対極にある二人の狙撃手
スナイパーは孤独ではない。
なぜなら戦場には仲間がいる。
「ジョージ。大丈夫か?」
「ああ、問題ない。見えてる」
今日も胡散臭い独裁帝国軍と戦場で戦っている。
スコープから見えるのは遠くでうごめいている兵士たち。
塹壕があってもこっからは高い位置であるため丸見えなのだ。
「将校がいるぞ」
「ああ、捉えた」
スコープの十字に将校の悪人面を捉える。
あとは引き金を引くだけで、この場から退場してもらうことが可能なのだが動きすぎていて外れる可能性もある。
ここは慎重に……。
「止まった。今だ!」
相棒のタイミングと同時に引き金をゆっくり絞る様に引ききる。
一発の銃弾が狙いをすました通りに将校の額に命中。
将校はゆっくりと後ろに倒れた。
「さすがの腕だな。よし、引き上げよう」
「ああ」
俺には相棒がいる。
そのお陰で、この戦争も乗り切れる気がする。
だが、甘かった。
「ジョージ上等兵は君か?」
「はい。私ですサー!」
情報将校というのはいけ好かない。
泥沼の戦場に似つかわしくない新品の軍服に身を包んで何を考えているかわからないからだ。
「では君に特別任務を与える。これを読みながら移動しよう」
「はッ!」
相棒ともお別れか……。
いや、また帰ってこれる。大丈夫だ。
「では、乗りたまえ」
「はッ」
車に乗り込みどこに行くのかと資料を開く。
そこに書かれていたのは、独裁帝国の独裁者を暗殺する計画だった。
「これは極秘任務だ」
「壮大ですね」
「ああ、これから君には帝国首都へ潜伏してもらう。移動は今夜だ」
「爆撃隊に付いて行って落下傘降下しろっていうんじゃないですよね?」
「その通りだ」
まさかのピッタシ当たるとは。
こんな作戦もできるようになるのはこれも戦争だからか。
「わかりました」
「これは君の射撃の腕に掛かっている」
「わかっていますよ。正義のためにやります!」
そんなことを話していた時間があった。
爆撃隊に混ざって落下傘降下した俺は、資料の通り式典が行われる会場を一望できる場所に陣取り。その時を待った。
目標はちょび髭の悪党だ。
スコープで覗くものはすべて仕留めてきた。
今日も標的が映り、撃ち込む。命中。
しかし、スコープが割れた光景を見て意識が飛んだ。
「狙撃には狙撃を……目には目をってやつか。今日も俺は孤独に生きている」
狙撃手にとって孤独は武器だ。
つるんでいると足元をすくわれる。
今日のあいつみたいに……。




