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第八十三話 平凡なバーにて

第三章始まりました!

まだ活動報告でアンケート取っているので、よろしくお願いします。

外伝のことも聞いてるので、興味あるよって人は見てください。

あと、感想、評価、ブックマーク待ってます。



 エリスの護衛という形で日本に来たのは七月。

 それから色々あって、今は十一月。

 時が経つのは早いものだと感心しながら、俺はブラブラと街を歩いていた。

 街には人がごった返し、人混みに弱い者なら酔ってしまいそうな勢いだ。だが、別に行事やイベントがあるわけじゃない。ただたんにこの東京という街が人口密集地すぎるだけの話だ。大きな駅の近くならだいたい、こういう感じになってしまう。

 そんな街を俺が歩くのには事情があった。

 俺は目的地だったバーを見つけると、階段を降りてそのバーへと入る。


「いらっしゃい……」


 出迎えたのは陰気な爺さんだった。

 客はおらず、店には爺さんしかいない。

 爺さんは胡散臭げな視線を俺に送ってくるが、俺は気にせずカウンターに座る。


「ご注文は……?」

「マティーニを一つ」


 注文に意味はない。たまたま目に入ったから言っただけだ。

 それよりも俺は店の内装を見ていた。

 何の変哲もない店だ。しかし、どこか違和感がある。そして入ったと同時になんだか体が重い。

 そういう仕掛けが施されているのかもしれない。


「あまりジロジロと店を見ないでほしいね……」


 陰気な爺さんは俺にマティーニを出しつつ、そんなことを言ってきた。

 客なんだから店の中くらい見てもいいだろうに。

 内心でそう思いつつ、俺はマティーニを横に置く。口をつける気はない。


「飲まないんですか……?」

「余計な物が入っていなけりゃ飲んだだろうけどな」


 爺さんの目がスッと細められた。おそらく薬の類。匂いに違和感があったんだ。

 やはりここがビンゴみたいだな。


「日本には代々、各地の結界を強化する家があるらしい。四名家の成立よりもはるか以前よりも存在し、各地にあるヤバい結界を強化、維持してきた結界のスペシャリスト。その家の名は中御門なかみかど家」


 そこまで言ったところで爺さんが動いた。

 手に忍ばせていたナイフが呼び動作なしで俺に投げつけられる。

 それを躱すが、その間に爺さんがカウンターを渡ってこっちに来ていた。陰気な雰囲気は変わってないが、身に纏う覇気が違う。

 爺さんの目は完全に殺し屋のそれだった。

 間違いない。中御門家の護衛だな。


「どうやって中御門家のことを知った……?」

「東凪家当主、東凪雅人から聞いた。東西南北を守る四名家とは別に、日本を守る五つ目の家があると」

「東凪家の当主が……? 信じられんな」

「そうかい」


 話し合いは無駄だろう。

 完全に向こうは殺る気満々だ。

 とにかく一戦交えてからじゃないと話など聞いてはくれなそうだ。


「たとえ本当の話だとしても……許可なくここに立ちいった者は追い返す決まりだ……。そして中御門に触れた者には死を」


 爺さんは何の変哲もない壁に触れる。

 すると、爺さんの手が壁の中に埋もれた。

 そしてゆっくりと引き抜かれたとき、爺さんの手には刀が握られていた。


「おいおい……どういう魔術だ……?」


 幻術の類にしては壁がしっかりしすぎている。

 いくらなんでも入ったときに気づくはずだ。


「貴様は知らなくていい……」


 そう言って爺さんは刀を抜いて俺に襲いかかってきた。

 咄嗟に鞘で受けるが、意外なほどに重い。それに相当の達人だ。受けた感触がほかの奴らとは段違いだ。

 これほどの実力者が日本にいたとはな。

 爺さんは鞘ごと俺をぶった切る気なのか、まだまだ力を込めてくる。

 しかし、俺の鞘は一定以上は動かない。俺は左手一本で、爺さんは両手。しかも力を相当かけている。

 だが、動かない。単純な話だ。魔力で強化した俺の体のほうが強い。それだけだ。


「荒っぽいことをしに来たわけじゃない。ただ中御門家について知りたいだけだ」

「それが罪なのだ……!」


 爺さんは力勝負ではいけないと悟ったのか、俺から距離を取る。

 そして数本の投げナイフを投げてきた。それをすべて掴み取り、俺はカウンターの上に置く。

 その間に距離を取った爺さんはまた壁に手を突っ込む。

 何が出てくるか。

 不謹慎だが少し楽しみにしていると、予想外すぎるものが出てきた。


「ガトリングガン!?」


 出てきたのは黒光りする銃身を持つガトリングガンだった。

 しかもただのガトリングガンじゃない。ところどころに魔術的な細工を感じる。つまり科学と魔術が融合している。

 発射される弾も普通の弾じゃないだろう。おそらく魔弾。しかも自衛隊が使うやつより強力なもののはずだ。

 あんなのぶっ放したらこの店が崩壊すると思うんだが……。


「仮にも店主なら店を大事にしろよ……」

「こんな店、いくらでも再建できる……」

「そりゃあすごい」


 影に生きる家と聞いてたが、意外なほど影響力を持っているのかもな。

 店をぶっ壊し、かつガトリングガンをぶっ放したことをもみ消し、かつ再建できる。

 普通じゃなかなかできないことだ。

 しかし、それは向こうの話。俺からすればぶっ放されると困る。死にはしないが、防ぐのが面倒だし、防いでいる間に爺さんが逃げたらさらに面倒だ。最悪、俺が犯人に仕立て上げられるし、わざわざもう一度探すのは手間だ。

 だから俺は爺さんが引き金を引く前に、自分の銃を抜いて一発撃った。

 それはガトリングガンに直撃する。


「なっ!?」

「魔力で作った粘着弾だ。それでそいつはもう使い物にならないだろ?」

 

 俺の銃は弾の性質を変化して放てる。

 強敵相手には意味のない小手先の技術だが、こういうときは非常に便利だ。

 ガトリングガンを封じられた爺さんはさすがに俺との実力差を悟ったらしい。

 諦めてガトリングガンを置いた。


「ふぅ……それじゃあちょっと話を」

「話すことなど、ない!」


 そう言って爺さんはいきなり刀を持つと、その刀を自分に向けた。

 切腹する気だと悟り、縮地で距離を詰める。

 いつの時代だよと内心で突っ込みつつ、俺は躊躇わず刃を握って、爺さんの行為を止めた。


「っ……! 本気だったな……?」


 相当力一杯握ったから、右の掌は刃に食い込んでいる。それぐらいしないと止められなかった。

 大した傷ではない。だが傷よりも驚きのほうが大きかった。

 情報を決して漏らすまいと自分から命を断とうとしたのだ。


「なぜそこまでする? 家族でも人質に取られているのか?」

「下世話な発想だ……この命は中御門家のモノ。御恩のために捧げれるなら本望! 手を放せ!」

「忠義か……あんたはそれで良くても、俺は困るんだ。中御門家には頼みたいことがある。それなのにあんたが死んだら、頼み事の前に戦争だ。それはごめん被る」

「中御門家は表舞台には消して出たりはしない……」

「知ってる。だが……ケルディアに場所が変われば話は別じゃないか?」

「なに……? 貴様何者だ?」

「佐藤斗真。ケルディアじゃ五英雄の一人、名もなき無刃の剣士って言われてるな」


 そう俺が自己紹介をすると老人は驚いたように目を見開いた。

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