表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/145

第百四十話 総攻撃

アンケート実施中。

魔王を倒した英雄から一人もキャラでてこなくて悲しい( ;∀;)





「うわぁ……大きいねぇ~」


 八岐大蛇を間近で見たミコトの感想だ。

 緊張感のない奴だなぁ。


「デカいならやりやすいだけだ。さっさと終わらせるぞ」


 ヴォルフが好戦的な笑みを浮かべて獣化する。

 人狼形態になったヴォルフは大きく吠えると単身で突撃していく。

 あいつも勝手な奴だな。


「あ、ボクもいくね。近づかないと攻撃できないし」

「それでは私がフォローに回ろう。総攻撃の合図は任せた」


 そう言ってミコトとアーヴィンドも八岐大蛇に突撃していく。

 ミコトに攻撃しようと八岐大蛇が光弾を放つが、アーヴィンドがそれを防ぐ。

 ヴォルフはヴォルフで八岐大蛇の頭を素手で殴っているし、ちょっとおかしな光景だな。


「それじゃあ、アケノ。準備なさい」

「はい! ジュリアさん」

「タイミングは私たちに合わせてくれるんでしょうね?」

「そうですね。それしかないでしょう」


 パトリックはそう言いながらため息を吐く。

 ジュリアに団体行動は不可能だと痛感したみたいだな。こっちが合わせるしかない。


「最大火力で行くわ。巻き込まれても知らないわよ?」

「そこは心配しなくていいよ。かましちゃえ! ジュリア!」


 リーシャが拳を突きあげながらジュリアを煽る。

 それに気を良くしたジュリアがとんでもない魔力で魔法をくみ上げ始めた。


「パトリックはどうするの?」

「すでに私の最終兵器は用意していますよ」

「最終兵器?」

「ええ、準備に時間が掛かっていたようですが……来たようです」


 そう言って聖王都の上にいた帝国艦から猛スピードで何かが発射された。

 それは勢いよくパトリックの下までたどり着く。


『ご主人様。御命令を』


 そう言って現れたのは三つ編みの黒髪女性だった。着ている服はメイド服。顔立ちはどことなく日本風だ。

 しかし美人ではあるが感情には乏しい。

 そりゃあそうだろ。

 たぶんこの人、人間じゃない。


「私の技術と日本の想像力が融合した最新鋭魔導人形……試作強襲メイド型一式魔導人形・コードネームは〝シグレ〟です」

「……」

「すごーい! パトリックが作ったの?」

「ええ、帝国と日本から極秘裏に集められたスタッフの協力によって完成したワンオフ機です。その戦闘力はさることながら、完璧にデータを調べ上げたこの美しき体です! 男がもっとも理想とする体を探求して私は作り上げたんだ!」 


 大きな声でなんてこと言ってるんだ。この男。

 前にバストを測れる魔導具とか作ってたが、このためか。

 あほくさ。

 よく帝国もこんなのに予算だしたな。


「だって、トウマ。惚れちゃう?」


 リーシャがそんなことを聞いてきた。

 答えはわかってるだろうに。

 たしかに見た目はかなりいい。胸だってデカい。男の目を意識して作りましたっていうのがよくわかる。

 だが。


「惚れると思うか? パトリックの作品だぞ? 絶対にろくなもんじゃない」

「さぁ、シグレ! 攻撃目標は八岐大蛇だ!」

『かしこまりました』


 淡々とした口調で答えたあと、シグレの腕が変形して銃に変わる。腕だけじゃない。肩や足からも重火器が飛び出してきやがった。


「制圧開始!」

『了解しました。御主人様』

「あはは、やっぱりパトリックってすごいねー」


 リーシャはそう笑うが、シグレは八岐大蛇に大火力をぶつけている。

 兵器という点ではたしかに優秀だ。しかし見た目がなぁ。こういうところが天才ではなく、奇才と呼ばれる所以だろうな。


「さて、私たちも準備しよっか」

「そうだな」


 そう言って俺とリーシャは互いに構える。

 俺は居合抜きのために鞘におさめ、リーシャは剣を下段に持っていく。

 合図を告げるのはパトリックだ。

 それを待ってゆっくりと息を整える。

 その間にもジュリアと明乃の詠唱が聞こえてくる。



「その炎は天より顕れた――」

「極陽の矢は東天より昇り、全天を照らす――」


 互いに膨大な魔力を持つ者同士。

 漏れ出した魔力が周囲に広がって風を起こしている。



「天は紅に包まれ、大地は混沌に包まれる――」

「滅魔の炎、清浄なる光――」


 ケルディアと地球。

 魔法と魔術

 両世界のトップといってもいい二人の詠唱が朗々と流れていく。


「その一撃は神の如く、遍く人々に公平なる災禍を約束す――」

「天涯まで届くその陽はすべてに恩恵を与え、すべてに天罰を与える――」


 最終段階。

 互いの魔力が空に登っていく。

 それを見て前線組も攻撃体勢に入った。


「紅炎よ、今再び、偉大なる魔手の下に現出せよ――プロミネンス!!」

「不遜を承知で我はその矢を放たん! ―天羽々あまのはばや―!!」」


 巨大な陣が生み出され、それぞれ巨大な炎が生み出していく。

 それが放たれる瞬間、パトリックが合図を送った。


「総攻撃開始!!」

『了解いたしました』


 シグレは両腕を合わせると巨大な砲を形成する。

 そしてその発射体勢のままシグレはパトリックの指示を待つ。


『殲滅型魔導集束砲・テンバツ、発射可能』

「てぇぇぇぇ!!」


 極太の光線がその砲から発射された。

 それと同時にアーヴィンドも動く。


「暴風を我が剣に!!」


 そう言うとアーヴィンドの剣に風が集まる。

 やがてそれは小型の竜巻となって剣を覆い隠す。

 荒ぶる風をものともせず、アーヴィンドは自らの魔力でさらに風を圧縮して切っ先に集中させる。

 そして完全に切っ先だけに小型台風が圧縮されるとアーヴィンドは右手を渾身の力をこめて突き出した。


「ディザスター・ブレイク!」


 暴風の突きが放たれた。

 そんなアーヴィンドの隣でミコトとヴォルフがまっすぐそれぞれの狙いである首に走る。


「そっちをやれ! 小娘!」

「小娘じゃない! ボクはミコトだよ!」

「首を落とせたらそう呼んでやる! 足手まといじゃないと証明してみせろ!」

「約束だよ!! とりゃぁぁぁぁぁ!!」


 ミコトは双剣を構えて回転しながら首に突撃する。

 ヴォルフはさらにシンプルだ。

 ただ右腕の一振りにすべてを託す。


「ふん!!」


 そんな光景を見ながら俺とリーシャは息を合わせる。

 自然と呼吸が重なる。

 二年も離れていたのにそんなことは感じさせない。隣にいるのが当たり前で、リーシャのことはまるで自分のことのようにわかる。

 それは向こうも同じなんだろうな。

 どちらともなく俺たちはゆっくりとつぶやいた。


「「九天一刀流奥義――」」


 高まった魔力をすべて刀に集める。

 研ぎ澄まし、刀をさらに強固なものへ作り変えた。

 そして。


「虚空一閃!!」

「鬼刃斬光!!」


 俺たちは同時に剣と刀を振りぬいた。

 八つの攻撃が一気に八岐大蛇の首にめがけて放たれたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ