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新たな家族

それが。 俺とユイの運命の出会いだった。


 「うわあああん助けてくれてありがとおおお 怖かったよおおおおお」


 そういって泣きながら抱き着いてくる少女。 やわらかい… 良い匂いがする。


 お胸が当たる。 やわらかい…


 「ちょ! 分かった。 もう大丈夫だから。」


 そういって俺は優しく彼女を離す。 


 もう少し堪能しておきたかったがこれ以上はまずい。


 それよりも。


 「天使だ…」 


 「えっ?」


 ハッ・・ つい口が滑ってしまった。 いや。そういってしまうのも仕方ない。


 彼女を改めて見渡す。 


 年は俺より少し上か。 幼いが美しい少女の姿をしている。


 人形のように整った顔。 


 肩まで伸びた金髪の美しい髪がウェーブをかけて伸びている。


 目元は水晶のようにキラキラと輝く蒼い色。 



 一目ぼれであった。 


 生前。何時も妄想してる時。理想の女性像を思い浮かべる。


 彼女は俺の理想とする女性と瓜二つであった。

 

 「あれ。どうしたの? なんか顔が赤いよ?」


 うっ。 あわてて視線下にそらす。 だがそれが間違いだった!


 見ると、服装が破れていた。


 オーガから必死に逃げている間に小枝に引っかかったのだろう。 


 所々やぶれている。


 特にふとももの部分がセクシーな破れ方をしている。 


 チラチラと白い素肌が現れて目を奪われる。


 「恩人様? なんだかすごいえっちな顔してるよ? 何処見てるの?やーらし~ 変態さんだね♪」


 ウッ… バレていたようだ。 さっきまで泣いていたのに今はにやにやとからかう顔をしている。


 「グッ… へ 変態じゃない。 俺にはちゃんと ヒロ・トリスターナという立派な名前がある。」


 「ふ~ん 助けてくれた変態王子様の名前はヒロちゃんって言うんだね。

  私は。 ユイシスって言うんだ ユイって呼んで良いよ。 

  助けてくれてありがとうね。ヒロちゃん」


  そういってユイは抱き着いてくる。スキンシップ旺盛な子だ。


  しかし。やわらかい。 女の子ってこうもやわらかいものだったのか…


  アイリーンや師匠に赤ん坊の頃抱かれていた事はある。 


  その時もやわらかく。安心する暖かさだった。


  しかしユイに抱き着かれてると。 それとは違う。 胸の奥が熱く昂ぶる。


  俺の中の野獣が今にも雄叫びを上げそうな感覚だった。


  「ユイ… ちょっと離れてくれないか。 その… 恥ずかしいというか。」


  「え~ ヒロちゃん恥ずかしがってるの?? んふふ~ 愛い奴め~ 

   うりうり~」


  そういって抱き着くのをやめないユイ 頬をグリグリと顔に押し当ててくる。


  金髪のウェーブがかった美しい髪が揺れる。その度に良い匂いが鼻孔を刺激し


  理性を奪おうとする。


  「なーんて。 ごめんねヒロちゃん 可愛かったからついね。」


  そういって離れてくれるユイ 危なかった。 


  後少しで俺のビーストがインフェルノする所だった


  離れたユイがくるりと回転して姿勢を正す。 


  長い耳がピョコンっと飛び出て大変可愛らしい。


  ん? 長い耳?


  「ユイ。 君ってもしかして。長耳族(エルフ )なのか?」


  「そうだよ~ ユイはエルフの子なの。」


  そういって。胸を張るユイ。


  エルフか… 本には載っていたがまさか実物で見るとは。


  魔法に長けていて。人形のような顔立ちと長い耳が特徴的。 


  人族より寿命が遥かに長く。


  1000年前から生きているエルフもいるらしい。 


  弓に長け。400年前の魔王ブランド戦の際に、人族と協力し戦ったという。


  彼らの本拠地は魔素の深い森の中に住処を作り。 


  余り外に出ることはないらしいが。


  冒険者として活動している者もいるらしい。 


 「エルフを見るのは初めてだよ。でもどうしてオーガに襲われていたんだい?

  一人でいたのか?」


 「ううん、 ユイはね。 パパとママと一緒に薬草取りに来ていたの。

  それで少し薬草が足りなかったから。 

  奥地に入っていったら。あのオーガに出会ったの」


  一人ではなかったのか。 

  

  でもお父さんとお母さんの気配がしない。 もしかして…


 「それでね。 オーガに出会って。一目散に逃げたの。

  パパとママはユイを逃がすために足止めして…

  倒されちゃった。」


 そういってしょんぼりするユイ。


 そうだよな 親がなくなって悲しくない訳がない。


 「そうか… その. ユイだけでも助かって良かったな。」


 慰めにはならない言葉をかける。 


 俺がもう少し早くオーガに気付けば回避できただろうか。


 いや。たらればの事を考えてもしょうがないな。 


 ユイだけでも助けれた。それは喜んでおこう。


 「しょうがないねぇ オーガって奴。 めっちゃ怖かったし。 

  まぁパパとママとは話せるし。

  30年間お休みするからユイも頑張ってねって言ってたし。

  そこまで悲しくないよ。」


 ん? どういうことだ。 


 オーガに倒されたって言ってたなら。 死んだって事だよな?


 何かが噛みあってない気がする。


 「ユイ どういう事だ? パパさんとママさんは。オーガに殺されたんじゃないのか?

   

 「んーん 違うよ。 確かに姿は保てなくなったけど。 

  パパとママはハイエルフだし。

  肉体はなくなっても精霊体になれるんだって。

  ほら、あそこにいるよ」


  そういって指差す先には。 小さな白い光がふよふよと浮いていた。 

  

  その姿は精霊というよりは妖精に近く。 ユイの周りをふよふよと漂っていた。


 「ハイエルフは普通のエルフと違って。 

  肉体が多大なダメージを受けるとその姿を一時放棄して。

  精霊体になって回避できるんだって。

  精霊体になると元の肉体に戻るのに時間がかかっちちゃうらしくて

  30年くらいかかるらしいんだって。 

  っで今はそろそろ眠いらしいからお別れの挨拶してたの」


  ハイエルフ。


  確かエルフの中でも希少種的な存在だった気がする。


  これは本に載ってなくて。師匠に教わったんだった。


  精霊とのつながりがより深く。エルフ体と精霊体それぞれに命があるらしい。

  

  ユイの両親はどちらもハイエルフらしく。 


  肉体は既になくなってしまったが精霊体は無事である模様


  なくなった肉体を蘇生するために。


  精霊体のまま魔素を再構築させる必要があるのだが。

 

  ユイの話だと30年はかかるらしい。


  エルフは長寿の為30年はエルフ的には短いんだろうか。

 

  それでも30年も会えないとなると少し寂しいとは思うが。


  「ユイは寂しくないのか?」


  「確かに少しは寂しいけど。 ユイの事は見守っててくれるし。 

   30年もすればまたあえるっしょ?

   いなくなった訳じゃなくちゃんとまた会えるって思ってるから。

   ユイは平気だよ。」


  ユイは強い子なんだな。 


  俺だったら30年も会えないってなったら寂しいものだ。


  人間での30年はそれほど長い。


  俺が生前30年も生きてないから余計にそう思う


  さて 問題は ユイをどうするか...


  親を一時的には無くしてしまった幼いエルフ。


  このまま放置するわけにはいかないか。


 「なぁユイ お前、この後どうするんだ?」


 「う~ん そうだねぇ。

  パパとママも精霊になっちゃったし。

  近くの村で3人で暮らしていたんだけどね  

  う~ん どうしよー」

  

  頭を抱えるユイ、しょうがないか。 これも運命だろう。


 「なぁ ユイ もし良かったら。

  俺の家に来ないか? 

  その、これから行くところもないだろう。

  一緒に暮らさないか?」


 「ねぇ それってプロポーズ? ユイ達今日知り合ったばかりなのに、

  ヒロちゃんってば

  ユイに惚れちゃった? おませさんだね」

 

  確かに… 今の言葉は完全にプロポーズだ... なんて恥ずいセリフを。


  引かれたかな?恩人とはいえ。初対面のこんな子供に言われて。引くだろうなぁ。


  そういうとユイは真剣な顔をした後。少し考え込む。


  考え込んでいる顔も美しい。 女神様みたいだ。 


  ユイは首をかしげながら、うーんとかえーとか言っている。


  っとそこでユイの周りをふよふよしていた精霊がユイに近づく


  ユイが両親たちから何か言われてるようだけど… 


  やがて話し終わったのか。 にやにやしながらこちらを見る。


  「分かった。ヒロちゃんのプロポーズ受けてあげる。

   ユイも一人だと寂しいし。命の恩人の誘いは断れないしね。

   それにヒロちゃん可愛いから。ユイついていくよ」


  そういってまた抱き着いてくる。 あぁ… 理性よ。持ってくれ。


  「あっ そうだ… パパとママがヒロちゃんに言いたいことがあるってさ。」


  そういうと精霊と化したユイの両親が 俺の周りを囲んで飛び回った。


  その軌道は弧を描き 白い輝きを放った。


  ・・・・ヒロさん、この度はユイを助けてもらいありがとうございます。

  

  頭の中に声が響いてくる。 ハイエルフの能力であろう。


  ヒロさんがいなければユイもオーガの餌食となっていたでしょう。 


  今回私達は一旦一休みという形になります。

  これから精霊と化し肉体を作る魔素を取り込む旅に出ます。


  ヒロさんには。その間、ユイの事をよろしくお願いします。

どうかユイをお守り下さい。


  わずかながらですが。ユイを守れる力となるよう、これを。


  そういうと、頭上から輝きと共に何かが落ちてきた。 それを拾い上げる。


  「これは… ペンダントか。」

 

  小さなペンダントが落ちてきた ひし形の紋章が刻まれており。 微力ながら魔力を感じる。


  それはハイエルフ族に代々伝わる紋章です。ユイの身に危機が迫った時。 


  ユイを守る力となるでしょう。 肌身離さず持っていてください。


  最後に。 ユイ、こちらへいらっしゃい。


  「はーい」


   ユイ。 貴女の成長を見守れないのは寂しいですが。

どうか元気に生きてください。


   また30年後。成長した貴女と再会できるのを楽しみにしています。


   「うん ユイも頑張るよ。 だから安心してて! 

   ユイにはヒロちゃんもついてるから」


  ユイがこちらを見て微笑む。 責任重大だなぁ。 


  では。私達は旅立ちます。 どうかお元気で。


  まばゆい光を放ち、空へと飛び立ったハイエルフの家族。 残されたのは、その両親が愛した娘一人


  俺はこの子を守れるだろうか… オーガ一人にかなり苦戦した。 


  満身創痍でやっと勝てた相手。


  上級魔法でなんとか勝てたが… オルバみたいな剣術が出来れば。 

  

  もっと楽に戦えたかも知れない。


  剣術も学ぼう。 そして魔法も。 もっと上を目指す。


  そう決意した日だった。



  ほどなくして師匠と合流が出来た。 


  オーガの雄叫びが師匠にも届いてたらしい。


  無事だと言うと、ほっとしていた。 師匠はなんだかんだ優しいんだ。


  オーガを倒したこと。 ユイの両親の事。 そしてユイを守るということ。


  それらを話した。 師匠は少し頭を抱えたが。 了承してくれたらしい


  後はアイリーンとオルバが許してくれるかどうかだが…


  森を抜け出し家についた。

  

  家に入るとオルバがアイリーンとお楽しみ中の最中であった。


  俺の姿を見るとあわてて服を着替え。 何事もなかったかのように出迎えてくれた。


  悪い事をしたかもしれない。 


  「父様。母様。ただいま戻りました。 その… お邪魔でしたか?」


  「いや… 無事に戻ってきてくれて何よりだ… だが今見たのは忘れろ 良いな?」


   ドスの効いた声で言われる。


  「わ。分かりました。」 


  「それで良い。 っでどうだった? もう少しあっちの方にいると思ってたんだが?

   魔物は強かっただろう。 俺も小さい頃はゴブリン相手ですら苦戦したもんだ。

   まぁ今となっちゃ敵じゃないが… お前はオークぐらいは倒せたか? 

   俺がみっちりしごいてやったからな。 そのくらいは行けただろう。」


  「えぇ父様。 その事で話したい事がたくさんあります。 それとお願いしたい事も。」


  「お願い? まぁ良いぞ 話してみろ。」


  「分かりました。 師匠 ユイ 来てください。」


   外で待機していた師匠とユイを家に入れる。

  

   「おい ヒロ…その子… もしかして」

   

   聞き出そうとしたオルバ。 だがその問いは。 アイリーンの行動でかき消された。


   「キャー可愛い 見てオルバ、エルフ! エルフよ! しかもとびっきり可愛い!

    サリー?どうしたのこの子!?」


   アイリーンに抱きかかえられたユイ 抱擁されたままくるくる回りだす。 


   アイリーンの抱擁を食らったかユイ… あれは俺も良くやられるが 結構苦しい。


   豊満なバストに顔がすっぽり収まり そのままずっと抱きしめられる。


   やわらかい感触で幸せな気分になるのだが 息が出来なくなる。


   逃れようとするも抱きしめる力が強いため。


   アイリーンが満足するまで逃れられないのである。  

  

   ユイが解放された時にはユイは目を回して気絶していた。 哀れユイ…


   ユイが目を覚ます間に今日の出来事を話した。

 

   森でオーガに襲われたこと。 オーガを倒したこと。 ユイの両親がハイエルフであること。


   ユイが一人な事。ユイを家族にしたい事。両親にユイを守ってくれと頼まれたこと。


   全部話した。


  「オーガを倒したのか。 凄いなお前… 俺が倒したのは13の時だったのに…」

   

  「ほら ヒロはやっぱり凄いのよ… サリーが言ってたじゃない。

   ヒロは将来英雄になれるほどの才能だって。」


  喜ぶアイリーン オルバは微妙な表情をしていたが…


  「っで その ユイちゃんだっけ? その子の両親がオーガに倒されて。 

   一人になり。 お前が連れてきたと。…」

 

  「そうです。 勝手だとは思いますが。 ユイをどうか家で暮らす事を許可してもらえませんか?」


  俺は深く土下座する。 オルバは表情を変えない。


  「旦那様。 私からもお願いします。ユイもエルフで言えばまだ小さい身。 

   まだ一人で暮らしていく事は不可能です。」


  「なぁ ヒロ…お前はどうしてユイを連れてきたんだ? オーガから助けた。

   後の事はそいつがどうにかするのが普通だ。

   しかもエルフじゃねえか。エルフは俺たちとは違う。

   寿命が違う。種族が違う。価値観も違う。 

   一緒にはいきれない。 憐みで連れてきただけなら俺は許可しない。」


  「オルバ様私も種族が違いますが…」


  「ちょっと黙ってろ…」

 

  サリーに突っ込まれるオルバ… 表情は崩さない。 


  「父様。確かにエルフは僕たちとは違います。 人族の方が早く死ぬし。 エルフにエルフの

   人には人の価値観があります。だが一緒に暮らせない根拠はないし。僕はユイの両親に

   ユイを守ってやってくれと頼まれました。」


  そう… エルフと人間が一緒に暮らせない そんなことはないはずだ。


  「それに…」

  

  「それに、 なんだ?」


  「ユイと会うのは今日が初めてです… でも俺はユイの事が好きになりました。 

   そして。俺はユイを助けたい!

   好きな子を守ってやりたいんです!」


   声を荒げる。 一人称も普段の俺に戻ってしまってる。 それくらい興奮してた

 

  「プッ アハハハハ! おまえこの子に惚れたってのかい! 

   お前も立派な男の子だなぁ ええ?」

  

   腹を抱えて笑うオルバ… ひとしきり笑った後。 キリっとした顔つきで。


  「分かった。 ユイ こっち来い」


  ユイがトコトコとオルバに近づく。 オルバはユイの頭を撫でた。


  「ヒロに助けられて良かったな。 今日からお前は俺達の家族だ。 これからもよろしくな!」


  許してくれた。 ユイを一人にしない選択をしてくれた。 


  オルバ… ありがとう。 本当にありがとう


  「うん ユイ ヒロちゃん達の家族になる!」


  その日。 助けたエルフ少女が家族となった。

幼馴染で家族でお姉ちゃんが出来ました。 

次回はユイの視点から始まります。 

妹も欲しいな…


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