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『神々の使徒』  作者: きょむ
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3. ポリテオスの実情


 列はスムーズに進んでいて、長さの割に時間はかからなそうだ。


 検問所が見えてきた辺りで、シルフィアが自分の首に鉄製の首輪を填めていた。

「シルフィア…何をしているんだ?」

「…人間のあんたたちには関係ないわ。気にしないで。人間様は都市に入ったら自分たちの目で確認すればいいわ」


 まだ警戒心を解いていないのだろうか…。彼女の声は強ばっていた。アルメリアは苦笑いを浮かべ、こちらに頭を下げている。


「…人間ではなく妖精だったら話してくれるのかしら?」

「いい。威圧をかけるな」

 フィリアは返事の仕方に苛立ちを感じたようで、強めに反論していた。…はあ。俺はフィリアと永く一緒にいるが、感情の振れ幅をまだ理解しきれていないようだ。

「ええ。妖精だったら話してあげるわよ。当たり前じゃない」

「じゃあ話して頂戴。私は妖精よ!」


 彼女から返事はなかった。まあしょうがない。馬車はもう検問所に入ってしまったのだから。

 …それにしても彼女の、今にも凍りそうな表情には焦りが含まれているようだった。それに返事をしなかったのではなく、できなかったようにも感じる。彼女の口は開いたので、声が出なかっただけかもしれない。そしてそれはアルメリアも同様だった。

 その二人の顔を見ていた俺たちはどこか嫌な予感を感じていた。加えて人間様というワードに何故か侮蔑を感じた。…シルフィアは人間を嫌っているのだろうか…?



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 焦りは杞憂だったようで、シルフィア以外は特に検査をされなかった。

 …あれだけ言っていた自分が一番検査を受けているではないか…と思ったことは心の中に閉じ込めておこう。


 検問所を抜け馬車を停めた。ひとつの馬車に対しての馬の数で、借りられる馬車小屋の広さは違うようだ。

 俺たちの馬車は二頭に引かれていた。…割り当てられた小屋は馬車を含めても広すぎるくらいだ。


 シルフィアが小屋の利用者表に名前を記すと、自動的に囲いがかけられ、厳重な警備が張られた。若干の魔力も感じる。


 あらゆる準備を終えるとシルフィアが俺たちの方へ向かって飛行してきた。

 すると彼女から謝罪の言葉を聞いた。

「フィリアさん…でしたか…。あなたは本当に妖精だったのですね…。今更ですが申し訳ありませんでした」

「重ねて僕からも謝罪します…申し訳ありませんでした」

 アルメリアからも謝罪された。二人はフィリアの浮遊状態を見て妖精であると認識したのだろう。

 今までフィリアは二人の前では歩行していて、羽もないため人間だと勘違いしていたようだ。

 フィリアは何が起こっているのか分からないようで戸惑っている。


 二人は話を続けている。

「本当に大事なくて安心しました。人混みに行く前にここでこの都市について簡単ですがお話をしておきますね…。それとリャーナさんにも失礼な態度を…。本当にすみません…でした」

 シルフィアは心から謝罪しているように見える。

 フィリアが親身に聞いていることからも、この謝罪を素直に受け取っておこうと思う。


 シルフィアから警戒心はなくなっているようだ。それを機に俺は提案をした。

「気にしなくていい。拾った相手を警戒するのは当然のことだ。そこで俺たちの間から警戒心は解かれたことだから、そろそろタメ口でいこう。俺はずっとそうしてしまっていたがどうだろうか?」

 俺の提案を彼らは快く受け入れた。そして話の続きをはじめる。

「この都市は人間社会なの。歴史上では人間と妖精が共に協力し合ってここまで発達を遂げたとされているってさっき言ったわよね?でもそれは美化されている話なの。実際、妖精は人間に使役される形で道具のような扱いを受けているのよ。…これから目にすることになるだろうけど、妖精にはこの首輪が填められているわ。でも私の首輪とは違うことがひとつあって、この都市で生活を送っている妖精の首輪は魔力が込められていて自らの意思では外せないの。それも主に対して絶対の支配を受ける魔力。…まるで奴隷よ…」


 衝撃的な話だった。種族的には上位であるはずの妖精が最下種の人間に支配されているとは…。…じゃあこの二人はどうなんだ?

「私たちの関係が気になっているようね…。私たちに主従の関係はないわ。私たちは歴史のように互いに助け合って生活しているわ。この首輪は形式的なものなのよ。この都市でだけ填めているの…。…人間に魔力を操れる者はそうそういないから検問程度ならこれで通れるのよ」

「そこまでして都市に来る価値はあるのか?」

「そう思うわよね…。私も正直ここには来たくないの。でも森で生活する上でどうして無くなっちゃうものがあってね」

「それは…?」

「石鹸と…パンよ!」


 生活用品と食材だった。危険を冒してまでするべきことかと思ったが、彼らにとっては重要なことなのだと自分の中で決めつけておくことにした。


「改めて。あの時話さなくてごめんなさい…。それと自分が妖精だって絶対に言わない方がいいわ」

「いいえ。私も嫌な態度を取ってしまってごめんね…。それに話してくれてありがとう。この都市での行動の仕方に注意できるわ」

「そう言ってくれて安心したわ。それじゃあそれぞれの目的を果たしましょう」

 女性陣は意気投合できたようだ。男性陣の俺たちは目を合わせ安堵の表情を示した。

 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「よし俺たちは大図書館とやらに向かおうか」

「ええ。神話以外にも単純な歴史も気になるし、色々知りたいことができたわ」

 俺たちが抱いた疑問と不信感を早く拭いたかった。

「それにしてもさっきはまた会おう!みたいな雰囲気だったけどまだお世話になっていいのかしら?」

「…そうだな…。まぁおいおい考えようぜ。まずは目的を果たそう」

 目的地は目の前に迫っている。



『はあ?入館料金だって?…俺たち金持ってないんだけどどうすればいい?』

「すみませんすみません…そっ…それはお金を用意して頂かない限りには…」


 目的物を目の前には入館料金という壁が立ちはだかった。俺たちは驚きのあまりに入館管理をしている妖精のデスクをひたすら台パンしていた。…その妖精にも首輪は填められている。

「金って…。どこで用意できる?」

「えっと…ですね…。こ、この依頼所を訪れていただければお仕事を受注できます…」

 彼女は都市の地図を取りだし、依頼所を指さした。

「…特務中に仕事をすることになるとは思わなかった…。おいフィリア…俺たちは金銭問題を解決しないといけないみてーだ」

「し、仕事…?」


 俺たちが会話を始めると目の前の妖精の表情は、怯えたから安堵に変わっていた。…そこまで威圧してしまっていたようで反省する。


 俺たちが大図書館を後にして階段を降り始めると、後ろから男の怒号が聞こえてきた。

「入館料金だぁ?そんなもん払ってられっかよ。一瞬で済むんだよ一瞬で。そのためにわざわざ金なんて払わねぇよ。それになんだてめぇ、妖精の分際で人間に命令すんのかゴラァ?」

「…ですがこれが私の役目で…。ぐっ…痛いです…お止め…下さ…い」


 振り返ると、ガタイのいい見た目がまるで悪事を働きそうな男がさっきの妖精の頭を掴んで持ち上げていた。【注】見た目で判断することは良くはありまん。


 周りの人間はその妖精を助けようとはせず、寧ろ見物のように哂っている。…これがこの都市の仕組みなんだと、目で見てはっきりと理解した。人間の汚さが溢れ出している都市なのだと。


「…フィリア、お前はここで少し待ってろ。汚ぇ人間は人間の手で処理してやんねぇとな」

「リャーナ…加減を忘れちゃダメよ…」

「…。…」

 フィリアが心配そうに言ってきた。…加減…か。忌み子の特性上同族が嫌いなのも相まって目の前の人間共に吐き気がする。…フィリアは同族を嫌ってはいない珍しいタイプだが、俺は違う。正直な話俺は根から嫌いだ。しかし、アルメリアに会った時は衝撃だった。…人間の彼に嫌な気がしなかったからだ。寧ろ好印象だった。


「おい。汚ぇ手でその子に触ってんじゃねぇよ下衆が」

「あ?妖精を庇うってのか?ゴミクズだなてめぇ」

「庇うも何も入館にはお金がかかるのが決まりだろうが。そんなも理解できてねぇのか?餓鬼か?」

 口論で負けるはずもない。口が悪いのはお互い様だからあれとして、こちら側の発言は正論だ。

 …そして反論できなくなる人間が取る行動。それは暴力だ。

「言わせておけばよぉ、餓鬼はどっちだ?あぁ?闘う相手はよく見て選ぶんだなっ!」


 男は妖精を掴んでいた手を離し、殴りかかってきた。俺は避けずにそのまま顔面に一発もらった。

 周りは一度哂いで場が満たされるがすぐに一変する。

 次の瞬間、男は悲鳴を上げその場に倒れ込んだ。

「手っ手がァァァっ…あぁぁあ痛てぇ。畜生が何しやがった」

「何もしてねぇよ。ただお前のパンチを顔面で受けてやっただけだろうが」

 まぁ嘘だ。俺は顔に硬化をかけた。あの勢いなら骨折していてもおかしくはないだろう。地面を思い切り拳で殴ったようなものなのだから。

「相手を見極めるべきはお前だったみてぇだなぁ?」

「糞ガキが!覚えてやがれ!」

 よくあるテンプレートな叫び声を上げ、逃げ去ろうとした。…負け犬の遠吠え。

 そのまま逃がしてやろうと思った矢先だった。あいつはフィリアを人質にとったのだ。すれ違った時のことを思い出したのだろう。


 俺は自分でも驚くほどの速さで男に迫る。そして考える間もなく俺の手は男の首を捉えていた。

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