10.異世界の名付けはキラキラしてるくらいでちょうどいい
それから数日後の事である。俺は体の中の何かが変化したことを感じた。
何が変わったかはよく分からないが、内なる何かが変化したのを確かに知覚した。
「ってことがあったんだけど何か知らない?」
「進化ね」
「進化だな」
「進化?」
「小娘、貴様種族が変わっておるぞ?」
「え、マジ?」
ステータスを確認すると種族が変わっていた。今回はえっと、【吸血姫】?【トゥルーヴァンパイア】の方が名前的にはつよそうだったな。
「にしても吸血姫とな!小娘には全く似合わんなぁ!」
クロノスさんが笑いながらそんなことを言ってきた。
「笑うなぁ!そんなん俺が一番よく分かってるわ!」
「二人とも仲良いね」
「「よくない!」」
にしてもなんで今なんだ?トゥルーヴァンパイアになった時はカゲツさんの封印を解いた事が要因だと分かるが、今回は特に何もしていない。強いて言うなら邪眼練習してたくらいか?
「ふむ。どうやら貴様が進化したのは、一定量の魔力を蓄えたかららしいな」
「神眼ってそういうのも見れるのか。便利だな」
なるほど、トゥルーヴァンパイアになった時はカゲツさんの封印の魔力を吸い取ったから、俺の魔力の量が一定量に達したってわけか。
「ところで小娘。貴様、そろそろ名前があってもいいのではないか?」
「名前?あぁ名前ね。考えてはいるんだけどなかなかいいのが思い浮かばなくてさ、なんかいい感じのないかなぁ」
そうなのだ。前から名前を何にしようかと悩んでいるのだが、在り来りの名前しか浮かばない。
スカーレットだとかマゼンダだとかそんなんじゃなくて、もっと新鮮味のある、そしてカッコイイ名前が欲しい!
「じゃ、私が考えてあげる!」
「お、おう」
そこでカゲツさんが名乗りをあげる。一人で考えるよりは良い案が出そうだな。
「吸血鬼っていえば血ってイメージがあるよね〜」
「そうだな。だけどスカーレットとかクリムゾンとか、そこら辺は使い古されてるっていうか、在り来りな感じがしてあんまなぁ」
「では我は服を作ってくる」
「うん。頑張ってね」
あの野郎、さては逃げやがったな?今まで俺のネーミングセンスを散々バカにしたから、俺にバカにされるのが嫌なんだろ。
「スカーレットやクリムゾンとかの在り来りはダメか〜。なら英語から一旦離れましょう」
「あ、あぁ」
おっと、今は名前を考えるのに集中しないと。
「やっぱり赤系の名前になるか?赤……フランス語でルージュ?これも在り来りか」
「フランス語……血ってフランス語でヂュサング?」
「なんか人の名前っぽくないな」
「じゃあサングィーナ」
「めっちゃサング推してくるね」
「じゃあ吸血姫だし、ラテン語で女王を意味するレジーナ!」
「なるほどラテン語か。ならラテン語で赤い血って意味のルーブルム・サングィーネムとか?」
「いいね!ラテン語はやっぱりそこはかとないかっこよさを感じるね。ラテン語なら……暗闇の光でルクス・テネブリスとか」
「カッコイイな!新鮮味もあるしそれで決定!今日から俺はルクス。ルクス・テネブリスだ!」
「じゃあ今後ともよろしくね、ルーちゃん!」
「ル、ルーちゃん?」
「ダメ……かな?」
「ダ、ダメじゃないよ!」
くぅ〜!そんな捨てられた子犬の様な目で見られて、断れるわけがないじゃないか!
「ム、終わったか?……ふむ。ルクスか」
「そう、ルーちゃんっていうの!いい名前でしょ」
「さて、これで晴れて貴様もネームドになったわけだ」
「え、私は無視?」
「ネームド?」
ネームドっていうとあれか?ネームドになると存在の格が上がるとかいうあるあるなやつか?
「ネームドになるとはつまり、世界に存在が認められるということだ」
「それってつまり、どゆこと?」
「ネームドの魔物とは、その全てが例外なく無類の強さを誇る。それらは時に因果律すらをも超越し、あらゆる生物を恐怖させてきた」
「つまり?」
「ふむ。平たく言うとだ、ほんの少しだけ運命に干渉できるようになる」
「……は?いやいやいや、ちょっと待てよ、じゃあ殆どが名前を持ってる人類は、みな運命に干渉できるって言うのか!?」
「まぁ待て。我はネームドの魔物はと言ったはずだ。そもそも、人類にネームドなどという呼び名は使わん。まぁ、膨大な力を持って世界に認知された者は別だがな」
まぁ、そうだよな。いくら何でも人類がみんな運命に干渉できるとかバランス崩壊もいいとこだ。
……ん?じゃあクロノスさんはネームドってことになるのか?
「因みに我もネームドである。この名はカゲツ様から頂いた」
まぁつまりは、世界に認知されなきゃ運命には干渉できないってことだよな。ということは俺も少しは運命に干渉できるのか?
「運命に干渉ってどうやってやるんだ?」
「自分の望む未来を手繰り寄せる感じだ。まぁその時が来ればわかるだろう」
まぁそういうもんか。きっと運命に干渉するっていうのは、ネームドにとってとても感覚的で自然的なことなんだろう。
今どうやって存在してるの?って聞かれても答えに窮するのと一緒だ。……多分。
「さて、ネームドになったことで魔王への大きな一歩を踏み出した訳だが、貴様はまだ魔王には程遠い。貴様の夢想する魔王とは非力な存在か?違うだろう」
「……何が言いたい」
「つまりだ、貴様は魔王として相応しい力を得なくてはならないのだ」
「てったって、具体的にはどうすりゃいいんだ?」
「我が直々に貴様を鍛えてやろう。ルクスよ!」
「はぁ?」
「なら私も修行する!」
「「……」」
僕これ書いた後にも思ったんですが、ルクスって割と使われてますよね。




