18.素晴らしい精度の擬態、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね
コメント・誤字脱字報告等ありがとうございます。
ルクスという名前は割と使われているという意見を頂きました。確かに、ルクスという名前は、様々な作品で使われていますね。有名所だとSAOや最弱無敗の神装機竜等の作品に使われていたと記憶しております。変えるかどうかは只今検討中です。
さて、精霊王がいるという場所までマッハで飛んできたわけだが、周りには精霊王らしき影は無いな。仕方ない、探知魔法を──
「──ッ!?」
その時、背後に膨大な魔力を感知した。
俺はすぐさま地を蹴って空中へ退避しつつ振り向く。そして飛んできた光と熱波が俺の視界を塞ぎ、顔をジリジリと照りつける。
「まさか、これ程の威力を秘めた魔力を気付かれずに射出できるとは……」
光が収まると、さっきまで俺がいた場所の砂は綺麗な硝子に変わっていた。
「まさか今の攻撃を避けるとはな。人間」
上から声が聞こえてきたが、姿は見当たらない。だが、意識を集中すれば、そこに微弱だが魔力の塊があるのが分かる。相手は精霊。言うなれば魔力の塊だ。それを考えれば、凄まじい精度の擬態。
「いきなり不意打ちとは、酷いじゃないか」
「酷い?何を言い出すかと思えば。いいか?ここはアタシの縄張りだ。そこに無断で侵入して来たということは、何をされても文句は言えないということだ」
俺が文句を言ってやると、仮称精霊王はやれやれと言った感じで言葉を連ねる。
「そもそもなんだ貴様は、王の前で顔を隠すとは無礼なヤツめ」
どうやらコイツが精霊王であっているらしい。
「別に隠している訳ではないんだ。ただ、少し太陽が苦手でね」
そう言って俺は外套のフードを更に深く被る。
「まぁいい。それで、何の用だ?」
「その前に、こっちから質問。君、部下とかいないの?一人?ボッチなの?」
喋っててもあの精度の擬態を維持したままか。よほど用心深い性格なんだろうな。
「いない。そもそもの話、精霊は群れで生活する生命体ではない」
「なら何故王を名乗っている?」
「世界の意思だ」
世界の意思、ねぇ。これは少々面倒な相手かもしれないな。
「王とは何かを束ね導く存在のことだ。いくら世界の意思とはいえ、束ね導くもののないお前が王を名乗るのは、些か不自然でないか?」
俺?俺は何を束ね導くのだろうか。……ティア……かなぁ?
「そんな事を言うために態々アタシのところまで来たのか?この死にたがりめ」
「残念ながらそれは違う。今日は君に、選択をして欲しくて来たんだ」
俺は今まで抑えていた魔力を解放する。その魔力は余りに大き過ぎるが故に、膨大な質量を伴って辺りに拡散する。
「へぇ、やる気?このアタシと」
「君には二つの選択肢がある。一つは自然エネルギーとやらの吸収を金輪際せず、慎ましく暮らすこと。もう一つは、ここで名前を失い、自我を殺されるかだ。さあ、好きな方を選ぶといい」
もう既に擬態が機能していないことを悟ったのか、精霊王が姿を現す。三対六枚の翅をもち、俺の知らない何らかのエネルギーを纏っている美少女。その顔は、心做しか微かに笑みを浮かべているように見える。
「今君が纏っているそれが、君達が自然エネルギーと呼称しているものかな?」
「その通り。けどそれが何か?」
「別に」
精霊王が自然エネルギーを束ねて剣を作る。それに合わせて俺も剣を作り出し、魔力を乗せる。
「なあ、その剣を受けるとどうなるんだ?」
「見て分かるでしょう?自然エネルギーの影響をモロに受ける。それだけ」
「モロに受けたらどうなるのかを聞きたかったんだけど──っと!」
なんの前触れもなく、精霊王は大量の炎の槍を作り出し射出してくる。それを自分に当たるものだけを剣で打ち落とす。
かなりの密度だが、的確に撃ち落としていると、視界がドンドン悪くなっていく。どうやら砂煙が上がっているらしい。
「風……?いやこれは──!」
「今更気づいたの?ここが竜巻の中心になってるって」
竜巻の強風は辺りの砂を巻き上げ視界を悪くする。
マズイな……。このままではジリ貧だ。なんとか空中にいる精霊王に近づきたいところだな。だが飛行能力は持っているが、この風の中で空中に身を投げればあっという間に身体の制御が上手くいかなくなる。
……やりづらいな。
「面倒だ。降りてきなよ、羽虫」
「貴様がここまで上がって来たらどうだ?虫けら」
「──チッ!」
俺の足元に、急に膨大な魔力が現れる。俺は仕方なく後ろに跳んでその場から離脱する。と同時に、大きな火柱が上がる。正に危機一髪だな。
強風に巻き上げられそうになったがなんとか着地。着地した場所は砂漠の砂が硝子と化していた。
「切り刻んであげる。オマケに服を破いてお日様の下に出してあげよう。健康優良児に大変身だね」
足元の硝子片が突如として浮き上がり、風と共に俺の体を削っていく。
「余計なお世話だよ。なんたって私は、日に浴びない方が元気でいられるから、ね!」
地面を思いっきり踏みつけ、衝撃波を生み出し、一瞬だけ被害から逃れる。その一瞬を使い、俺は全力で踏み切って、跳んだ。
俺の体はあっという間に音速を超え、空気を切り裂きながら、まるで一本の槍のように精霊王に向かって猛進する。
だが、精霊王は冷静だった。冷静に持っていた剣を振り下ろす。
ただそれだけの動作。だが、その剣の性質を正しく理解していない俺にとって、動きを乱すのには十分な動作。
俺はその剣の回避を余儀なくされ、結果俺の体は狙いからそれ、精霊王の横をすれ違うように通り過ぎる。
突如──俺の体の奥。決して触れてはいけない何かが、大きく揺らいだ。
「これは……!」
「アタシは運がいい。まさか今の一撃を当てられるなんて」
先程の一撃が体のどこかに微かに触れたらしい。ただそれだけで、俺は体を動かせない。
それにさっきの感覚、俺の中の何が揺れた?
──思考がまとまらない。
「じゃ、改めて」
精霊王が剣を振り上げる。
──仕方ない。
「さよなら」
──邪眼を使うか。
「──ッ!なに、これ?前が見えない。一体アタシになにをしたの!?」
精霊王の剣を振り下ろす動きが止まる。
「悪いがこの戦い、初めから君に勝ち目は無かったんだよ。いや、無いはずだった。まさか自然エネルギーの剣を作り出すなんて思ってもなかったよ」
漸く動くようになった体で精霊王から距離をとる。
「何?何が起こってるの!?」
「ありゃ、聞いちゃいないや。そういや精霊って夜もちゃんと目が見えてるし透視能力も持ってるんだっけ?ま、貴重な暗闇を思う存分体験してよ」
気づけば竜巻は無くなり、天からは忌々しい太陽が私の体を照りつけていた。
「さて、墜ちろ羽虫」
俺は膨大な魔力を上から叩きつける。大きすぎる魔力は質量を持つが、普段の精霊王なら意にも介さないだろう。
だが、今は五感の内最も情報量が多いとされる視覚を奪われ、パニックになっている状態だ。
精霊のような魔力生命体は体を全て魔力で構築している。それ故に、精神の乱れは体の動きにダイレクトに影響を及ぼす。そんな存在がパニックに陥っている中、上から何らかの圧力を受けるとどうなるか。
「なっ!?体の制御が!」
この様に簡単に墜落する。
「おめでとう。空飛ぶ羽虫から地を這う虫けらにジョブチェンジだ。オマケに翅をもいで、元気に大地を駆け回る健康優良児にしてあげようか?」
こんなに遅くなったのにはちゃんとした理由があるんですよ!
空いた時間にちょくちょく話を書いていたら途中でデータが無くなりました。
更にはモンハン好きとしてモンスターハンターライズもやりたい欲が出た結果、ここまで遅れを生じさせる結果になりました。読みたいラノベも溜まっているのでそれも消化したいですね。
全く関係無いんですけどLINEで友達に「○○やりたい」って打った時、やりたいの変換で頭冷やせって出てきたんですけどどういう事でしょうか。因みにスマホのキーボードはSimejiを使わせてもらっています。




