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第七十八話 レイモンドVSミコト・上

マジで体がだるい。これは完全に風邪ですわ……。

更新途切れたら力尽きたと思ってください……m(__)m




「腑抜けが治って、賢王会議で暴れたって聞いたが……その様子じゃ本当みたいだな?」

「まぁいろいろあってな」


 肩を竦めて俺は軽く対応する。

 レイモンドの目がどうも俺を値踏みしているような気がしたからだ。


「ずいぶん懐かれてるみたいだな。そいつに。新しい愛人か?」


 茶化すようにレイモンドは告げる。

 そうじゃないとわかっているだろうに。

 俺はミコトの頭を撫でながら紹介する。


「ミコト・サトウ。義理の妹だ。世話になったみたいだな。礼を言うよ。助かった」

「義妹? お前の?」


 驚いたようにレイモンドはミコトを見る。

 ミコトは甘えるように斗真にもたれかかっており、その姿はとても無刃の剣士、佐藤斗真の妹には見えなかった。

 ニコニコと笑う能天気さも相まって、レイモンドは呆れてため息を吐いた。


「まだまだ腑抜けてるみたいだな。情に流されて変な奴を妹にしたか」

「おい、変な奴呼ばわりされてるぞ?」

「ボクが変ならキミだって変じゃないか。言っておくけど、そのマント似合ってないよ!」


 あっかんべーっとミコトは俺の後ろで舌を出したりしてレイモンドを煽る。

 レイモンドはレイモンドでエリスやフローゼの手前、怒りを抑えているがイラついていることは一目でわかる。


「物の価値がわからない奴だ。これは聖騎士の証であるマントだ。似合う似合わないの問題じゃなく、選ばれた奴にしか着られ」

「体が小さいから似合わないんじゃないかな? キミ、チビだし」

「誰がチビだ! お前のほうがチビだろうが!」


 子供らしい口喧嘩といえば口喧嘩だ。しかし、レイモンドは聖王国で十二人しかいない聖騎士であり、今はエリスやフローゼの目の前だ。

 ハッとなったレイモンドはすぐに謝罪をした。


「申し訳ありません。声を荒げてしまいました……」

「いいのですよ。ミコトさんとレイが仲良くなったようで嬉しいですわ」


 レイという愛称で呼びかけ、エリスは嬉しそうに笑う。

 しかし、言われたレイモンドは微妙な表情を浮かべた。

 今のやり取りで仲良くなったと言われるのが納得できないんだろう。


「レイには前々から同年代の友人が必要だと思っていたのですわ。ミコトさんならピッタリですわね。両方とも剣術の天才ですもの」

「こいつが剣術の天才?」

「キミが剣術の天才?」


 一瞬、二人の間で視線が交錯して、バチバチと火花を散らした。

 年が近いからライバル心が芽生えているのかもしれない。

 ミコトに関しては単純に馬鹿にされて気分を害しただけだろうが。


「あらあら。ではトウマ様から見て、二人はどうですか?」

「俺に振るなよ……」

「トウマ様は相手の力量を正確に見抜くとアーヴィンドが言っていましたわ」

「そんなことができれば苦労はしない。強くなればなるほど力量を隠すのが上手くなるし、奥の手を用意している。まぁ、さすがに聖騎士の序列七位の方が強いだろ」

「えー! ボクのほうが強いよ! ねー! トウマ!」

「強いよと言われてもな……。聖騎士団は間違いなくケルディア最強の戦闘集団だぞ? レイはその序列七位。勝てる奴のほうが少ない」


 レイモンドは俺の評価を聞いて満足したように頷く。

 それが気に入らないのか、ミコトは評価を下した俺の首を緩く絞める。息苦しさを感じない程度の抗議を受け、俺はエリスに視線を移す。


「戦わせてみるか?」

「駄目に決まっていますわ」


 即答されて俺は大きくうなずく。

 だろうな。すでに俺とアーヴィンドが一戦やったあとだ。さすがに聖騎士が二人負傷する事態は見過ごせないだろう。

 しかし。


「姫殿下。やらせていただければすぐに片をつけますが?」

「ボクだって一瞬で終わらせるよ?」

「そういう問題ではありませんわ。すでにトウマ様とアーヴィンドが戦って、双方とも負傷しているのです。これ以上は認めません」

「まぁ、その二人の試合も姫殿下が認めたわけではないのですけれどね」


 呆れたようにフローゼが呟く。

 文句を言うならアーヴィンドに言ってほしい。誘ってきたのは向こうだ。俺はそれを剣士として受けただけ。責められるのは心外というものだ。


「団長とサトウが? 結果はどうなったんだ?」

「引き分けだな。まぁ互いに全然本気じゃなかったが」

「ずるいよ! トウマはよくてボクは駄目なんて!」

「わかったわかった。また来たときにでもやればいいだろ。こういうのは早いもの勝ちだし、そもそもお前の目的はレイと戦うことじゃないだろ?」

「ボクのほうが強いもん……」


 唇を尖らせるミコトの頭を撫でて機嫌を取りつつ、俺はレイを見る。

 結果を聞いたレイはしばし黙ったあと、俺を真っすぐ見据える。


「おい、サトウ。お前の妹に勝てば俺と手合わせしてくれるか? もちろん今すぐじゃなくてもいい」

「ふむ……ミコトに勝ったらねぇ」

「そんな約束意味ないよ! ボクが勝つから!」

「と、妹は言ってるが?」


 レイの顔には挑発的な笑みが浮かぶ。

 まぁその挑発に乗るわけじゃないが、ミコトにはさっさと新しい剣に慣れてもらいたい。しかし、地球では試運転に付き合える奴が少ない。その点、レイなら実力的に問題はない。

 現在の実力ではレイのほうが上だろうが、ミコトが専用の武器を手に入れたらわからない。ヴィーランドの武器は持ち手の力を最大まで引き出す。

 ミコトは間違いなく天才。それこそ神童と呼ばれていたレイにも劣らないほどだ。

 ミコトが負けた場合、面倒なことになるが、どうせ地球でミコトの試運転に付き合うことを考えればやらせたほうが楽かもしれない。


「エリス」

「はい、なんでしょうか?」

「明日の朝なら問題はないか?」

「お二人の回復具合次第ですわね……」

「それなら問題ないな。ミコトの武器を試す必要があるし、その相手をレイにしてもらうってのはどうだ?」

「たしかにそれなら問題はありませんが……」


 エリスが俺をじっと見てくる。

 レイが勝てば勝負を受けるのか、という意味の視線だ。

 それに俺は迷わず頷く。


「もちろんミコトが負けたらレイの挑戦は受ける」

「そういうことならオレは文句ない」

「わたくしとしても文句はありませんわ。ただ、フローゼ様にまたご苦労をおかけすることになってしまいますが……」


 エリスが申し訳なさそうにフローゼを見る。

 状況を見守っていたフローゼはため息を吐く。


「二人の立ち合いをトウマが見守るというなら私は構いません」

「俺が? その理由はなんでだ?」

「あなたやアーヴィンド様はすでに完成された剣士です。しかし、二人はまだ発展途上。なにが起きるかわからない以上、いつでも止められる準備はしておくべきでしょう」

「なるほど……わかった。そういうことなら俺が見守ろう」


 俺の言葉で話はまとまる。

 こうしてレイ対ミコトの試合が決まったのだった。

 

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