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第九十話 五英雄参戦

短くてすみません……

腕が筋肉痛で( ;∀;)



 黄昏の邪団ラグナロク壊滅に動いて一週間。

 すでに壊滅させた支部の数は九。

 そして十個目の支部に向かったとき。

 俺はすでに壊滅した支部を目撃することとなった。


「これは……」


 建物が完全に崩壊していた。

 外側からの強力な攻撃で破壊された感じだ。ミサイルでも落とされたかのような破壊され方だが、このケルディアでそういう攻撃方法は限られる。

 そしてそういう攻撃ができる奴も限られている。

 大量の魔力の残滓を感じ取り、俺は周囲を見渡す。

 すると少し離れたところにあったソファーに座る女がいた。

 その女は一仕事終えたばかりのような顔で紅茶を飲んでいた。その行動に俺は呆れてため息を吐いた。


「よく壊滅させたテロ組織の基地で紅茶を飲む気になるな?」

「あら? いい女はいついかなるときも余裕を忘れないのよ? そして私はいい女の中でも最上級。こういう場所でも余裕と息抜きを忘れないの」

「そうかい。初耳だったよ。お前がいい女だっていうのは」

「あら? 知らなかったの? この美貌とプロポーション。そして魔法の才。さらには性格もいいと来ているわ。ときおり、自分が多くを持ちすぎていて罪悪感を覚えてしまうほどよ」


 ソアーに座る女、ジュリアはそんなことをのたまった。

 前半の三つは同意してもいいが、最後の性格の部分は同意などできない。

 性格のいい女が諸外国から警戒されるわけないだろうに。


「そりゃあよかったな。それで? いい女がどうしてこんなところにいるんだ?」

「愚問ね。黄昏の邪団ラグナロクを始末するためよ」

「……どうしてお前が参加する?」


 ジュリアは俺以上に自由だ。

 束縛を嫌い、自分の気が向かないかぎりは王の依頼ですら受けない。

 そんなジュリアが黄昏の邪団ラグナロクを壊滅させるために手を貸すとは思えない。こいつに実害がないかぎり、そんな面倒なことをする女ではないからだ。


「理由が必要?」

「聞きたいな」

「まぁ一つはあなたを手伝うため。もう一つは弟弟子が黄昏の邪団に所属してるみたいだから、その始末をつけるため。これでいいかしら?」

「……ほかには?」

「それだけよ。失礼ね。本当にあなたを手伝おうと思ってきたのよ?」


 まったくもって信用ならない。

 こいつが俺を手伝おうとして来た? この最強のトラブルメイカーが?

 いくら弟弟子が関わっているといっても、その程度ではジュリアは動かない。というか、その程度では組織を壊滅させようとは思わない。

 弟弟子を始末して終わらせるだけだ。

 ミコトが関わった事件のときは、こいつが退屈していて気が向いたこと。皇帝の依頼があったこと。この二つが上手くかみ合ったから関わってきたが、今回もそのパターンとは思えない。

 疑いの目を向けるとジュリアは子供のように頬を膨らませた。


「本当に失礼だわ。私の言葉が信じられないだなんて」

「これまでしてきたことをよく思い出せ。援護といいつつ、俺ごと吹き飛ばす奴の言葉なんて信じられるわけないだろ?」

「あなたがちょうど私の攻撃範囲に入ったのが悪いのよ。それにちゃんと魔法を撃つ前に逃げてって言ったじゃない」

「逃げられるわけないだろ!? 目の前で悪魔と戦ってるんだぞ!?」

「それはあなたの実力不足よ。私のせいにしないで」

「お前なぁ……」


 もはや反論するのも疲れる。

 口ではジュリアには勝てないのは昔から変わらない。こいつには正論が通じないからだ。

 何を言っても自分の都合と理論で返してくるため、一番の対処法は相手にしないことだ。

 ため息を吐きながら、俺はジュリアが座るソファーに腰かける。

 ジュリアが関わる理由は置いておいて、ジュリアに依頼した奴がいるはずだからだ。


「だれに頼まれたんだ?」

「一応、皇帝陛下かしらね。でも賢王会議からの依頼っていう形みたいよ」

「となると依頼があったのはお前だけじゃないな?」

「そうでしょうね。あなたが率先して黄昏の邪団ラグナロク討伐の流れを作ったから、賢王会議も本気で潰す気になったんだと思うわ。けど、軍隊や下手な冒険者を派遣しても返り討ちにあるから実際に動くのは少数精鋭。つまり五英雄よ」

「余計なことを……」


 支部を潰して回ったのは黄昏の邪団のトップを引きずり出すためだ。

 俺一人ならば出てくると踏んでいたし、そのほうが動きやすいから増援も断っていた。

 しかし、五英雄たちが参加するとなれば話は別だ。

 俺一人をどうこうしたところで組織の壊滅は免れない。

 最悪、雲隠れされるぞ。


「あら? 余計だったの?」

「余計だな。計画を練り直さないといけない」

「なるほど。組織を壊滅させることが目的じゃないみたいね。狙いはカリム・ヴォーティガンかしら?」

「わかっていて邪魔したのか?」


 本気の殺気をジュリアにぶつけるが、ジュリアはどこ吹く風で紅茶を飲む。

 殺気をぶつけても俺なら攻撃しない。そんな無駄な信頼を感じて、俺は舌打ちをして足を組む。


「どうせ支部をいくら潰したって出てこないわよ。あなたは大きな餌だけど、餌にしては狂暴すぎるわ。彼を釣りあげたいなら別の方法を考えたほうがいいわよ」

「奴の動向は何もつかめない。諸外国が協力して探してくれているが、それでも何一つ情報が入ってこない。探すのは無理だ。奴から出てきてもらわないと」

「それは承知してるわ。難しい話にはなるけれど、あなたの方法では無理というのは私でもわかるわ」

「無理だと思うなら代案を出せ、代案を」

「そうね……彼が欲しい物で釣るしかないでしょうね」

「それがわかれば苦労しない。奴の計画は読めない。ずっと東京のゲートを狙っていたが、今は何一つ動きがない」


 そもそも正真正銘の狂人だ。

 考えを読むと言うこと自体不可能といえる。

 そんなことを思っていると、紅茶を飲み終えたジュリアが立ち上がる。


「まぁこういうときはみんなで相談しましょう?」

「あいつらに相談していい案が浮かぶとは思えないんだが……確実に相談する相手としては最悪だぞ?」

「それでも相談しないよりはマシよ」


 そう言ってジュリアはゲートを作る。

 かなりくだらない案が出てくるだろうなと予想しつつ、俺はジュリアのゲートをくぐってかつての戦友たちの下へと向かった。

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