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魔物が住まう森

人が立ち入らない森がある。 その森には魔素が充実しており。魔物のすみかとなっている。


魔物は基本人里には降りては来ない。 


しかし、森に迷い込んだ人間が魔物に食われ。 


その味を覚えた魔物が人里に攻め込んでくる事がある。


人里に下りてこないように。 森へ入ることは許されない掟がある。


そんな中に二人の人間が立ち入っていた。


恐ろしい。魔物が住む森へ…


話は少し戻り。


「師匠、僕は魔物は本でしか知りません。 魔物にはどんな種類がいるのですか?


「良い機会ですし。簡単に説明しますね。」


 一つは魔素の影響でそこに住んでる動物等が魔物化する場合。


 人食い狼(レッサーウルフ )巨大熊(ジャイアントベアー )等がそうですね。

 他にも飛喰鳥(ひくいどり )海には《テンタクルス 》等もいます。

 動物が大量の魔素を取り込み続けるとなります。


 二つ目は魔王が直接生み出した存在


 「魔王がいるのですか?」


 「えぇ 大昔に世界を侵略しようとした存在です。 その昔魔王ブランドが現れ。

  そのブランドが侵略しようとした際に生み出した存在。 

  それが魔界種です。 しかし。魔王ブランドは剣王オルランドゥに倒され。生み出された大半の魔界種

  は消滅。生き残りも魔界大陸に存在しています。実力は普通の魔物のそれとは比べ物になりません。」


 オルランドゥは聞いたことがある 家の本で読んだ人物だ… 魔王も倒す英雄 凄い人物もいるもんだ。


 三つ目は自然発生する魔物だ。 


 何処からともなく現れ 世界中で目撃する魔物、 危険度もFからAまで存在する。

 オーク ゴブリン スライム ワイバーン マンジュラ 


 「これから行く所は オークやゴブリンが生息する所です。 ゴブリンは大丈夫かと思われますが。

  オークは手強いですので。 一人での先行は禁物です。 わかりましたね。」


 大丈夫だ師匠。 こう見えても俺はかなりのびびりだ 生前この世界でいうコックローチ。


 通称Gが出た際は。急いで部屋を飛び出し1週間ネカフェで過ごす生活もしたくらいだ。


 それにオークは最近討伐されたばかりで。余りでないらしい。 それなら大丈夫だろう。


 人間の子供くらいのサイズ 顔は強張っており手に鉈を持っている。 ちょうど獲物を狩り終えた後で

 

 獣を引きずっていた。 


 ゴブリンがこちらに気付くと奇声を上げ こちらに襲い掛かってきた。


 幸い距離が空いている 密着だったら怖いが距離が離れてるのであれば!


 「風壁( ウィンドウォール)!」

 

 風魔法で相手の動きを封じる 荒れ狂う風に身動きが取れない隙に次の魔法を唱える。


 「|連続火球弾、《マルチプルファイアボール 》


 指先から同時に五つの火球。 それをゴブリンに向けて発射する…


 先に放たれていた風が火球の勢いを増し。ゴブリンの体に全弾命中する。 


 うわぁ… これは… 初めて魔物を倒したけど かなりグロいな…


 肉が焼け 皮膚は抉り 内臓がドロリと焼け落ちていた。 当然絶命である。


 「上出来ですヒロ様。 基本となるのは確実に攻撃を当てる事です。 風で動きを止め。

  その風を利用しつつ火珠で止め、 やはり魔法戦のセンスはありますね。」


 師匠が誉めてくれる。 まぁ魔物戦のイメージはずっと行ってきたし。

 

 オルバとの模擬戦も大きい、オルバは剣もそうだがとにかく動きが早い。


 一瞬でも眼を放すとすぐさま間合いに詰め寄られてしまう。 


 だからまず足の動きを止める事を重点的に組み込んできた。 その成果が出たという所か。


 魔物を探しに奥に進んでくと今度は レッサーウルフに出くわした。 だがまだこちらに気付いてないよ うだ。


 「こちらに気付いてないようだな… それならば!」


 魔力を形成 使う魔法はエアストライク。


 風の中級魔法である。


 風の質量で直接叩き付ける攻撃 他の魔法と違い視覚では見えないのが長所だ。


 そこに魔力を出来るだけ込め、レッサーウルフの頭上に振り下ろす。

 

 しかし。 渾身のエアストライクは、当たる前に横に走り躱された。


 「なんだと…」 


 渾身の一撃を躱され動揺してる所にレッサーウルフはすぐさま飛びかかって来た。

 

 咄嗟に爆風で横に躱す。 レッサーウルフの牙は大岩に当たり そのまま噛み砕いた。


 「大岩を砕いた!? これは噛みつかれたら即死だな…」


 嫌な汗が流れる。 動きも早く。威力も強い。師匠曰くこれでFランクらしい。


 魔物ってのは恐ろしいな。


 「まずは距離を取って 足止めをするか。」


 だが基本は変わらない。魔術師は元々近距離で戦う愚行は行わない。


 「レビテンス! 」


 体に風をまとわせ レッサーウルフから距離を取る。 


 レッサーウルフが距離を詰めに飛びかかってくるが、着地した瞬間に足元が沈んでいく。


 距離を取った際に泥沼を設置した。 泥沼に引っかかったレッサーウルフは、もがいで脱出しようとするが。


 前足に力が入らず体は沈んでいく。


 「いまだ。 切り裂け! ウィンドスレイヤー!」


 風の刃を形成する。 狙うは首元 シュイイインという音と共にレッサーウルフを切り裂き 首を跳ね飛ばした 

 体が脱力し。レッサーウルフは息絶えた。


 「ふぅ 危なかったな… 最初の一撃を躱されたときは焦ったよ」


 見えない風の一撃なのに。 何故躱されたんだ? 


 「それはレッサーウルフが魔力を感知したからです。

  魔法を使った際。あの獣は魔力の流れを空気で察知し 咄嗟に躱しました。

  魔物には。 魔力を感知できたり。魔法を無力化する敵もいます。 今回は良い経験でしたね。」


 なるほど 見えない攻撃だったが魔物にはちゃんと分かってたんだな。 


 そうと分かっていれば動揺しないで済んだな… これからはちゃんと躱された時のことも考えとかないと な。


 そう思ってると。 師匠が何やら袋を取り出し。 死体となったレッサーウルフを袋の中に詰め込んだ。


 「師匠。 それは??」


 「これはゲートバッグこの袋の中は上級空間魔法によってどんな物でも収納するアイテムボックスです。 

  レッサーウルフの牙はそれなりの値段で売れますからね。 

  家のお金もそろそろ厳しくなってきた のでこうして素材集めも重要ですよ。」


 アイテムボックスだと? そんな便利な物があるとは。 しかも上級空間魔法だって!?


 「冒険者には必須のアイテムです 少々お高くつきますけど。ヒロ様も冒険者となられた際には是非お持  ちになられては?」


 「考えときます まだ冒険者になるともわかりませんけど。」


 「そうですか? ヒロ様なら優秀な冒険者になれますよ。私が保障します。」


 「師匠にそう言われると鼻が高いです。 では進みましょうか。」


 そういってさらに進んでいく。 奥に進むたびに道が入りくみ。視界も悪くなっていった。


 「ヒロ様。この先は視界が悪い為あまり離れず行動を… ってヒロ様? 何処にいますか!? 

  ヒロ様!!!」

 

 冒険者かぁ… 冒険者と言ったら迷宮! 

 「誰も攻略の出来なかったあの迷宮を。無詠唱魔術師が攻略!?」

  しかもイケメンで天才らしい!」


 なんて噂が広がり。皆が俺を湛えるのだ。 そして噂を聞きつけた美人の女の子達が現れて。


 「キャーヒロ様素敵!抱いて! 私達、ヒロ様に一生ついていきます!

  

  「ちょっとヒロ様についてくのは私よ!」

 

 「私もよ!」 「私こそ!」


 と、俺の周りで女の子達が言い争いをする


 そこで俺はすかさず、こう言うのだ


 「争っちゃ駄目だよ 皆平等に愛してあげる。 僕はみーんなの者だから。 」

  

  卒倒する女の子達。 俺は好意を持ってくれるなら一人に絞らないぜ!


 「そうして俺はハーレム王としてこの世界で幸せに暮らすのでした。 なーんてできすぎだな… 

  ってあれ?」


 くだらない事を考えている内に俺は師匠とはぐれてしまった。

 

 「しまった、なんて馬鹿な事を… 」


 師匠とはぐれるのはまずい ゴブリンやレッサーウルフならまだ対処は出来るが。


 ここでオークなんかに出くわしたら流石にまずい!

 

 「一旦来た道を戻るか。 幸い足跡は残っている…」


 そして来た道を戻ろうとしたとき 何処からか悲鳴が聞こえた


 「なんだ今の悲鳴? 師匠? いや師匠はそんな危険な目に合う人じゃない。」


 師匠を危ない目に合わせれる魔物なんてそうそういないだろう 


 とするとこれは別の人の声だ! 


 森に迷いこんできたのか?? こんな魔物だらけの所に?


 「とにかく急ごう… 方向はあっちだな。」


 声のした方に走っていく。 風魔法を使い通常の3倍の速度で移動する。


 木々を抜け。 視界の先に何かを捉えた。 


 「いた… あれは子供か!?」


 見ると足がすくわれて動けないようだ…


 そこに巨大な魔物が襲い掛かろうとしていた。


 「まずい おい そこのでかぶつ! 俺が相手だかかってこい!」


 咄嗟に指先に魔力を込める マルチプルストーンバレッジ!


 まずはあの子から敵を離さなければ… 


 5本指から放たれる掌級の石弾が 巨大な魔物に直撃する。


 魔物は大して効いてないようだ。 こちらを振り向きターゲットを変えてきた。


 「よしっ あの子から離せば! おい… そこの君! 今すぐここから離れるんだ! 走れ!」


 叫びながら距離を取る 巨大な魔物はゆっくりとこっちに近づいてくる。


 やがて広い場所に出て。 俺はその魔物をじっくりとみる。


 でかい… ゴブリンの比じゃない 3M近くはある… 巨大な体に厚い脂肪。いやあれは全部筋肉か?


 手に持つのは大人が二人がかりでやっと持てるであろう巨大な斧。 それを奴は軽々と振り回していた。


 見るからに強そうだ。 これがオーガって奴だな… 


 近くに師匠はいない。 ここで逃げるのも良いがあの子が危険になる。 それだけは駄目だ。


 ならば選択は一つしかない。 ここで奴を倒す。


 それが俺に出来る唯一の選択だ。


 先手必勝。 魔法を叩き込んでやる!


 「ウィンドブラスト!マルチプルファイアボール」


 ゴブリンを焼き払ったコンボ技 暴風で相手を押さえつけ そこに火球弾をぶち込む。


 暴風がオーガを襲うが オーガはびくともしていない。余裕の表れかゆっくりと近づいてくる。


 かわさないのなら好都合だ。


 俺は一つ一つの火球にさらに魔力を込める。 やがて火球は合体し。巨大な一つの珠となる


 魔力の暴走が起こる。 このままでは俺が焼死してしまう。 


 「 喰らえ中級火魔法! 怒りの炎よ 大地を焦がし。敵を焼き尽くせ! ボルケーノ!!


 渾身の火球がオーガに直撃する。 馬鹿め油断しているからだ。 これでお前は消し炭だ!


 爆風が広がり視界を覆う。 手ごたえはあり。 風魔法で爆風を払う。


 だが、そこにいたのは… 不敵な笑みを浮かべたオーガであった。


 「ば… ばかな… 効いてないのか!?」


 渾身の中級火魔術 ボルケーノ 普通のボルケーノと違い火球の魔力をさらに込め。風の力で威力を底上げした俺の渾身の魔法で倒せなかった。


 効いてないわけではない 見ると火傷が全身に広がってる。 だが俺は倒せなかった事実に恐怖を感じた。


 「まずい… まずい… あいつは倒せない 逃げろ… 逃げろ! 師匠の所まで…

  アッッ う、動け! 動けよ俺! 逃げるんだよ!」


 死ぬかも知れない恐怖 生前でも体験したことのない状況に、俺の体は言うことを聞かなかった。


 やがて近づく絶対的な死。 オーガが斧を振りかざす。


 「うわあああああああああああああ!!!」


 振り下ろされる直前。足の硬直が解け 横に飛び回避をする。


 ほとんど転んだような形だが直撃は避けることが出来た。 だが。


 ッドゴオオオオオオオオオオオオオオオンン 


 地面が割れた


 衝撃で吹き飛ばされ。 壁に叩き付けられる。


 「ゴホッ!」


 口から血が飛び出し 腕がありえない方向へ曲がっている。 


 「まずい… 癒しの力よ。祈りとなりて傷を癒せ。 その身にかかる傷害を打消し浄化せよ。

 アイズキュア」


 折れた腕が元に戻り。 回復する。


 「どうする… オーガは想像以上にタフだ 大火球じゃ火傷させるだけが精一杯だし。

  もっと威力が必要か。」


 だが単発の火力じゃ通用しない。狙うなら継続 それも身動きが取れない状況で叩き込むしかない。


 「落ち着け。 通用しないわけじゃないんだ。 落ち着いて考えれば。」


 火属性だけが俺の魔法ではない 他の属性が通用しないわけではないだろう。 


 「効くかどうか試しつつ距離を絶対近寄らせない。 行くぞ!」


 「フロストノヴァ!」 水系中級魔法 対象を凍らせる魔法だが。 オーガにはびくともしない…


 「駄目か。 ならば 岩石弾(ストーンキャノン )!」


 小石弾よりはるかにでかい 大岩を飛ばす魔法 そこに魔力を込めて飛ばす!


 オーガが呻いた よしっ! これが効くならこれを主体にして!


 今度は泥沼を展開する 足場が悪くなったオーガの動きが鈍る。


 そこに風魔法で速度を上げた岩石弾を飛ばす。 


 ガイイン


 しかし岩石弾は弾き飛ばされた。 奴の持つ斧によって。


 「もう対策してきた。 どうする? 中級はもう使い尽くしたぞ。」


 残るは上級だが。 上級魔法は魔力の消費が馬鹿でかい。 それに詠唱に時間がかかる オーガ相手に打つ暇がなかった。


 「まずは足止めをしなければ… よし!」


 魔力を込め地面に両手をつく。 深く… 広く… 


 オーガが速度をあげて近づいてくる。


 俺は土魔法で障壁を作り。足止めをする。


 オーガはその障壁を次々と破壊していく。


 8枚 7枚 6枚。。 


 その隙に右手に魔力を込める。 狙うは頭上。 奴の死角からだ!


 5枚 4枚 3枚…


 さらに障壁が破壊されていく。 俺はまだ魔力を込める。 形をイメージし。 一撃を想定して…


 2枚 1枚。 


 障壁が全て破壊され。 オーガはにやりと勝利の笑みをこぼした。。


 「今だ!!」


 オーガが障壁を破壊した瞬間。 右手を振り下ろす。


 オーガの頭上から。 見えない風の一撃が。 オーガの後頭部を直撃する。


 エアストライク。 レッサーウルフに躱された魔法。


 しかし。障壁に気をそらしつつ。 奴の油断も誘えた。 そこからの見えない一撃は


 躱せるものではない。


 オーガは地面に崩れ落ちた。 


 ズシーンという大きな音が響く。 これで倒せればいいが。


 「倒したか? 」


 オーガはぴくりともしない。


 「予想外に打ち所が良かったのか? 」


 ほっとした瞬間。


 オーガが立ち上がる。 そして、大きく息を吸い。


 「グゥゥゥゥゥゥァアアアアア!!!!」


 激しい雄叫びを上げた。


 「うぁぁっぐぅぅ」


 なんて声を出しやがる。 森中に響き渡るほどの声が奴の口から発せられる。


 耳をふさぐ。 耐え切れない。 しゃがみこみ。必死に耐える。


 やがて雄叫びは収まった。


 体の硬直が解けて。顔を上げる。 そこには。


 「ふしゅぅぅ」


 オーガが目の前にいた。 笑みを浮かべて。


 「あっ アァ…」

--------------------

 死ぬ。 ここで死ぬ。 俺は死ぬんだ。 


 世界が遅くなる。 オーガの動きもゆっくりだ。 斧を手に持つ。 


 動きがスローに見える。 それに伴い。


 今までの記憶が一気に流れていく。


 「この感覚も2回目か… 転生して5年かぁ。 早いなぁ…」


 1回目はトラックに轢かれた時。 その時と同じ感覚だ。


 思い出されるのは転生してからの記憶。


 5年しか生きてないが。充実した日々を過ごしてきた自信はある。


 アイリーン オルバ 師匠。


 アイリーンには良く本を読み聞かせてもらったなぁ。 


 本を俺に読んでいる時のアイリーンは本当に幸せそうだった。あの笑顔は大好きだ。


 オルバは普段はどこかしまらない父親だ。アイリーンに良く叱られている。


 でも剣を持った彼は。 最高にカッコイイ 将来はあんな顔が出来るようになりたいと思ってた。


 師匠はには良くしごかれたなぁ。 厳しかった。 でも 師匠は俺が新たに魔法を覚えたり。


 できない事を成功させると。 良く褒めてくれた。 褒められるのが嬉しくて。


 俺は努力をするのが好きになったし。 頑張ろうとも思えるようになった。


 生前では褒められたことが少なかった。 あれもこれも出来なきゃいけないと。


 押しつぶされそうになる毎日だった気がする。


 そして。 助けたあの子の姿が思い浮かぶ。


 あの子は無事に逃げられただろうか…


 思えばあまりに咄嗟だったために。 声も顔も分からないままだった。


 最期にどんな子だったか知りたかったなぁ…


 斧を振りかぶろうとする。オーガがいた


 その瞬間… 目の前からオーガが消えた。


 ドゴォォォォォォォッォォオォンン!!


 爆音が響く。


 世界が元に戻る。 思考がクリアになる。


 何かを察した俺は咄嗟に後ろに下がる。


 「間に合ったか!」


 土煙の中。 巨大な大穴が広がっていた。


 前もって仕掛けていた魔法が発動したんだ。


 土魔法 フォールアウト


 本来落とし穴程度の範囲の地面を削る魔法。


 そこに火属性魔法を合わせ爆発させ深さと範囲を広げる。


 それを時間差で作動するように仕掛けていた。


 思ったより足止め出来なかった事と、雄叫びによりそれどころではなかったため。


 忘れていたのである。


 「自分でやった事を忘れるとは… ほんと抜けている…」


 落胆しつつほっとする。 オーガは足をすくわれ大穴に倒れている。 


 起き上がりこちらを凝視するが。 何もできないでいる。


 「無駄だ。 伊達に浅くはない。 お前とて登ってはこれまい!」


 かなりの深さの大穴だ。 そうそうは登れまい…


 今が絶好の機会だ。 そう思った俺は魔法を詠唱する。


 「ここで片を付ける。 火よ 敵を焼き払い 大地を焦がせ! 

  魔道王ヒロが詠唱する ファイアストーム!」


 火柱が舞い。 オーガの周りの囲む。 


 「これに合わせて。」


 再び詠唱を行う。


 「 さぁ! 風よ! この魔道王ヒロがその在り方を操ろう!

  無数の風の刃よ。今ここに集い敵を切り裂く嵐となれ!

  トルネード!!」


 残り魔力を注ぎ。 大穴を包む風の刃を発生させる。 


 オーガが危険を察したか。逃げ出そうとするが。 無数の風の刃が結界となり、逃げる事が出来ない。


 事前に放ったファイアストームが トルネードと混ざり。


 爆炎の刃がオーガを切り裂いていく。 


 燃え盛る炎に焼かれながら全身をズタズタに切り裂かれていく。


 「グォオオオオオオオオアアアアアアアア!!!!!!!!」


 オーガの叫び声。 相当苦しそうだ。


 当然だ。 無数の刃に切り裂かれ。さらには燃やしているからな。 逃げ道もない折の中で。


 息絶えるまでその地獄は続くぞ。


 「はぁ…はぁ…はぁ…」


 魔力が尽きる。 思考がまとまらない。 今にも意識を失いそうだ…


 回復薬を取り出し。 すぐさま飲み干す。 苦いが気にしてられない。


 「ふぅ… ど. どうなった?」


 炎の嵐が収まり。 辺りに焦げた匂いが染み渡る。 草花は燃え 焼野原となっていた。


 そこに。 全身が切り裂かれているオーガが倒れていた。


 「倒したか。 あの子は無事かな?」


 疲れている体に鞭を撃ち。 最初にオーガを見つけた場所へと戻る。


 木々の蔭に 先ほどの子共がぷるぷると隠れているのがわかった。


 「おーい オーガはもう来ないよ 大丈夫! 助かったよぉ」


 子供は木々から姿を現した。 ようやくどんな子かわかる。


 「あ… ありがとおおおおおお」


 そこには、少女がいた。


 

 



 

オーガ戦です。書いていてヒロって奴魔力量かなりあるなって思ったけど。 師匠の修行のたまものと思っていただければ… 次回は遂にヒロインが登場します。

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