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私はメス豚に転生しました  作者: 元二
第二章 修行編
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その38 メス豚対巨大洞窟蛇

 私は巨大洞窟蛇の不意打ちを食らって動けなくなってしまった。

 突然の暗闇に視力を奪われた巨大洞窟蛇は私を見失ったが、なんとヤツは魔法で光を生み出したのだ。

 私の姿はその光によって照らし出されてしまった。




 崖の裂け目の中にポッカリと開いた空間。

 洞窟蛇の死体の転がるその中で、巨大な洞窟蛇が鎌首をもたげて私を見下ろしていた。


 ヤツの生み出した光の点が綿毛のように空中をフラフラと漂っている。

 その光に照らされて巨大洞窟蛇の真っ黒な鱗が濡れたように光る。

 爬虫類独特の縦長の瞳孔を持った目は私の魔法で片方が潰れている。

 巨大洞窟蛇は残った左目を復讐にぎらつかせて私を睨んでいた。


 私はチラリと空中を漂う光の点を見た。

 あれを攻撃、破壊して巨大洞窟蛇の視界を奪う事は出来ないだろうか?

 いや、私がアイツの胃袋に収まってしまう方が先か。

 何せ巨大洞窟蛇には私の必殺の魔法攻撃が通用しない。

 どういう原理か知らないが、コイツは魔法で自分の魔法防御力に強化(バフ)をかけているのだ。


 それに仮に視界を奪えたとしてもそれも一時的なものだ。

 また光の点を生み出されればそれまでの話だ。


 それにしても、まさか二つ目の魔法があったなんて・・・


 考えてみればこんな暗い岩の裂け目で生活している相手だ。

 自前で明かりをつける魔法を持っていても別におかしくはないだろう。

 その事に気が付かなかった私が抜けているのだ。


『ゴチソウ クウ シネ』

『! 最も危険な銃弾(エクスプローダー)!』


 私は巨大洞窟蛇の唯一の弱点である目に向かって魔法を発動した。

 欲望にぎらつく敵の目に私の魔法の棘が襲い掛かる――が、易々と躱されてしまった。

 さっきは不意打ちで、しかも魔法の連打による面制圧によってヒットしたのだ。

 いくら相手が巨体とはいえ、正面からの単発の攻撃でピンポイントに狙うのは無理があったようだ。

 しかしここで手を休めるわけにはいかない。


『くっ! 最も危険な銃弾(エクスプローダー)! 最も危険な銃弾(エクスプローダー)!』


 ヒラリヒラリと頭を動かして魔法を躱す巨大洞窟蛇。

 時々頭や喉?に当たるものの、魔法は不発。鱗の表面に染み込むように消えてしまう。


 くそっ! コイツの強化(バフ)の効果時間はいつ切れるんだよ!


 その時、巨大洞窟蛇が私をあざ笑うかのように巨大な口を開けた。

 どうやら私をひと飲みにするつもりらしい。

 黒い体にそこだけは真っ赤な口内がテラテラと濡れそぼっていた。


 ていうか、魔法耐性を上げるなんて卑怯過ぎるだろう。私の唯一の攻撃手段である魔法が通じないなんて最悪の敵だ。

 まるで私を狙い撃ちするために誰かが用意したとしか思えない相手だ。

 私は見えない死神の悪意に満ちた笑い声を聞いた気がした。


 ・・・ふざけるな!


 私は久しぶりにこの世界の悪意に触れ、頭の芯が熱くなる程の怒りを覚えた。


 それは久しぶりに感じる心の底からの怒り。

 私は自分の血がマグマのように沸騰していくのを感じた。


 誰がこのまま大人しく死んでやるもんか!

 私は自分の血をすすってでも生き延びてやる!


 ゴウッ!


 空気が音を立てたような気がした。


 洞窟蛇は巨大な頭を叩きつけるようにして私に食らいついて来た。

 視界のほとんどが蛇の真っ赤な口内で占められた。


 チャンス! 口の中に魔法を叩き込む!


 ――いや、それはおそらく罠、悪手だ。

 口内に魔法耐性が付与されていないという保証はない。

 そもそもあれほどの巨大な口に対して私の魔法がどれほどの効果があるだろうか?

 仮に効果があったとしてもその後に飲み込まれてしまえばそれでゲームオーバー。一巻の終わりである。


 賭けに出るにしてもあまりにリスクが高すぎる。

 だったらどうする? ヤツの口はもう目の前まで迫っているぞ。

 私は蛇に睨まれた蛙のように動けない。


 違う。私は蛙じゃない。メス豚だ。

 蛙? そう、蛙だ! 蛙になれ!


『うおおおおっ! 蛙ジャーンプ!』


 私は最後の力を振り絞ってジャンプした。

 ギリギリの所で蛇の鼻面をかすめる事に成功。


 ガチン!


 私の足のほんの数センチ下で蛇の巨大な顎が打ち鳴らされた。

 怖っ! あ・・・危ねー! 丸飲みされるところだった!


 いや、違う!


 私の頭に電流が走った。

 攻撃を外した相手は死に体だ! 今こそ反撃のチャンスだ!


成造マニュファクチャリングソイル!』


 ぐもももっと土が伸びると巨大洞窟蛇の口にまとわりついた。

 驚いて鎌首をもたげる巨大蛇。

 しかし土は輪っか状に変化して蛇の口を拘束したままだ。


『! ――! ――!』

『どうだ! それなら私に噛みつく事は出来ないだろう!』


 生物は顎を閉じる筋肉に比べると顎を開く筋肉が弱い。

 閉じる力の方が強いのは、食べ物をかみ砕いたり歯で引きちぎったりするのに必要なためである。


 魔法を使う巨大洞窟蛇とはいえ、あくまでもベースになっているのは普通の蛇。

 常識外の力を持っているわけではなかったようだ。

 私の成造マニュファクチャリングの魔法で作られた土の輪を引きちぎる程の顎の力はないらしい。

 そして蛇には手が無いので口の輪っかを取る方法は無い。


 巨大洞窟蛇は頭を滅茶苦茶に地面に打ち付け始めた。

 どうやら土の輪を破壊する事で拘束から逃れようとしているようだ。


『逃がしてたまるか! 成造マニュファクチャリングソイル!』


 しかし、私がそうはさせない。

 蛇のもくろみ通りに土の輪は破壊されるのだが、その度に私が追加の成造マニュファクチャリングの魔法を発動させて蛇の口を決して自由にはさせない。

 なにせフリーにすれば再びあの口が襲い掛かって来るのは分かり切っている。

 ここが正念場。仕切り直しは許さない。

 例えここで私の魔力が尽きようとも、絶対に自由にさせてなるものか!


 まさかショタ坊村で豚小屋から脱柵するために鍛えた土の橋作りが、こんな形で役に立つとは思わなかった。

 実は、土の橋を作るのも土の輪を作るのも難易度的にはたいした差は無いのだ。


 破壊しても破壊しても、まるで生き物のようにしつこく口にまとわりつく土の輪に、巨大洞窟蛇は半狂乱になって暴れ回る。


 ドスンバタンと暴れる蛇の体が何度も私の近くに叩き付けられた。

 もらい事故でぺしゃんこにされてはかなわない。

 私は必死に逃げ回りながら魔法を発動し続けた。


成造マニュファクチャリングソイル! 成造マニュファクチャリングソイル!』

『! ――! ――!』


 私と巨大洞窟蛇の死闘は続いた。

 どれくらいの時間が過ぎたのだろうか?

 苦しい我慢比べは唐突に終わりを告げた。


 巨大洞窟蛇は大きくとぐろを巻くと、ひと際大きくその首をもたげ――


 ドス――ン!


 大きな音を立てて倒れ込んだ。

 そのままぐったりと体から力が抜ける。


 ? 力尽きたのか?


 私の鼻からタラリと血が垂れた。

 魔法の使い過ぎで毛細血管が切れたようだ。

 私は鼻血をペロリと舐めながら恐る恐る巨大洞窟蛇に近付いた。


『あっ・・・』


 今まで必死に魔法を繰り返していたため気が付かなかったけど、いつの間にか蛇の口はほとんどが私の作った土で覆われていた。

 ――そう、口の上に空いた鼻の穴までも。


『息が出来なくなった・・・のか?』


 そう。巨大洞窟蛇は私の作った土で鼻を塞がれて窒息死してしまったのだ。

次回「メス豚のダンジョンアタック」

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