに、そこの彼女だって封印されているだけなんだろう?だったら俺が、どうにかして封印を解いてやる。それからもう一度やり直そう!今度は間違えないように!」


 ……俺は何を言っているのだろう。クロノスさんに感化されて勝手なことを口走ってしまった。

 なんだ封印を解くって。少なくとも、一文明が滅びるくらい長い年月封印されてるんだろ?そんな強固な封印を、この世界に来たばっかの俺が、本当に解けんのか?


「……全く、何故そこまでしようとするのか、理解に苦しむ。だが、こんな我のことを認めてくれるとは思わなんだ。そうだな、もし封印を解けたなら、またカゲツ様とやり直そう。今度は道を違わぬように」


 ま、いっか。クロノスさんもなんかいい表情になったし。


「そうだ小娘、名を聞きたい」


 ん?そういえば名乗ってなかったっけ?


「えっと、俺は──」


 待て、名前?俺の前世の名前は小太郎だが、この世界でも小太郎と名乗るのは些かナンセンスではないか?そもそも、今の俺は女なんだし、もっと可愛らしい名前でもいいんじゃないか?


「俺の名前は……えっと」

「どうした小娘。もしや名前が無いのか?」

「え?えっと、そう!名前が無い!」

「お、おう。そうか」


 ちょっと食い気味に言ったせいか、少しクロノスさんが引いている。ここは話題を逸らそう。


「えっと、そうだ。クロノスさん、なにか封印を解く良い方法とかないか?」

「そんなものがあるならとっくにやっている」

「ですよねぇー……」

「あぁだがまぁ、そうだな。我も思いつく限りは色々やってみたんだがな。見ての通り、どうにもならなかった。最後にやったのは確か……魔力を吸わせる実験だったか。だが魔力を吸わせてみたが、より強固になってしまったし……」


 ふむ。完全にお手上げってことね。

 ん?魔力を吸わせると強固になった?


「ならこの結晶の魔力を吸ったことはあるか?」

「ム、魔力を吸う?その発想はなかった。だがそれは、魔力を吸って枯渇させるということだろう?この結界の魔力を枯渇させるというのは不可能に近いぞ?現にこれほどの時間を、強度を保ったまま存在し続けている」

「全くもってその通りだな……」


 取り敢えずできるかどうかだけやってみるか。


 魔力の結晶の前まで行き、両掌で触れる。それから結晶中の魔力を感知。

 感知自体はとても簡単だった。どうやらこの結晶自体が魔力でできているらしい。だが、この魔力を操作するとなると難しい。

 だがしかし、とても困難だがやってやれないことはない。俺のすぐ側には、これから困難に立ち向かおうとする奴がいるんだ。なら俺もこれぐらい乗り越えてやらないとな。

 

「やってやろうじゃねぇか……!」

今日はこれくらいにしようかなぁ……。いや、もう一話くらい書いてもいいかなぁ……。迷いますね。

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