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リンカネ☆最強魔道士ヒロの異世界冒険  作者: レヴァナント
少年期 再会のユイシス
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エスモ山


 俺達はコーシュと別れた後。フェルピスから東にあるエスモ山を歩いていた。


 深緑に囲まれたエスモ山の道を歩き続ける俺達。辺りは夕暮れに染まりだしていた。


「そろそろ夜になりそうだ。今日はこの辺にしておくか?」


 夜は魔物達が活発になる時間、街灯もない山道で、視界の悪い中運悪く魔物と遭遇でもしたら。幾ら旅慣れた俺達であっても全滅しかねない。


「そうね、そうしましょう。丁度いい所に一晩過ごせそうな洞穴もあるみたいだしね」


 シトラスが指さす方を見る。川沿いに伝っていく道の奥地にあった。中に入り灯りをつけると、丁度良い大きさの空間で、なるほどこれなら一晩過ごすには十分な場所だ。


「今日は何処まで来たのかしらね……」


「今確認をするよ、ちょと待ってね」


 俺は旅立つ直前。コーシュが寄越してくれたエスモ山の地図を広げる。


「えぇと、今日は結構歩いたはずだから。昨日の場所がここで、川沿いの道になると…… うん、大体この辺かな」


 地図に魔法で小さな印をつけていく。その数も十を超えているのだが。ザオウまでにはまだまだ先のようだ。


「まだまだかかると思う」


「そう、まぁ急ぐことはないと思うし、慎重に行きましょう、さて、私はちょっと外に出るわ」


「今日も鍛錬?」


「えぇ、どうせ今日の見張りは私の番だし、先の戦いでガイウスの戦い方を見て、少し取り入れて見たい事があるしね」


 そう言いながら双剣を手に取り外へと出ていくシトラス。


「さて、俺も続きをするか」


 掌に魔力を集中させる、


 水の魔力と火の魔力を混ぜ合わせる、膨張する魔力は形を保てずはじけ飛ぶ。


「あぁ、失敗か」


 今俺がやっているのは魔法の属性を合わせる混合系の魔法。魔法をさらに昇華させようと思い、違う属性同士を組み合わせて、違う性質の持つ魔法が出来れば、と思っていたが…… 性質の違う魔法をかけ合わせると。互いに反発してしまうようだ。既に出来上がった魔法に違う魔法を重ねる事は出来るが。最初から性質の違う魔法となると。そう易々とは出来ないか……


 先の戦いでは、シトラスの援護に周りきれていなかった部分もある。そしてあの黒いオーラのようなもの…… あれは奴の持つ黒剣から発していた、感じたことのない力、俺はあの禍々しい存在に足が震えてしまっていた。そのせいで、シトラスは瀕死になってしまった。彼女はその事を自分のせいだと言っている。だが、あの時に俺が動けていれば、あの力に対抗できる術を持っていたらシトラスを守れたかも知れないのに。


 そういや、シルクは俺の体を使った時に、どうやってガイウスを退けたんだろうか? シルクが特別な存在だという事は理解したけど、実際に使ったのは俺の体だ、つまり、俺の知らない俺の力で、ガイウスに立ち向かえた事になる。リンクした時に聞いておけば良かったな……


「聞いてみるか」


 俺は目を閉じ意識を集中させる。ラカでやったみたいに、脳内でシルクの事を考えながら呼びかける。どんどん意識が沈んでいく、


 ザザッ、ザザッ


「?」


 おかしい、リンクが出来ない。意識を集中させようとすると不自然にノイズが入りだす。こんな事は今までになかった筈なのに


 その後、何回か試してみたけど。結局リンクする事は出来なかった…… 


「シルクの方で何かあったとかか?」


 そういえば力を使ったとか言っていた。そのせいでリンクできなくなってるのか?


 うーん、しかしこれは困った。力を教えて貰う以前に、リンク出来ないのは…… 不安になってくる。不調だったのだろうか。でも前は出来たしな…… 指輪も無事だし、分からない事が多いな。


 ブォン


 考えていると、外から何かを振り下ろす音が聞こえてくる。


「シトラス、まだ鍛錬していたのか」


 外に出ると。月明かりに照らされながら彼女は無心に剣を振っていた。俺が寝着いてからそれなりに時間は経っている。その間も、彼女は鍛錬をしていようだ。


「やっぱ、あいつは凄いな」


 彼女の努力と真っ直ぐに己を高めるひたむきさに俺はただただ感心していた。彼女は、何処までも純粋に強さを求めている。俺も、もっと頑張らないと、その気にさせてくれる。


「あら、まだ起きていたの?」


「あぁ、少し眠れなくてね」


「明日動けなくても知らないわよ」


「大丈夫だよ、そこまでやわじゃないし、なんだか寝付けなくなってね」


「そうなの、じゃあ暇なら少し付き合いなさい、久しぶりに打ち合いしましょう」


「シトラスと? 俺なんかじゃ相手にすらならないよ」


「ちゃんと手加減してあげるから。そう嫌な顔しないの」


「う、分かったよ」


 ひたすら基本の型を確認しながら打ち合う俺達。手加減されていると言っても力量の差は歴然だ。一手一手事に、彼女の攻撃を裁ききれなくなっていく。


 それでもなんとか喰らいついていく。彼女は何か考え事をしていて、それを試している。一体何を考えてるのだろうか。


「ウッ……」


 そうこうしている内に、首筋に剣を突き立てられ、俺はあっさりと敗北した。


「この辺で良いかしらね、ありがとうね、付き合ってもらって」


「いや、構わないよ、それにしても、考えながら戦ってたけど。一体何を考えてたの?」


「ガイウスとの戦いからをでね、気付いた事があるのよ。それを試しているのよ」


「どんな事?」


「うーん、口では説明するのは難しいわね。感覚的な事でしかないから、」


 持ち方を変えてみたり、足幅を変えてみたり、逆手にしてみたり俺にはその動作を見ても、彼女が何をしようとしているのか理解出来なかった。


「こうじゃない、速さを維持しつつ力まずにやるには…… いや、こうして、うーん 難しいわね」


「大変そうだね」


「そうね、でも、まだまだ強くなれるって事だけは分かる、後は私が物に出来るかどうかね」


「君なら出来るさ」


「随分簡単に言ってくれるわね」


「ずっと傍で見ているからね、君は言った事は必ず叶えてきた。今回だって君はもっと強くなれる。信じてるよ」


「そうね、ヒロがそういうなら。私も迷わないでやれるわ。ありがとうね」


「どういたしまして、じゃあ俺はそろそろ寝るよ。また明日ね」


 顔を近づけ、口づけをする。不意打ちの形となったせいか、シトラスが顔を赤らめる。


「もぅ、いきなりはずるいわ……」


「ごめんごめん、可愛かったからつい」


 怒りながらも嫌そうにはしてないようだ。こういう反応してくれるからついやってしまう。


「まったく、そういうのは普通にやりなさい。じゃあ、お休みヒロ」


 今度はシトラスから近づき口を重ねる。


 俺は寝床に戻り火を消して目を瞑る。暖かい気持ちになりながら、心地良い気分で眠りについた。


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