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使用人を担当名で呼ぶ屋敷  作者: 山本 タケシ
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情報集めを担当します

あの日、屋敷に戻って薬が売られていなかった事をサービス担当さんに伝えると焦ったような表情をされた。そろそろ屋敷に残っている薬が尽きかけているからなのだろう。


早く事態を解決しなければ。しなければならないことが山ずみだ。




翌日、力担当に仕事の合間を狙って聞きたいことを聞くことにした。彼は仕事が終わるとすぐに自室に戻ってしまうので働いている今しか質問できる時間はない。屋敷の力仕事や掃除などをほぼ1人で賄っているので早く帰って休みたいのだろう。


「レリーフという薬をご存知ですか?」


「それをどこで聞いた?」


私はいつものように畑の手入れをしている力担当に声をかけた。


力担当はまるで知っていたかのような反応を見せた。まさか1人目から詳しい人に出会えるなんて思っていなかったので幸運を感じた。


この後、サービス担当さんにも同じ質問をする予定だった。


「先日市場の薬屋にて売っていたものです。私の国にはなかったので」


「あれば苦しまずにに死ぬことができるって言う、、、ただの麻薬だ。経験者の俺だからこそ言わせて貰うが、ああいうのに頼ると必ず後悔する。絶対関わるんじゃねえぞ」


まさか麻薬をやっていた過去があったとは、、、。


麻薬といえば世界規模で禁止されている危険な薬じゃないか。噂ではマフィアとの間では闇ルートで手に入れることができるらしい。


なんだろう、1番関わってはいけないのはこの人のような気がする。


「大丈夫です。全く興味がないので」


「なら良いが、この国は昔から自殺でこの世とおさらばする人間が多くてな、、、。近年になってそういうものの需要が増えるっていうのは納得出来なくもないがな」


彼は畑を耕しながら続けた。


「ここの妻だって自殺で亡くなっているし、娘だって例外じゃないかもな、、、」


ジョークなのかジョークじゃないのか彼の表情からは理解できないがそれは不謹慎だろう。


私は叱ってやりたいという気持ちをグッと抑えた。


「お嬢様様の病気についてですが何か詳しい事をご存知ですか?」


「ポリマーから聞いた程度ならな」


彼は1呼吸置いて答えた。


「2つの病院にかかっているらしいんだがひとつは母親から受け継いだ遺伝的なものらしい」


彼は次に袋のようなものから種と言われる野菜の子供のような物を土にまき始めた。


私も慣れない手つきながら彼に続いた。


「遺伝の病気の方は正直に言って元主人が苦労して稼いだ金のおかげで治りかけてはいるらしいので問題はないんだが、2つ目の病気というのがこの国で流行っている奇病らしくてな。治す方法がいまいち分からないらしい」


力担当さんは病気の事を知っているのにあの時ユトピアさんがポリマーさんに聞くように言ったということは病気のことに詳しくないと言うことだ。


彼は本当に使用人なのか?もう少し屋敷のことに積極的になって頂きたい。


先日出来事がプラスマイナスでゼロになってしまった。


「その奇病というのはどんな症状が現れるのですか?」


「幻覚が見えたり手足が意図せず動いてしまうことがあるらしい。場合によっては死に至る」


「恐ろしいですね」


もし自分がそんな病気にかかってしまったなんて事を考えてしまった。そんなの毎日が不安で仕方ないだろう。


お嬢様はそんな恐ろしい病気と戦っているのか。どうにかして救って上げたいという気持ちが心の中で強くなるのを感じた。


更に、その奇病というものは他人に移ってしまうという心配はないらしい。


掛かる心配がないならまだ良いがこんなことを初めから知っていればこの国で働こうとはしなかっただろう。


そして奇病が流行りだしたのと最近のことだと彼は言った。


道理で情報が届かないわけだ。ただでさえ国と国で連絡を取るのに一苦労な世の中なのに最近の事など伝わって来るはずがない。

せめてウァドニア邸にに届く新聞を読んでいればもう少しマシだったかもしれない。最近は忙しくて読めていなかったが、これで重要性は理解した。


私がこの国で命を落とすようなことがあっては親孝行をするという計画が泡になってしまう。今のうちに奇病とやらにかからぬよう神に祈っておこう。それが早く収まるように。


絶対奇病にかかりませんように。本当にお願いしますよ神様。


その後は何事もなく仕事を全うした。最近の頃に比べて体力がついてきたせいか仕事を楽しめる余裕が湧いてきた。




寮に戻り、部屋の前でユトピアさんに出くわした。


「おはよう」


寝ぼけているのかその声には力がこもっていなかった。今日1日寝過ごしたとでも言うのだろうか。


「もう5時ですよ。一体どうされたのですか?」


「人間ってどうやって生きてるんだろうって考えたら夜がおわっちゃっててさ。いつの間にか眠って起きたのがたった今なんだ」


彼は目が覚めてきたのか背伸びをしながら答えた。


「ではまた明日」


私は付き合ってられないと思い急いで自室に入り込んだ。そして素朴な部屋の片隅の机に置いてある元主人が記した商人の心得的なものを手に取った。


この屋敷に来てから毎日のように読み続けているが何周かしたのでそろそろ読むのをやめようかなと思っていたところだ。元主人の部屋にはまだまだ本が並べてあったし明日はサービス担当さんに頼んで新しい本を借りよう。


私は明日に備えて眠りに着いた。

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