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19.精霊王の目的

休みの日って午後まで寝ちゃうんですよね〜。今日なんて起きたら14時過ぎだったんですよ。

僕はこういう時、いつも思う事があるんです。一日の大半を無駄にしたって。けど眠りが浅くてよく眠れないと、せっかくの休日なのに疲れがとれないじゃないかと、勿体なく思ってしまいます。休みの日の寝起きは少し気疲れするって、今日思ったんです。

っと。それはさておき、本編をどうぞ

 うーん。この虫けら……じゃなくて精霊王をどうしようか。大分落ち着いてきた様だしもう少し様子を見てみるか。


「アタシは……負けたの?」

「そうだね。あの剣を私にクリーンヒットさせれていれば君の勝ちだったんだけど、惜しかったね」

「そう、ならさっさと殺しなさい」


 漸く喋れるようになったらしい。正気に戻った途端に負けただの殺せだのと言っているが、残念ながら私にその気は無い。


「勘違いしないで欲しいんだけどさ、別に私は君を殺しに来た訳じゃない」

「……どういうこと?」

「言ったはずだよ、私は君に選択をして欲しくて来たんだ」

「そんな話もあったか。でも、それなら私は貴様に敵対した。つまり、二つ目の選択肢を選んだって事にはならないのか?」


 俺はコイツを殺すなんて言っただろうか?よく思い出して欲しい。俺は名前を奪って自我を殺すと言ったんだが。


「君は思い違いをしている。私はあの程度でへそを曲げるほど狭量では無いし、そもそも私は『君を殺す』ではなく『君の名前を奪う』と言ったんだ」

「変わらないだろう。精霊にとって名前の喪失は死と同義だ」


 精霊は物質としての形を持たない。それ故に名前によって現世と自らの存在を繋ぎ止める必要があり、それに伴って個性、即ち人格を形成されるわけだ。

 そんな精霊の名前を奪うということはつまり、精神の死を意味する。


「精神の核が無くなるだけだろう。抜け殻に新たに入れれば問題は無い」

「狂人め」

「失礼な奴だな」

「アタシ達精霊は実験動物か何かか?」

「そうかもね。君が使っていた自然エネルギーのこともそうだが、精霊に同じ名前をつけたら同じ精霊ができるのかとか調べてみたいことが幾つかある」

「理解できんな」

「そうかな?至って普通の心理だと思うけどね」


 まあ、地球でいうところの道徳だの倫理だのに反することではあるだろうがね。


「それで、君はどっちを選択するのかな?」

「一つ目を選択したいところだけど、アタシはそっちも選べそうにない」

「というと?」

「アタシの目標のためには大量の自然エネルギーが必要だ。そしてその目標が完遂できないのであれば、アタシに生きる理由はないということだ」


 そこまで大事な目標なのか。ちょっと気になる。


「それも世界の意思かい?」

「違うッ!……すまない、取り乱した」

「私こそ思慮に欠けていたな。すまなかった、続けてくれ」


 いきなり大声で怒鳴られたのは驚いたが、これは俺が悪い。俺だって今の質問をされたら少々イラッとくるからな。謝罪ついでに邪眼も解いておく。


「おぉ!目が見える!……っと、目標の話だったか?何処から話そうか。そうだな……アタシは人間はゴミ以下の存在だと思っている。卑劣で下賎、醜く薄汚い。ここまで醜悪な生物を、アタシは他に知らない」


 この精霊王の人間への評価は正鵠を射ていると思う。どこの世界でも、人間はクソだ。人間社会は、強者が徹底的なまでに弱者を蹴落とし、劣悪な環境を強いる。そんな負のサイクルで回っている。核問題や環境汚染など、自らの行いで起きた自業自得を他者に押付け、挙句貧困問題解決という弱者の救済とは名ばかりの偽善を強行する。

 極めて利己的で独善的なその態度に、どうしようもなく虫唾が走る。


「それでもアタシには、救いたい人間がいる」

「へー、興味深いな。人間の事を、そんな風に理解している君が、それでも尚救いたいと足掻くほどに好いている存在に興味が湧いた」

「あの子に手を出すって言うなら、例えアタシが死んだとしても、貴様を止めるぞ……!」


 凄まじい気迫!俺ですら一瞬気圧された。


「誤解だよ、興味が湧いたとは言ったが、別に手を出すつもりは無い。そもそも、私は君が守りたい人のことなんか知らないしね」

「その言葉に嘘偽りが無いならいい」


 彼女から発せられていた圧が霧散する。


「それで、その子については教えてくれるのかな?」

「……あの子に危害を加えないと約束するなら」

「勿論だとも」


 何だろう、少しずつ話題が逸れている気がするのは俺の勘違いだろうか?


「本当だろうな?どうにも人間は信用できん」

「ん?私は人間ではないよ?」

「は?どこからどう見ても人間だろう」

「相手を外見だけで判断するのはやめた方がいい」

「内側をもっと見ろということか?」


 精霊王が目を窄める。俺の内側を見ているのだろうか。


「……これは、確かに人間ではないな。魔物に近いか」

「私は吸血鬼でね、人間とはまた別の生物だよ」

「吸血鬼?初めて聞く種族だ」

「っと、そろそろ話題を戻さないと収集が付かなくなりそうだ」

「貴様から話題を逸らしたくせに」


 おっとそうだったか?


「では話題を戻そう」

「あの子についてか」

「その子はどんな子なのかな?」

「とても優しい子だったよ。さて、どこから話そうか」

「最初から」

「長くなるぞ?」

「なら歩きながら話そうか」

「……分かった」


 俺は歩きながら精霊王の話を聞くことにしたのだった。

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