21.コイツといるとどうにも話が進まない
ドイツ語ってカッコイイですよね!
黒→シュヴァルツ カッケェ!
豚→シュヴァイン カッケェ!
ボールペン→クーゲルシュライバー カッコイイ!
鼻水→ナーゼンシュライム カッケェけど日本語に直訳すると鼻スライム。
ここまでそんなでもないのがめっちゃカッコよくなってたし、日本語でカッコイイ言葉なら更にカッコよくなるのでは!?
死神→ゼンゼンマン ……ナンデヤッ!なんでそんなアソパソマソで出てきそうな名前しとんねんッ!
以上、面白いドイツ語でした
「まぁこんなところかな」
「なるほどね」
精霊王の話を聴きながら歩いている内に、サハランドの首都が見えてきた。
「それはそうと、そろそろ姿を隠してくれないかな。パル」
「ああ、分かっている。それと、愛称で呼ばれるほど親しくした覚えはない」
そう言うと、彼女は姿を消す。何度見ても惚れ惚れする程の精度だ。
「そうかい?私は良い友好関係を築けそうだと思うけどね。あと、無理に尊大な態度を取ろうとしなくてもいいよ」
「気づいてたの?」
「君の喋り方を見ていれば、そういった態度が苦手なことはすぐに分かる」
「アタシの演技が下手だって事?嬉しくない発見ね」
「そもそも何故そんな喋り方を?」
「私の目標を邪魔されない為には、アタシが奴らにとって絶対的強者である必要があったのよ」
「それで形から入ったわけか」
「その通り」
まぁそれはそれとして
「それで、君が自然エネルギーを集めるのはミリアーネ嬢を助ける為なのは何となくわかったけど、どうして自然エネルギーが必要なのかな?そもそも自然エネルギーとはなんだ?」
「そうね、ミリアの話に夢中で忘れていたわ。あれは、ミリアが目を覚まさなくなって幾日かした後──」
話を要約すると、あれから数日、彼女はとある文献を見つけたそうだ。そしてその文献に記せれていたのが、仮称自然エネルギーだったらしい。というのも、どうやらそのエネルギーの名前はその文献には載っていなかったそうだ。だが、自然が多い場所に多く存在するという記述があったので、彼女は自然エネルギーと呼称したらしい。
そしてその文献には、自然エネルギーの活用法も記されていた。精神的疲労の回復や魔力回復から、果ては植物状態の治療まで、外的損傷以外ならほぼなんでも治せるらしい。
それで、彼女はミリアの目を覚ますために自然エネルギーを集める事を決意したらしい。精霊王になれという世界の意思が聞こえたのもその時だそうだ。
「ふむ。私の他に仮称自然エネルギーの塊をぶつけた事は?」
「あるわ。あの時は──」
「そこのお前ッ!何一人でブツブツ話しているんだ!怪しいヤツめ」
「えっ!?あ、いや、違う!私は別に怪しいものでは」
「ならそのフードを外せ!顔を見せろ!」
パルと話しながら歩いていたら、中年の門番に止められてしまった。
「それは……」
「なんだ?できんのか?まさか指名手配されているから顔を見せられないのか?」
「誤解だ!私は肌が弱くて」
「プフークスクス」
「君は後で殴る」
「プッ!?」
「何をさっきから意味の分からんことを!」
「ち、違ッ」
「ならさっさと顔を見せろ!なぜここへ来た!」
「だからフードは下ろせないって」
「ならここへ来た目的を言ってみろ」
「旅の途中で宿をとりに」
「嘘くさいわ!」
「何を言ったら信じてくれるの?お兄さん」
「おにっ、いや、別に」
お?お舘ればいけそうだな。
「え、違うの?とてもお若く見えるのに」
「そうか?あはは〜照れるな〜」
「えぇ、とても輝いて見えます」
あ、この人禿げてるわ。
「輝いて見えるってどこが?」
「あ、いやその〜……頭が?」
「ブフッ!?」
「テメェバカにしてんのか!いいからさっさと面ァ見せやがれ!」
「肌弱いから見せられないって言ってるだろ!テメェの記憶力はミジンコ以下か!」
「理不尽な逆ギレね……」
ンだとクソ精霊。
「ンだとクソガキ!テメェ詰所までこい!そこでたっぷり話を聞いてやる」
────数時間後────
もうすっかり陽は落ちて、暗くなった道を、蜜壷亭に向けて歩いていた。
「パルのせいで帰るのが大分遅くなったな。ティアが心配してるだろうな」
「遅くなったのは八割がた貴女のせいよね。あと、ティアって誰?」
「ティアはまぁ、私の付き人?かなぁ」
「難儀な上司を持ったものね、そのティアって子が可哀想」
「君は殴られたいのかな?」
「この理不尽から逃げたいのですが」
「ダメです、それは許されません」
「いいえ逃げます」
「許しません」
逃げようとするパルを、逃げられないよう掴む。
「ウゴッ!?」
「ん?」
その時、俺の懐に入れていた『石』が反応した。
「ぐび、グビづガんデルがらァ」
「あ、スマン」
腕だと思って掴んだのは首だったらしい。まぁ姿が見えないから仕方ないね。
「そう言えば、仮称自然エネルギーの塊を当てたらどうなったのかな?」
「このタイミングでその話に戻るの?」
「お、着いたよ。ここが蜜壷亭だ」
「とことん間が悪いわね」
「じゃあ話は中で聞こうかな」
「了解」
蜜壷亭に入り借りている部屋に戻る。
「あ、ルクス様。帰ってきたんですね」
あれ?思った以上に心配されてない。
「あ、あぁ。調子はもう大丈夫そうか?」
「はい、一日寝たら良くなりました」
「それはよかった」
部屋に戻ると、ティアが出迎えてくれた。帰ってきて、そこに誰かが出迎えてくれるなんて初めてだな。悪くない気分だ。
「この子がティアちゃん?可愛いわ〜」
「え、なんですか今の!?一体どこから……」
「パル、擬態を解いてやれ」
「バァ!」
「キャッ!」
「も〜可愛い〜!」
パルは擬態を解くと同時に、勢いよくティアに抱きついて頬ずりを始めた。
「ル、ルクスしゃま〜。なんでしゅかこのひと」
パルの熱烈な頬ずりの前では喋ることもままならないのか。
「るくしゅしゃま〜!」
「ん?ああ、その変態はパルヴァニモっていって、ここら一体を砂漠に変えた張本人だ」
「パルヴァニモだよ〜!一応精霊王やってるの〜。気軽にパルって呼んでね〜」
「や、やめっ!ちょっ、どこ触って……」
パルがティアの体をまさぐり始める。
「それ以上やるとティアに嫌われるよ」
「猛省しております」
が、俺の一言でパルはティアから離れて、流れるような動きで綺麗な土下座をした。
「あまり変な事しないでくれるかな?話が進まない」
「あの、ルクス様とお話があるなら、早くそちらを済ませた方がよろしいかと」
「グゥ、済まなかった」
それじゃあ話を始めようか。