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15.一方カゲツは……

 私の名前は平月華玥(ひらつきかげつ)。ひょんな事から魔王と契約して魔王少女になったの。

 っとおふざけはここら辺にして、私の話をしよう。


 今私は、とある街で衛兵に捕まり、取調室のような部屋で聴取を受けていた。


「君、名前は?」

「大和紫苑です」

「ヤマト?変わった名前だな」

「あ、大和が家名で紫苑が名前です。確かにここらじゃ珍しいかもしれませんね」

「故郷?どこ出身?」

「ここからずっと東にある那雲国(ナクモノクニ)です」

「ナクモ?確かあそこは鎖国中じゃなかったか?」

「はい。抜け出してきました」

「ふむ。それで、本当に身分を証明できるものはないの?」

「すいません……」


 そう。なんとこの街に入るには身分の証明が必要だったのだ。

 そんなこととは知らずに適当にこの街に侵ny……門を飛び越えようとしたら見つかってしまった。

 ……え?そんなことしたらそりゃ身分証の提示を迫られるだろって?あ〜聞こえない聞こえなーい!

 あ、ちなみに大和紫苑っていうのは私の偽名ね。偽名ってスパイみたいで憧れるよね!


「はぁ、君のここに来た目的を教えて」

「冒険者ギルドに登録しようと思って」

「それならなんで壁を乗り越えようなんて思ったんだよ。それ言えば普通に入れたのに」


 そうだったのか!


「おじさん、そういうことは早く言ってよ」

「お前が壁乗り越えるなんて発想しなきゃ何事も無く済んだことなんだよっ!」


 ……返す言葉もありません。


「まぁいい、その腰の剣と、荷物に入ってた予備の剣も、冒険者ギルドがあるくらい大きな街だと珍しくもないからな。今回は見逃してやる。次はないからな」

「ありがとうございます」


 正確には剣ではなく刀だが。まぁいい、見逃してくれると言っているのだから今はそれでいい。

 次はこんなことにならないように周りに気を配ってやろう。


「さてと、冒険者ギルドに行きますか」


 説明しよう!冒険者ギルドとは、世界各国に広く展開し、食器洗いやペットの散歩などの日常の手伝いから国の存亡に関わる重大案件まで、多種多様な依頼を受け持つ、金に汚い慈善事業の様なものである。……金に汚い慈善事業ってなんだ?あと、那雲国(ナクモノクニ)には展開していないらしい。


 なんやかんやで冒険者ギルドまで無事たどり着いた私は、堂々とギルド内に入っていく。昼頃という時間もあってか、中はだいぶ空いているが、まだ昼だというのに酒を飲んでる人もいる。ギルド内の造りはどこも一緒なのか、いつかクロとルーちゃんを連れて入ったギルドと中身はそう変わらなかった。


「よォ嬢ちゃん、ちょっと俺と遊んでかねぇか?」


 受付に向かおうとする私に、大柄で筋肉質な男が話しかけてくる。

 顔が赤いし酒臭い。酔っ払ってるのか。だが足取りは割としっかりしている。

 面倒な相手だ。こういった手合いは投げるか殴るかしとけとルーちゃんが言っていたが、流石にいきなり殴り掛かるのはどうかと思う。いっその事相手から殴りかかってきてくれれば楽なんだけど。

 それと私のキャラどうしようかな。


「おい!無視してんじゃねぇぞこのアマ!」


 少し考えていたら怒られてしまった。

 よし、クール系でいこう。


「悪いけど、君みたいなヤツに構っている暇はないんだよ。帰ってくれないかな?」

「んだとクソアマァ!」


 叫びながら男が私の手を掴もうとしてくる。


 ──次の瞬間、そこにいる誰もが目を剥く事態が訪れる。男の手が彼女の手に触れた、そう思った直後、男は宙を舞っていたのだ。周りの者が正確に知覚できたのはそれより先、彼女が宙を舞う男の顔を掴み、床に叩きつけたところだった──


 床はあまりの威力に穴が開き、つっかかってきた彼は頭が床に埋まる感じになってしまっている。

 おっと、ついやってしまった。殺してはいない……はず……多分……大丈夫だよね?


「おーい、息してるー?こんなところで寝てたら風邪引きますよー」


 呼びかけても返事がない。試しに脈を確かめてみたらちゃんと脈はあった。よかった、死んでなくて。

 生存確認も取れたところで受付へ向かう。


「今の投げ技凄かったですね、どうやったんですか!?……あ、すみません。今回はどういったご用件で?」

「冒険者登録がしたい」

「でしたら登録料として銀貨三枚頂きますが、よろしいですか?」

「問題ない」


 私はそう言って懐から銀貨を三枚取り出し、カウンターに置く。


「確かに。では、こちらの紙に必要事項を記入して、書き終わったら空いてるカウンターに提出してください。もし字が書けない場合がありましたら、ギルドの者に代筆をお願いするといいでしょう」

「あ、それと床の修繕費用は……」

「それならそこで顔面埋めてる人にツケておくので気にしなくても大丈夫ですよ」

「お、おう……」


 意外と強かなんだね……。顔面埋めてる人よ、強く生きて。埋めたの私だけど。

 私は渡された紙に名前、年齢、出身地、特技・趣味と言った必要事項を記入していく。なお、書かれた内容はほぼ嘘の模様。

 書き終わった紙をさっきと同じカウンターに持っていく。


「書き終わった」

「はい、確認しますね。シオン・ヤマトさん十八歳、ナクモノクニ出身で特技は刀術、趣味はよく食べてよく寝ること。これで間違いありませんか?」

「間違いない」


 本当は名前はカゲツ・ヒラツキだし、年齢とか覚えてないし、出身は日本だし、特技は刀術じゃなくてもよかったし、間違いしかないんだけどね!


「では、冒険者カードを発行しますね。これは身分証明にもなるので無くさないでくださいね」

「了解した」


 そう言うと、受付さんは私に鈍色のカードを渡してくる。どうやらこれが冒険者カードらしい。

 どうやらカードはその材質でランク分けされているらしく、一番下がアイアン。そこから順にブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、アダマス、オリハルコンと上がっていくらしい。先は遠いね。

 それから冒険者の細々としたルールやその他諸々を教えてもらってからギルドを出る。

 取り敢えず今日は宿をとる。それから明日、依頼を受ける。これでいこう。


 そして一年後、私は冒険者ギルドで最高のランク、オリハルコン級冒険者になっていた。白いオオカミを連れて……。

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