無詠唱魔法
「さてと ヒロ様には無詠唱魔法を覚えてもらいます。」
訓練を始めてから半年、師匠からの一言に俺は疑問を投げた。
「師匠。この世界の魔法は基本は詠唱と魔法陣ではないのですか?」
「えぇ 基本はその通りです。ですがそれはある大人の人が魔法を学ぶ時の基本です。」
「ヒロ様のようにまだ成長していない子供の内は魔力総量も上げれますし。コツを掴めば無詠唱で魔法を唱 える事も可能なのですよ」
そういうと師匠は 掌から火球を出し空に打ち上げた。
今のは火属性初級呪文 ファイアボールだ。
この半年で俺も初級魔術は全て覚えることが出来た。その時に最期に覚えたのがこのファイアボールだ。
やはり火属性での適正が普通な為、他の属性の魔法より覚えるのに時間がかかった。
しかし、師匠の優しい指導と適切な特訓の仕方で、半年で物に出来た。
有難う師匠、でもこれが後2年半続くとなると逃げたいです…
一応この人はメイドのはずなんだけど… 家でも発言権が一番高い気がする…
アイリーンとは同等に話している。 まるで友人みたいだ。
オルバは大黒柱だから一番偉いはずなのだが、 アイリーンに尻に敷かれてるのを俺は知っている。
サリーにも。なぜだか腰が低い 弱みでも握られてるのか??
師匠は一体どんな人なのか。 半年教えられてるが知らない事も多い。
無詠唱魔術も使えるしただものではないのだろうが…
「ヒロ様には、ファイアボールを放つ時は詠唱で行っておりますよね、
「無詠唱は言葉通り、詠唱をなくし、イメージと己の魔力を組み合わせて行います。」
「まず、ファイアボールのおさらいをしましょう。」
「わかりました。 炎の聖霊よ… 火球を以て敵を焼き払え ファイアボール!」
掌に火傷するような熱い感触。
同時に掌から拳大の火球が空へと打ちあがった。
「上出来です 詠唱ではもう大丈夫ですね。 そしたら今の感触を忘れない内に 詠唱なしで同じ魔力の流 れをくみこんでください。」
「分かりました。」
イメージして魔力を込める。 思い描くのは先程出した火球 それを形にする。
体の魔力を掌に集中… 火 火 火 火 丸く もっと丸く 円 円 魔力が分散していく。
固定 固定 分散する魔力を円状に固定。 そこからさらに魔力を込める。
火球 火球 火球 先ほどの感覚を思い出せ。
イメージしろ 呼吸 心音 熱さ 重さ 感触 空気
掌から熱い感触。 ここだ! 掌を上にあげて叫ぶ。
「ファイアボール!!」
ポスンッ という音とともに。小さな火の玉が飛び出した。
「失敗ですね… でも初めてにしては上出来です。 その感覚を忘れずに何発も魔力を込めて打つので す。
「気絶しても大丈夫です。 私が見ていますから。」
魔力がなくなるまで打ちつくし。気絶して回復したらまた打ち尽くす。 そんな事を半年も繰り返してい た
「感覚は自分でしか分からないのですから。数をこなすのが一番の近道です」
「イメージを構成し魔力を込めるのを無意識に出来るようになるまで打ち続けてください。
実践で使えるようになるにはこのくらいスムーズが良いですね。」
そういうとサリーはファイアボールを連続で射出した。
その数50発。 時には巨大に 時には指先大に
5本の指に威力の違う火球を作り… それぞれ速度も威力も違うように打っていた。
的にされた木偶が瞬く間に消し炭になった。
あれが魔物であれば即座に焼肉であろう…
「お見事です…」
「あれくらいはやってもらいますよ。さぁイメージしなさい!」
スパルタな日々はまだまだ続いた…
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2年後
「連続火球 連続小石弾
左右から同時にファイアボールとストーンバレッジを連続で放つ。
剣士は物ともしない 最小限の回避で距離を詰める…
「土壁 風切刃《ウィンドスラッシャー》!
これも利かない 一旦離れなきゃ! 」
即座に火属性と風属性の混合魔法で爆風を作り 風魔法で距離を取る…
「近寄らせたら負けだ… |アイスボム! 」
火と水の混合魔法。
水蒸気爆発を起こし。霧を発生させる さらに相手の足元に泥沼と落とし穴を設置し足止めをする。
「やはり一筋縄ではいかないか… 火よ 敵を焼き払い 大地を焦がせ! 魔道王ヒロが詠唱する ファイ アストーム!」
対象がいたであろう位置に火属性中級魔法 ファイアストームを詠唱する。
火柱が舞い辺りを鳥籠のように収縮させていく。 並の相手ならこれでエンドだ。
「やったか…」
火柱が消え風魔法で霧を払う。 しかし払った先には何もいなかった。
「ッ! 何処に!?」
「後ろだ…」
ブンッ… ドカッ…
振り向く暇もなく 俺は吹き飛ばされていた
「ぐふっ」
「そこまで オルバ様やりすぎです。」
「悪い悪い。 つい熱くなってな ほらヒロ 立てるか?」
「は… はい なんとか 癒しの力よ。祈りとなりて傷を癒せ。 その身にかかる傷害を打消し浄化せよ。
アイズキュア!」
体から痛みが消えていく。
何故俺はオルバに吹っ飛ばされているのか
2年間みっちり訓練したおかげで。
無詠唱でも問題なく魔法が使え… 風と水に関しては上級魔法も覚えた…
その時師匠から提案された事だった。
「ヒロ様。次からの訓練は 魔物との実践訓練を行います。」
魔物との試合。 何時かは来ると思っていたことだった。
「ですが魔物と戦う前に。戦闘経験のないヒロ様には経験を積んでもらいます。」
そういって練習相手として選ばれたのがオルバだった…
「父様。護衛の仕事は良いのですか?」
「あぁ 最近は魔物も町には近づいてこねえしな。 暇になってきた所だったんだよ。」
町の離れに住んでいる俺たちだが。 生活するためにも仕事は必要だ。
オルバは冒険者時代に蓄えてる魔石があるため。生活に問題はないが… 町の近くに魔物等が住み着いた りすると討伐する仕事をしている。
「でな 息子がどれだけ成長してるか気になってな。 魔物退治に行くんだろ?
魔物は強いからな。 どれぐらい強いかを体に叩き込んでおかねえと。」
そういって模擬戦の相手をしてくれたのである。
しかしオルバは強かった。
こっちが無詠唱で早く魔術を打ってもそれを上回る速度てたたき伏せてくるのである。
しかも身体強化の魔法も使わず全力の半分も出してないのである。 剣士とは相当なんだなと思った。
「ヒロの魔法も大したもんだぜ。 さすがサリーに教わってるだけはあるな。
普通無詠唱で中級まで使える魔術師なんてそうそういないんだぞ」
「そうなんですか? 僕は他の魔術師を見たことがないので分かりませんけど…」
「そもそも魔術師ってのが希少だ。ほとんどの奴らは剣士の適正しかないしな。」
「その中で無詠唱で魔法を使えるなんて限られている。 俺も数度しか見たことはないがな。
ましてや上級魔法まで使えるなんてサリーくらいなもんだぜ。
師匠そこまで強いのか。 確かに師匠は底なしの強さだけど…
「ずっと疑問だったんですけど。 どうして師匠は家のメイドをしてくれてるんですか。」
「あぁ それはなぁ… なんていうか、成行き?みたいなもんよ」
「私が行き倒れてる所をアイリーン様とオルバ様が助けてくれました。 その日以来私はこ の家に生涯仕 えようと思いました。」
予想外の事実である。 ってか空腹で瀕死だったのか…
「最初は断ったんだけどな。こいつが恩を受けたら一生をかけて恩返しするのが家訓ですのでって聞かなく てな… 何度か押しかけてくるうちにアイリーンと仲良くなって 今じゃこの通りよ…」
師匠… なんというか破天荒な人だな…
「当たり前です。狐族は義理堅い種族なので… さぁヒロ様。また走り込みと行きますわよ。」
「ま… またですか…」
模擬戦後は反省会をしつつ走り込みを行うのが日課である。 剣術は魔法訓練が終わったらやりだすと
オルバが言った為… 先に体つくりをしているのである。
それに実践では動きながらが続く為… 体力がなく逃げ切れなくなったら論外である。
最低でも逃げ切れるだけの体力はつけなければいけない。
そんな毎日がきつく充実してる日を過ごしながら… ついに魔物退治へと乗り込むのであった。
次回魔物戦です。修行シーンはもっと濃く描写していきたいですし。 サリー オルバ アイリーン視点の話も入れたいなと思いつつ 話だけは進めていきます。
※評価をしてくれた人がいました。 ありがとうございます。 こんなお話を読んでくれる方がいただけで最高にうれしいです