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使用人を担当名で呼ぶ屋敷  作者: 山本 タケシ
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遊戯担当と買い出しを担当しますⅡ

1週間後


今日は週に一度の買い出しをする日だ。


私は再び遊戯担当と市場へ向かった。


この間、遠方へ向かう時はどうするのだろうなどと考えていたら、馬小屋を見つけた。御者担当であるマナジさんという中年の男が管理している。


彼には子供を育てるため、日帰りで働いているらしい。


遠出をする時は彼に世話になることだろう。


「なんで人間って働かなくちゃ行けないんだろ」


突然隣で遊戯担当が呟いた。


「どこかで楽をしようとするやつが出てくるからじゃないですか?」


「へー。じゃあ人ってどうして亡くなると思う?」


これはまた哲学的な質問だ。


こちらとしてはそんなことを考える暇などないのだが。


今はマフィアからどう市場を取り戻すかで頭がいっぱいだ。


「疲れてるので後にしてください」


暫くして市場に到着した。


気のせいか街の活気が前に訪れた時よりも随分と薄れているような。


野菜は自家栽培でまかなっているので滅多なことがない限り八百屋には立ち寄らない。


前回と同じく肉屋に寄った。


「らっしゃい。絵描きの兄ちゃんじゃないか。ちょうど良かった。ウチの娘がまた兄ちゃんに絵を書いて欲しいということでね。また頼めるかい?」


肉屋の店主が私たちを見るなり声を掛けてきた。


彼の後ろには小さな少女が立っている。彼の娘だろう。


「お易い御用さ。それで今日は何を描いて欲しいの?」


少女に顔を近づけた遊戯担当は木の板を受け取り、彼のポケットから羽根ペンを取り出した。


「今日はねーお馬さんがいいのー」


「オーケー、今から描くからねー」


少女のリクエストを聞いた彼はサクサクと描き始めた。


あの様子なら少しだけ時間がかかりそうだ。


「すみませんね。実はウチの娘将来絵描きになりたいらしいんですよ」


今度は店主が私に向かって声を掛けてきた。


「そうですか。初めましてウァドニア家執事のセリウス・ユージュア・バージンと申します」


ユトピアさんも少しは役に立つんじゃないかと少し感心した。


「これはご丁寧に。私はこの店の店主のブーチャです。かなり前のことになると思うんですがね。娘が泣いていた所を彼が絵を見せて落ち着かせてくれたんですよ」


「何があったのですか?」


「いやあ、欲しい物を買えなくて駄々こねていただけなんですよ」


彼は大したことではないと言うように笑い声をあげた。




「お待たせ」


どうやら終わったようだ。


遊戯担当がこちらへ向かって歩いてきた。


今回は娘を喜ばせたお礼としてブーチャさんが値段をいくらか負けてくれた。


そして私達は薬屋へ向かった。


しかし先日と同じくで薬という薬は売られていなかった。その代わりにレリーフという粉薬が大量に売られていた。


「このレリーフというのはなんですか?」


私は薬屋の店員に尋ねた。


「これはですね、飲むと苦しむことなくあの世へ行くことができるという素晴らしい効果を持った薬なのですよ。あなたが生きることに辛さを抱いているのならお使いになられてみては?」


私は返す言葉を無くしてしまった。


生まれてことかた死にたいなどと考えもせずに生きて来たので死にたいと思うものの気持ちなど理解が出来なかったからだ。


「さあどうぞ」


店員は私の手に紙の袋に入ったそれを押し付けてきた。


「あ、、、いや、、、」


「今日はお金がないのでまたにします!」


どうしようもなく返せなくなっている私からユトピアがそれを元の場所に戻した。


「帰るよ」


私は彼に背中を押されて気まずい雰囲気のまま薬屋を後にした。


「セは押し売りに弱いタイプなんだね」


帰り側に遊戯担当は呟く。


「セリウス・ユージュア・バージンです。せめて家名のユージュアか名前のセリウスだけでも覚えてください」


「そっか、ごめんごめん」


別に最初は理解出来なかったがよく考えて見ると不治の病で苦しんでいる人からしてみるとありがたいのかもしれない。


しかし、本来の薬がないと救えるものも救えないんじゃないか。


「遊戯担当さん、あの薬屋なにか可笑しくありませんか?」


私は耐えられずにユトピアさんに尋ねてみた。


「おかしいなぁ。つい最近までは普通に薬があったのに、、、。これじゃあお嬢様の病気が良くならないよ」


「、、、」


この国に来てから情報収集が浅かった私が悪いのだろう。


今日は考えるだけ考えて明日から屋敷の仲間たちに色々と聞かなければならないな。

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