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5歩 リアルな話し

「いや違うんですよ! そこまでしなくて良いと言う意味ではなく!」


 つい口から漏れた一言に、俺は頑張って圧縮された内容を熱弁していた。


「よくある最近の異世界テンプレにおける神様サポートって奴はですね、どいつもこいつも『チート能力』と『これして』だけ与えて、後は放任決めこむ訳ですよ!

 ア ホ か と !

 転生や個人による召喚ならばともかく、いくら国や神みたいな『ジンケン何それ美味しいの?』だろうと一方的に誘拐(召喚)しといて『後は好きにして良いから、頑張って』は無いだろって! こっちの世界の危機なんだろ?って! 話によってはチートだけ持たせて野に放つ神の方が、何かと支援してくれたりする国より無責任なくらい、そういう物語が地球では腐るほど転がっている訳ですよ!

 それに比べて何ですかこれ! やり過ぎでしょう!

 いや確かに言ってる事も分かりますし間違っていません! むしろこれが一方的に巻き込んだ側の義務というか責任というか、リアルに考えればこれくらいするのが常識だろうとすら思えます!

 なのでさっきの『過保護』発言は脳死でテンプレを想像していたがために起きた事故のようなツッコミに過ぎず、そこまでしなくても良いと言う意図ではありません!

 誤解させそうな感想だったのは訂正させてください! ホントごめんなさい!


 なので改めて言わせていただきますが、完全サポート過ぎてちょっと恐ろしくなってきたんですけど!?

 ここまでしないと勝てない相手なんですか!? 死に戻り前提とか(うつ)ルートほいほいじゃないですか! チート貰っといてRe:ゼロレベルとか鬼ハードモード過ぎますからね!

 それと! 何でここまで出来るのに魔法すら無い地球から取り寄せるんですか! 現地調達しましょうよ! 教会でお祈りしてる聖騎士長とかいなかったんですか!? 神託(しんたく)とレンタルチートだけで泣いて喜び庭駆け回りますよ!」


 勢いに流され、今まで(くすぶ)っていたツッコミが(せき)を切って溢れ出た。

 さっきはシチシさんが絶妙なタイミングで封殺してきたので、口を挟めなかったのだ。


 まさかの過保護発言に目を丸くしていたアマノさんが「そ、そういう事でしたか」とホッとし、続く疑問にはシチシさんが『ぁ~、それはな……』と半笑いながらも答えてくれた。

 さっきからピン芸人のネタを観ているような目なんだが、ちょい面白がってない?


「まず、『何故に地球から取り寄せるのか』についてだが……」

「……?」

 半端に言葉を切ったシチシさんが、テーブルに右腕で頬杖を突き、白い犬歯が見えるくらいにニヤリと笑む。

「ちっとも分からんのか?♪」

(な…!)


 まるで神格とは思えない明らかな挑発。 しかし、ここは()えて乗ろう。

 別に頭空っぽで1から10まで教えて教えてと甘えている訳ではない。 色々思ったけど、知ったかぶりみたいで嫌だったから言わなかっただけなのだ。

 なんなら当ててやろうか。


 そう腹に決め、ピンと来ていた候補の中から一番可能性の高い解答を慎重に選んだ。

「……適性?」

「正確に言わんかい」

「グッ……ステータスだとか加護だとか、ゲームみたいなシステムを使わせる気なんですよね? ならゲームで慣れてる方が適任だと判断したとか? 頭のおかしい奴(褒め言葉)なら仲間までチート化出来そうですし」


 どこまで科学技術が発達した世界かは知らんが、地球と同レベルのゲームが親しまれているとは思えない。

 てか、それ以外にアドバンテージある? 指とゲーム脳以外運動不足そうなガチ勢や、リアルファイト慣れしてそうだけどファンタジーとは無縁そうな格闘家を呼ぶ理由なんて。

 いや、そう考えたら格闘家呼ぶのもどうかとは思うが……ゲーム好きいるでしょ? 一人くらい。


 シチシさんが茶を一口、「まっ、それも一理あるがな」と白磁の湯飲みをコツンと置いた。

「他には?♪」

「…………神に選ばれたとか言って犯罪・私的利用させないため。

 宗教・政治利用させないため。

 そもそも神チートを受け取れる許容量の適任者がいなかった。

 異世界転移・転生時にしか付属出来ないから。

 現地でこれだけの事しでかしたら敵側にバレるから。

 実は既に全員その悪魔に監視されている。

 ハーレム・逆ハーレム予防。 くらいか」

「よくスラスラと思い付くなぁそんなにぃ!」

 ツッコミ代わりにテーブルがバシン!と叩かれた。

「いやまぁ、ほぼ二次元の受け売りですけどね」


 最近こういう系列ばっか見てたから。


 と、シチシさんがまたニヤっと……いや、今度はドヤ顔を浮かべた。

「たださ、シスターにもステータス貸すって話し、忘れてない?♪」

「あっ……」

 忘れていた。


 思い付きを並べただけだからなぁ……迂闊(うかつ)だった。


 「まっ、半分は当たってるし、上出来か」とシチシさんが頬杖をやめ、姿勢を戻す。

 たったそれだけで、少し、その場の雰囲気が引き締まった。


「ウチらは基本、良くも悪くも平等を貫いてる。 だからこそ、選ばれ、『神の御使い』なんてもんを(つと)めた個人を、権力者や教会が囲い込まない筈がない。

 実際、魔王を倒した勇者パーティーは酷かった。 婚約だ(めかけ)だと娘を売ろうとする貴族やら、聖女を押し付けた挙げ句ウチらの名を(かた)って『頻繁(ひんぱん)に祈りに来ていた』『敬虔(けいけん)なる信徒を神はいつでも見守っている』だのとぬかす司祭共。 孤児院出身なせいで実親だと名乗り出すクズは日に日に増え、それに乗っかり『我が国の出身者だ』と主張し始めた国家連中。

 辟易(へきえき)した。

 だから、そんな(しがらみ)から簡単に逃げ帰せる異世界間()()を選んだんだ。 これなら、お前がもし『神の御使い』って肩書きを悪用するようになっても、強制送還できるだろ?♪」

「確かに……」

 悪そうな笑みを浮かべるシチシさんに、余程、腹に()えかねていたのだとも察した。


 予想の範囲内だったとはいえ、生々しい勇者物語のリアルを垣間見た気がして、(うなず)く事しか出来ない。

 そりゃぁまぁ、人類を千年以上苦しめ続けてきた魔王なんて存在を倒したら、そうなるわな。

 善意を利用した悪質な手紙とか届いてそう。


「あっ、そういやぁハーレム予防も正解な。 てか禁止事項だから、シスターとセックスするなよ?」

「セッ!?」

 念のため言っておきますが、作中の台詞は主人公個人の意見であって、チートだけ渡して好きにしている作品を批判する意図は全くありません。

 てか私自信がこういった界隈に詳しくないので、私の方が間違っている可能性もあります。 どうか、こういう意見もあるのだという見方でいてください。


 てか、投稿する前に気が付いたのですが、世界の危機もしくは魔王討伐依頼しておいてチート渡しただけで『好きにせい』って放り出す無責任な物語って何かありましたっけ?

 ……この作中の地球にはあった、良いね?

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