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第五十八話 賢王会議・1

外伝アンケート実施中ー。このまま行けばたぶん柚葉で決まりかな?



 あれから二週間が経った。

 事件は無事に終わりを迎え、さまざまな問題が片付きつつあった。

 ブリギットは逮捕、ミコトも罪は免れないため聖王国に身柄を拘束された。操られていた孤児院の子供たちは無事に命を取り留め、これまた聖王国の病院に入院している。

 日本側は立て続けに二度も首都を危険に晒されたことに危機感を抱き、四名家と協力して首都防衛の対策を取り始めた。そのせいか雅人は最近は忙しそうにしている。

 一方、ケルディア側は緊張状態にあった帝国とベスティアはなんとか戦争状態にはならずに済んだ。帝国皇帝に雇われていたジュリアが今回の事態の詳細を伝え、皇帝が帝国内の首謀者を即座に斬ったためだ。

 その首謀者というのが皇帝の息子である第四皇子だったため、ベスティア側もそれ以上、強く出ることはなかった。

 第四皇子は黄昏の邪団ラグナロクと結託しており、ブリギットを匿っていたのもこの第四王子だったそうだ。第四皇子の近辺から見つけ出された計画書には、周到なクーデター計画が知るされていた。

 ずっと第四皇子はブリギットから武器の供給を受けて私兵を強化しており、ブリギットや黄昏の邪団ラグナロクが国内外で問題を起こしている隙にクーデターを起こす気だったそうだ。

 だが、第四皇子はレオンが日本にいることを知り、その計画は前倒しにて、帝国とベスティアを戦争状態にすることで帝都を手に入れようと画策した。皇帝を斬れば混乱は避けられないが、自分の罪をすべて皇帝に着せることで、自分は混乱を収めた英雄という筋書きでいく気だったみたいだ。

 しかし、皇帝は十分に警戒しており、第四皇子は動く前に皇帝に捕まり、その首を飛ばされ、首は謝意の印としてベスティアに送られた。

 第四皇子はすべての罪を皇帝に擦り付ける気だったようだが、皇帝のほうが一枚も二枚も上手だったということだろう。

 実際、この発表は帝国によるものだ。本当に皇帝が無関係だったのかどうかは俺たちには知る由もない。

 クーデターなどでっちあげで、第四皇子が身代わりにされただけということもあり得る。実際、テロリストを匿っていたというのに帝国への批判は少ない。すべて第四皇子のせいになっているからだ。むしろ戦争回避のためにいち早く動き、息子の首まで切った皇帝の評判は上がっている。

 あの狸じじいならそれくらい平気でやるだろうな。そうでなくても、ある程度第四王子の行動は掴めていたのに泳がせていた可能性はある。


「ま、真意はどうあれ、黄昏の邪団ラグナロクと手を組むような馬鹿な真似はしないだろうな。あのジジイなら」


 数年で疲弊した帝国を強国として蘇らせた賢王が、今の皇帝だ。

 終末論者の集まりと手を組み、世界を傾けようとは考えないだろう。なにせケルディアは復興途中だ。聖王国や帝国、そしてベスティアなどの力ある少数の国以外はまだまだ魔王軍との戦いの爪痕が残っている。加えて異世界との繋がりだ。これ以上、混乱を起こすことは帝国には利がない。


「あと三十年後くらいならわからんけどな」

「その皇帝は今、何歳なんですか?」

「六十過ぎだったはずだが」

「三十年後は生きていないんじゃ……」

「あのジジイなら二百年生きても不思議じゃないぞ。妖怪みたいな爺さんだからな」


 ケルディアにはさまざまな魔法の秘薬がある。寿命を延ばすことは可能だ。それで延命することは難しいことじゃない。

 まぁ大抵の人間はそこまで生きたいとは思わないが、皇帝なら話は別だろう。

 帝国のために生き続けてきた爺さんであり、これからもそうだろうからな。

 そんなことを馬車の窓から見える風景を見ながら思っていると、向かいに座る明乃がそわそわとし始めた。


「落ち着け、今から緊張してるともたないぞ?」

「で、ですけど……」


 今、俺たちは馬車を使って聖王都に向かっていた。

 明乃が夏休みに入ったから、観光がてらケルディアに来た、というわけではない。

 理由はとある会議に参加するためだ。

 僅かな期間で日本は二度も黄昏の邪団ラグナロクの襲撃を受けた。このことを受けて、ケルディアの代表たちが集まって会議をすることになったのだ。つまり世界会議だ。

 かなり昔から時代の変わり目ごとに開催されてきたそれの名は〝賢王会議〟と呼ばれる。

 自ら賢王と自称するところに笑いを隠せないが、とにかく俺たちはその会議のためにここまで来た。

 別に日本側から参加要請が来たとか、エリスの手伝いとかそういうわけでもない。

 関心は一つ。その会議でミコトの処遇が決められるのだ。

 ベスティアは王子を暗殺しかけたテロリストとして身柄を要求しており、帝国もクーデターに関わる重要人物として引き渡しを求めている。

 現在、身柄を預かっている聖王国としては保護観察処分として、信頼できる貴族に預けるつもりだったようだが、その要求でそういうわけにもいかなくなった。

 そんなわけで俺たちはケルディアにやってきたわけだ。ちなみに飛空艦ではなく、馬車を使っているのは明乃にケルディアの風景を見せるためという理由だったのだが、おかげでちょっと会議には遅れそうだ。

 まぁ好都合だが。わざわざ待つ手間が省けるし。


「け、ケルディアの代表たちと私は上手く喋れるでしょうか……」

「さぁな。まぁ全員が代表ってわけじゃない。代理もいるだろうし、この会議に興味を示さない国だってかなりある。お前が相手にするのは帝国とベスティア、そして聖王国だ」


 わざわざ明乃を連れてきた理由がそれだ。

 帝国とベスティアはともかく、なぜ聖王国も相手にするかといえば明乃は東凪家でミコトや孤児院の子供たちを同時に引き取ることを希望しているからだ。

 聖王国で保護観察処分となれば、別々の家に孤児たちは預けられる。それは仕方ないことかもしれないが、明乃はどうしてもその点を譲れなかった。だからこうして〝賢王会議〟に来ているわけだ。招待もないのに。


「まぁ歓迎はされないだろうから覚悟しておけ」

「そ、そうですよね。私はよそ者ですしね……」

「いやまぁ、それもあるんだが……」


 俺は時計をチラリと見る。

 時刻はちょうど十二時。聖王都では鐘がなり、同時にすべての門が閉まった。俺たちはまだ入っていないのに、だ。


「えっ!? 斗真さん、門が閉まってしまいましたよ!?」

「ああ。賢王会議は始まると、暗殺者を入らせないために封鎖状態へ入る。その後、どんな国の王でも入ることは許されない」

「なっ!? それじゃあ私たちも入れないってことですか!?」

「いや、そうとも限らない」


 遅れたとしても会場までたどり着けば参加者として認められる。もちろん、会場までには各国の精鋭が警備をしているから、そんなことはほぼ不可能に近い。

 このルールがあるのは、昔、戦神と呼ばれた王が遅れてしまった際に、堂々と警備を突破して参加したことによる。それ以来、警備を突破して会場に入りさえすれば参加者として認められるという奇妙なルールができたわけだ。

 まぁもちろんどこの馬の骨とも知らない奴がそれをやっても意味はない。参加者として認められるのは会議に席を持つ者か、それに近しい者だけだ。


「会場に入ればどうにでもなる」

「どうやって入る気ですか……?」


 まさかといったような顔で明乃が俺を見てくる。

 そのまさかだ。


「普通に警備を突破する。まぁそんなに苦労しなそうだぞ。今日は遅刻者が多いらしい」


 聖王都からかなり騒がしい音が聞こえてくる。

 俺たち以外にも遅刻者がいたんだろうな。賢王会議を狙う暗殺者なら見つかるヘマはしないだろうし。


「さて、行くぞ。明乃」

「ま、待ってください! そんな入り方したら誰も私の話を聞いてくれませんよ!?」

「いや、逆だ。普通に入っただけじゃ誰もお前の話は聞いてくれない。警備を突破し、俺と共に入ることで初めてお前にも箔がつく。そうすれば少しはお前の話も聞くはずだ」

「本当にそうでしょうか……」

「まぁそうでなくても力を示すのは大事だ。俺は二年間、表舞台から姿を消していたしな。俺はまだ健在で、お前の後ろには俺がいる。それを示すのに警備を突破するのは絶好の機会だ」

「もしかして……初めからそのつもりだったんですか!?」

「さぁ? どうかな?」


 言いながら俺は馬車を止める。

 そして門の近くで降りると、明乃を抱えて十数メートルはある高い城壁の上に登った。

 ちょうどそこにいた見張りの兵士がギョッと目を見開くが、構わず俺は告げる。


「会議に参加しに来た。通してもらおうか」

「こ、こちらも侵入者だー!!」


 俺を取り押さえようとする兵士を俺は容赦なく蹴り倒す。

 それを見て、明乃は顔を青くして何度も頭を下げる。


「すみません! すみません! ろくでなしなんです、この人!」

「謝ってないでいくぞ。殴り込みだ」

「生き生きと言わないでください! 私は話し合いに来たんです!」


 あれこれという明乃をよそに、俺は会場である白金城を目指した。

あとちょっとで第二章終了ー。

そしたらさすがに休憩しようかなぁw

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