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第百二十五話 決戦開始

年内には終わらせたいところ!



 聖王都には一万の防衛軍が駐屯している。

 それは人間相手なら十分な数だが、相手が古の竜王となれば大した数じゃない。

 広範囲に攻撃できる巨竜を相手にする場合、必要なのは軍ではなく猛者だからだ。

 しかし、ないものをねだってもしかたない。

 聖王国の作戦はこうだ。

 王室座乗艦に聖王とエリスが搭乗し、二人でプリトウェンを発動させる。

 今回、プリトウェンの発動方式には手を加えられており、八岐大蛇を囲うように展開される。その分、規模は縮小されるがそれで八岐大蛇は動けなくなる。

 カリムはそれを見て別の手を打ってくるだろうが、その間は俺たちが聖王都を守る。あとは各国の軍と猛者が到着するまで耐え、そこから八岐大蛇の討伐に向かうという作戦だ。

 正直、これくらいしか手はない。

 俺とアーヴィンド、そして残りの聖騎士だけでは聖王都を守るだけで精一杯だ。

 リントヴルムの話が本当ならば、カリムは自由自在に魔法が使える場合は神獣クラスの召喚獣を呼び出せる。

 その話はすでに聖王国には伝えてある。それでも聖王国には八岐大蛇を全力で止めるという手しか残っていなかった。


「来たか……」


 足が動くたびに地面が揺れる。

 現れたのは巨大な山としか形容できないほど巨大な竜だった。

 胴体から伸びた長い首は八つ。

 俺が見てきた竜の中でも断トツで最大。肌で感じる威圧感も半端ではない。

 そんな八岐大蛇に対して、聖王都の上に滞空しているコールブランドが聖結界を発動させる。

 一瞬で八岐大蛇は光の檻に囚われた。

 酒呑童子との戦いのときに使った第一段階ではなく、最初から第三段階。しかも範囲を限定している。間違いなくこの世界で最高の檻だ。

 聖王とエリスの二人がかりで発動させるため、負担は軽減されているがそれでも長引けば双方の命に関わる。


「誰かが飛んでくるぞ!」


 八岐大蛇がいる方向から人が飛んできた。

 白い髪の青年だ。しかし、聖王家のような銀髪ではない。色が抜け落ちたような白だ。

 その青年は俺の姿を見つけると、ニッコリと笑って降りてきた。


「会うのは初めてになるね」

「ああ、そうだな」

「私はカリム・ヴォーティガン。黄昏の邪団ラグナロクの盟主だ」

「トウマ・サトウだ。のこのこと大将自らお訪ねとは、どういった了見だ? これまで探しても姿を現さなかったってのに」

「それについては詫びよう。あれを復活させるのに掛かりっきりでね」


 そう言って頭を下げたカリムの隙を見逃さず、俺の隣にいたアーヴィンドが剣を抜いて首を狙った。

 しかし、アーヴィンドの剣は突如として空間を裂いて現れた巨大な腕によって阻まれた。

 腕はゆっくりと役目は終わりとばかりに引っ込んだが、カリムに攻撃すればまた出てくるだろうな。


「私はサトウ君と話をしているんだ。邪魔をしないでもらおうか? 白金の騎士」

「貴様と話すことなどトウマにはない!」

「わかっていないな。私はサトウ君だけは認めている。魔王を斬った君だ。もしも八岐大蛇がやられるとするなら、やはり君だろう」

「それで? 俺を褒めにきただけか?」

「いやいや。私もそこまで暇ではないよ。私はこれから召喚獣で聖王都を攻撃する。リントヴルムから話は聞いているはずだ。神獣クラスの召喚獣。それを食い止め切れるかな?」


 こいつの真意は読めない。

 時間稼ぎとも考えたが、そんな狡い手を使うような小物でもないだろう。召喚獣の召喚に時間がかかるなら、ここに来る前に準備しているはずだ。

 意図は読めない。しかし、こいつは狂人。俺たちとは思考回路が違いすぎるのだ。考えるだけ無駄か。


「全部斬るさ。そしてお前の首も取る」

「お見事。私を相手にそこまで言い切れる者などこれまでいなかった。だからこそ、君を勧誘しよう。私の同胞になる気はないかな? ともに世界の終焉を見る側に回ろうじゃないか!」


 本気で言ってるんだろうなぁ。

 うっとりとした様子で告げるカリムに向かって、俺は右拳で答えた。

 まさか打撃が来ると思ってなかったんか、カリムの頬に俺の拳がめり込んだ。


「俺の答えはそれだ。俺は世界の終焉に興味なんてない。このまま年を取り、老いて枯れて死んでいく。それが人生プランだ。お前の横で終焉を見る気はない」

「は、ははは!! 素晴らしいな。君は。やはり君のような男は敵にこそふさわしい。抵抗するからこそ、終焉も美しいのだから!」

「そんなに見たいなら見せてやるよ。ただし、お前の終焉だがな」

「面白い! やれるものならやってみるがいい!!」


 そういうとカリムは一気に聖王都から距離を取ると両手を合わせた。

 それと同時に無数の穴が生まれて、その穴から召喚獣が這い出てきた。

 その数は大小合わせて千近く。

 巨大なモノは竜ほどもあり、小さなモノは人と同じくらい。しかし、どいつもこいつも強力な魔力を秘めている。


「君らの終焉が世界の終焉の幕開けだ! 華々しく散るといい! 私はそれを特等席で見ているとしよう」


 そう言ってカリムはさらに距離を取った。

 これでカリムの首を狙うには召喚獣を突破する必要が出てきた。

 余裕ぶっこいて前にいてくれれば楽だったんだがな。


「来るぞ!」

「すべての聖騎士、騎士たちよ! 今こそ誇りを見せるときだ! アルクス聖王国のすべての民! そして我らが聖王陛下と姫殿下のために! 共に死のう!!!!」


 アーヴィンドが檄を飛ばす。

 一万の騎士たちが同時に剣を上空に掲げた。

 それが合図となり、召喚獣たちが突っ込んでくる。

 こうして聖王国の存亡。そしてケルディアという世界の存亡をかけた戦いが始まったのだった。

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