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6歩 やる気

下ネタが嫌な方は、下ネタが大丈夫になったらまたいらして下さい

「シチシさん!!」

「のわっ何だ! 今度は何が駄目なんだ?!」

 テーブルに身を乗り出して叫ぶアマノさんへと、シチシさんが肩をビクンッ!と震わせて振り返った。

「セッ……なんて言い方は直接的過ぎます! その、せめて同衾(どうきん)とか、ち……(ちぎ)りを交わすとか……」

 瞳を(うる)ませながら、段々と失速していく羞恥顔が可愛い(ヤバい)


 そんな苦言を聞かされ、シチシさんは「えぇ~…」と面倒臭そうに肩を落としていた。

「真面目な話しなんだから、気にすんなよこれくらいで」

「それは! ……」

 と、アマノさんの視線がこっちに向き、何を感じ取ったのか、気不味そうに腰を下ろした。

「……いいえ、確かに意識し過ぎていたのかもしれません。 どうぞ続きを」

 そう(うなが)され、シチシさんがやれやれと言いたげな様子で俺に向き直す。

「悪りぃな。 あ~……一応聞いとくが、お前もいちいち気にするタイプだったりした?」

「いえ。 サラッと直球が来て驚きはしましたけど、下ネタと医療知識くらい別物だと思ってます」

 異性相手に全く意識しないとまではいかないが、何でもかんでも下ネタに聞こえるほど思春期でもない。


 「だよな~♪」と嬉しそうなシチシさんの背景にて、更に(うつむ)き耳を赤らめたアマノさんの姿が()(たま)れなさ()に見えた俺は、「それで、何で禁止なんですか」と話を戻した。

「ん? あぁ。 えっとな……簡単に言うと、異世界人の遺伝子を残したくねぇんだわ」

「ぁ~……」

 そこまで聞けば、後は察せられる。


 神に選ばれた異世界人の血筋なんて、権力者や教会が黙っていられる筈がないし、遺伝子と言うからには突然変異が産まれやすい可能性も。

 世界に広まればどんな影響を及ぼすか……。

 ヤることヤって地球にバイバイじゃ、残された母子に申し訳がたたない。


「転生ならともかく、召喚されただけの地球人に魔力の適性なんてあるわけないからな。 魔力を扱えない子とか産まれたら、こっちじゃ結構生活し辛いんだわ。 お前も、変な病気移したり移されたりなんてしたくないだろ?」

「クッソ生々し過ぎて夢も希望も無いって点も含めて理解しました」


 物語って上手()く出来てたんだな。 恋愛禁止とか魅力半減でしかない。

 あわよくばリア充にとか心做(こころな)しか期待していたのに……こんなリアルさは求めていなかった。

 なんなら、好きな()のために! とかなら命も懸けられそうなところを。


 せっかくのチート魔法すら不穏でしかないばかりか、恋愛要素だけR18規制された血生臭い討伐依頼なんかに、これ以上関わりたくない。

「あの、帰って良いですか? 誤って召喚されたんですから、拒否権ありますよね?」

「なんだ、そんなにセックスしたかったのか?♪」

「当たり前じゃないですか。 てかそんな空気になってスルーできる童貞なんているんですか?」


 直球同士の投げ合いに、視界の隅に映るアマノさんの顔芸が面白くなる。

 そんな同僚の性格を熟知してか、シチシさんってば見てもいないのにニヤニヤと楽しそうだ。

 この人やっぱ確信犯だろ。


「じゃぁ、アマノとセックス出来るなら行ける?」

「行けます」

「ちょっと待ってください!!?」

 突然体を売られたアマノさんがテーブルをダンッ!と両手で突き、また身を乗り出した。

 腹を抱えるシチシさんを余所に、赤面涙目で俺に訴える。

「なに即答してるんですか! 女なら誰でも良いんですか!? こんなので勝手にやる気出さないでください!」

「いやいや、アマノさんみたいなタイプが理想的だからこその即答ですよ。 もちろん本人の同意があればの話しです」

 無理矢理とか犯罪じゃん。 可哀想なのはこっちからお断りしたい。


 ぷるぷると両肩を震わせていたシチシさんがアマノさんを見上げる。

「ならウチが代わろうか?♪」

「はぁ!?」

 するとスッと俺の隣へ移動し、流れるような動作で右腕に抱き付いてきた。 巫女服越しの柔らかな膨らみが押し当てりれ、心臓が止まりかける。

 0距離上目使いの破壊力がエロい(ヤバい)

「なぁ、付喪神は妊娠しないって、知ってた?」

「具体的にどうぞ」

「なに今までで一番食い付いているんですか!」



「いやアマノよ、強がらず正直に告白してくれた若者相手に、このままと言うのはいくら何でも(こく)ではないか?」

「ぅぅっ……」

 シチシさんが真面目な顔してお茶を飲み、正論でつつき始めた。

 その様子を、内心(いいぞ~もっとやれ~)な気持ちで静観する。


 最初は「はしたないです! 軽率過ぎます!」とか顔真っ赤で訴えていたアマノさんだったのだが、その勢いは既に虫の息だ。

 内容はともかく……落ち着いて話されると、ちゃんと耳を傾けてくれるタイプらしい。

 そのせいだろうな。 あっさり釣られ、まな板の鯉状態になっているのは。


「それこそ、お前も言っていただろ? こいつは神格とは違うんだ。 分かっていても流され、性欲を抑えられなくなる危険は高い。 なら、ここはウチらが一肌脱ぐべきじゃないのか?」

「それは……ですが……」

 何か言いたそうに上がった顔が、ただ左右に目を泳がせただけで、力無くまた下がる。

 言いたい事は理解出来るが、納得し切れないといった様子だ。


 よし今です、畳み掛けて!


「なにも無理にとは言っとらんだろぉ……どうしても嫌ならウチが代わるし。

 それに、今すぐなどと誰がぬかした。 これからこいつが頑張っていく様を見て、その気になったら付き合ってやるという約束なら、問題無いだろ?」

「…………」

 だったら放っといてあげてよとも言いたくなるが、そんな甘えをシチシさんは許そうとしない。

「命懸けで尚、人と神格なんだからって理由で断られる不安を抱いたままでは、本気で帰りかねんぞ」


 いくらなんでもそこまで人でなしではないのだが……俺はラノベ主人公でもないのだ。 甲斐甲斐(かいがい)しく世話を焼いてくれるシスターさんから万が一特別な好意を向けられ続ければ、いつまでも鈍感とはいかない。

 そんな危険を(はら)んでいる童貞を送り込むくらいならば、今からでも妻や恋人を一途に想っている適性者を探した方が賢明だろう。

 てかそもそも、神様チートがあるからって傍観勢でありハズレキャラな自分に勝機があるのかすら疑わしいんだけど……本気で辞退しようかな。


 と、いつまでも()に落ちない様子のアマノさんに痺れを切らしたのか、シチシさんが遂にお茶を飲み干した。

「ハァ……年上なんだから、自分の性癖を押し付けるくらいのリードを見せんでどうする。 知っとるんだぞ○ナニーしとるの」

「ぅわぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 ここまでで一番の絶叫が室内に轟く。

 とんでも暴露を塗り潰さんばかりに発せられたその悲鳴には、うつらうつらと船を()いでいたスイハも「ふぇ!?」と目を覚ました。


 こいつ、話しに参加しないなと思っていたら。


「なっななっ……えっ、それ……っ!」

 一瞬にして、額の水滴が沸騰(ふっとう)しそうなまでに赤く染まり上がった。

 シチシさんがテーブルに頬杖を突く。

「一緒に暮らしてんだ、たまに音や臭いでバレてるぞ」

「ぇぇ……うそ……。 ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ……」

 両手で顔を(おお)い背を丸め、腹の底から沸き上がってきたような(うめ)きが痛々しい。


 なんてえげつない口撃だ。

 さすがに見てて可哀想になってきた。

 止めないけど。


「気にするくらいなら性欲まで再現しなきゃいいもんを。 それともアレか? 妄想通り、強引に迫られた方が(この)「」分かりました! 分かりましたから! どうしてもとなればお相手致しますので、これ以上は止めて下さい!!」

 何だか聞き捨てならないワードを全身全霊で(さえぎ)り、アマノさんが勢い任せにそう言い切った。


 ……マジか。


「そうかそうか♪ 良かったな♪」

「えっ……あっ、はい」

 まさか本当に承諾(しょうだく)されるとは思ってもいなかったので、紅玉のような瞳と目が合い、経験の無い気恥ずかしさに声が上擦(うわず)る。


 現実味の無い環境で、現実味の無い言質を貰ってしまった。

 しかも流されるがままに、R18漫画のご都合展開みたいに。

 頬をツネって夢か確かめたくなるも、ここで覚めたくないという願望とのジレンマに(さいな)まれ――


「あの……」

 顔真っ赤上目使いでモジモジしているアマノさんと目が合う。

「嫌じゃ……ないですか? 何千年も生きてる器物ですよ? 人ですらないんですよ?」

「全く問題ありませんが」

「あれ~~~ぇぇ?!」


 ――苛まれる理由は微塵も無かった。

 もう、これが現実で良いや。

 俺は召喚ガチャで天界に誤発注され、なろう系な展開で神様完全サポートのみならず、理想的な彼女候補まで獲得してしまったのだ。

 うん、何の違和感も無いな。 あるあるだ。


 そんな心情が顔に出ていたのか、アマノさんが目を丸くする。

「私がこのような事を聞くのは間違っているとは思いますが、大変危険で辛い旅になるんですよ? なのにそれを、こんな理由であっさり決めてしまわれて本当に宜しいのですか!」

「アマノさんが見てくれていると思えば、どんな鬱からでも立ち上がれます」

「っ~~~~!!!!!!」

 アマノさんの声が上擦った。

 超可愛い。


 いつの間にか移動していたシチシさんが、そんなアマノさんの肩に手を回す。

「いやぁ~良かったな、無事に説得出来て。 しかも相手まで見付かるとか、一石二鳥じゃないか?」

「うぅ……」


「ねぇねぇ~、何の話しぃ?」

「君はもうちょっと寝てて良いと思うぞ?」


 こうして俺は、アマノさんを惚れさせるため、悪魔討伐の任を受け入れたのだった。

 半ば脅迫染みていた点は見なかった事とする。

 原稿用紙10枚分程使っているっぽいので、もし途切れてたらごめんなさい。


 読者厳選回でしたかね。

 まさか、最近アニメでもハッキリと言っているセックスというワードで削除されるとは思えませんが、不快に思われた場合はごめんなさい。

 アマノさんは拗らせています。 現実で真似するとセクハラ等で訴えられる可能性が高いので、参考にしないで下さいね。

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