表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンカネ☆最強魔道士ヒロの異世界冒険  作者: レヴァナント
少年期 ブランド大陸編
28/43

邂逅の指輪の行方


「ヒロ!起きて、ヒロ!」


 まどろみの中、声が聞こえた。寝起きは頭が働かない、半身を起こすもまだ夢の中だ、ふわふわとした感覚だ。この状態で二度寝をしたらきっと最高だろう、俺は意識を目覚めさせようと体を動かす。

 

 フニッ ふと、顔に、柔らかい感触が感じられる。なんだこれは? 柔らかく、暖かい、凄く安心の出来る感触だ。


 あぁ、もっと味わっていたい。俺は堪能するべく顔を動かす。まるで赤子に戻ったかのような感覚、つつましくも凹凸のはっきりと分かるそれは、形を変えながらもしっかりとした弾力を味わわせてくれる。それは天にも昇るかと思われる程に心地良い感触だった。


「何寝ぼけてるのよ!」


 ガツンッと重い一撃が脳天に響く、天にも昇るような心地よさと暖かさから一転、冷たく、固い床にたたきつけられる。天国と地獄を一度に味わったかのような感覚だ。


 眼を空けるとシトラスが見下ろしていた。何故だろうか、若干怒っているようにも見える。


「やぁ、シトラス、おはよう。温もりのある柔らかい、羽毛みたいな物に包まれて最高の気分だったんだ。それなのに、起きてみたらそんな感触は何処かに言ったかのように、こうして冷たい床の上で君を見上げている。どうしてだか分かるかい?」


「それはねヒロ。貴方が最高の気分を味わったことで天罰を食らったのよ。仕方のない事ね」


 口調は穏やかに、だが怒りの表情は変わらない。俺はシトラスにそっぽを向かれる。一体何をしてしまったのだろうか?


「ヒロ、起きた所悪いが、荷物を確認してみろ」


 声がしたのは後ろの方からだ。振り向くと、フェルがその自慢の槍を持ってその場に立っていた。表情も硬く、整った顔つきが、目を吊り上げてさらにキリットしている。これは魔物と戦うときと同じ表情だ、彼は余り表情豊かな方ではないが最近は彼の事も分かってきているようだ。それにしても、随分と物騒なモーニングコールだこと。


 そんなフェルなのだが、足元でドタドタと小うるさい音が聞こえてくる。


 足元を見ると、大きな袋が右往左往に跳ねていた、丁度人を収納できる程のでかい袋だ、フェルはその袋を監視するかのように見つめている。


「フェル?それはなんなのです?}


「これは、昨日俺達に襲ってきた盗賊だ」


「盗賊!?何時の事ですか?」


「今朝方の事だ、完全に寝静まっている所をコソコソとしていたんだ。俺とシトラスは寝ていても気配を感じ取れるから、対処する事は容易だった。」


 シトラスの方を見る、彼女は当然とでも言わんばかりに自信満々そうに、鼻を高くしている。


「この町に来て最初にこれか、余り幸先良い日ではないな、ヒロ、お前はこの通り無防備に寝ていたからな、何か盗まれたものが無いか確認して見ろ」


 俺は身の周りの物を確認する。荷台に畳んでしまっていたシンドラはきちんとある。触られた形跡もない。所々汚れや破けてる部分が見当たるが、それは自分が付けた傷である、旅をし続けてすっかりボロボロになって来ていた。


 エイフリードを確認する。蒼く輝く刀身は、何処も変わった様子はない。エアストを発動し、魔力を込めてみる。うん、しっかり発動もする。これも無事なようだ。


 道具袋の中も確認する。これには俺が認識した人以外が触ると、毒性の粘液を噴出するようにザイーラの町で仕立てて貰った特注品だ。もちろん中身も昨日確認した時と同じだ。大量の石金貨がジャラジャラと音をたてている。


 特に何も盗られてはいないようだ。どうやら盗賊は二人だったみたいだな。運悪くシトラスとフェルの部屋に侵入してしまったのだろう。しかし、これがもし自分に来ていたとなったら、全てを奪われていた可能性が高い。俺は身ぶるいをした。


「大丈夫です。全て盗まれていません。運が良かったです」


 そういって、荷物を取ろうとした。


 ん?何か違和感を感じる。


 欠けている。


 そう確信した。しかし、何が欠けたのか、何がないのだろうか…… シンドラもエイフリードも荷物も全てある。何一つ盗られてはいないはずだ。それなのにこの強烈な違和感は何だろうか?俺は何か忘れてはいけないものを忘れている気がする。


「どうしたのよ?あれ?ヒロって左手の小指に指輪つけていなかったけ?何時も着けてる印象があったけど、流石に寝る時には外しているのね……」


 もし、シトラスが気づいてくれなかったら。俺は一生気づくことはなかっただろう。


 「指輪……ハッ!そうだ、邂逅の指輪がない!!」


 シルクから貰った邂逅の指輪。リンクするのに必要で、俺は肌身離さず着けている。そう、この小指にだ。しかし、俺の視界にははめられているはずであろう物が無くなっており、小さな指だけを映し出していた。


 「指輪?あれか、お前が馬車の荷台に居る時や、寝る時に、必ず眺めては奇妙な笑みを浮かべて、あげく口づけまでするあの指輪か……お前は相当大事にしていたしな」


 何か余計な事を言われたようだが気にしないでおこう。っというかこの人俺の行いを見ていたのですね、少し気恥しい。


「えぇ、その指輪です」


「昨日は何処にしまっていた?」


「俺はあの指輪は何時も肌身離さず着けているんです。昨日だって、俺は外したりはしていませんでしたよ」


「それが無くなっているという事か」


「ねぇ、ヒロ?本当にほかの物は無事なんだよね?」


 もう一度身の回りの物を確認する、何度確認しても、指輪以外に無くなっている物はなかった。


「えぇ、他の物はこの通りすべて無事です」


「おかしいわねぇ」


「何がおかしいのです?」


「ちょっと考えてもみなさい、ヒロはその指輪を後生大事に肌身離さず着けていた、そしてそれが盗まれた、そうよね」


 コクリと頷く


「あの指輪がどれほどの価値があるのかは分からないけど、ヒロは完全に無防備だったんだから、他の荷物だって盗られていてもおかしくない、なのに、その盗賊は貴方の指輪だけを狙って盗んでいった。それっておかしくない?肌身離さず着けている物を盗るなんて、リスクが高すぎるのよ」


 そう、そこもおかしい。普通肌身離さず着けている物を盗むか?他の物の方がはるかに簡単であろうに…… 


 あの指輪の価値は俺には分からない。俺が一人で思い出の品と決めているだけで、実際の価値なんて図った事もない。はめこまれている宝石はそこらの物とは群を抜いて輝きが違うが、他のシンドラやエイフリードに決して価値が無いわけではない。その二つですら、売りに出せば相当の値がするだろうし。何より石金貨を入っていた袋を持って行かなかったのはおかしいのだ。


 何故、邂逅の指輪だけを盗んでいったのか…… もしかして、あの指輪を知っているものがいるのか?この町に?


 考え込んでいると、フェルの足元にあった袋から一人の男が顔をはいずりだした。よほど苦しかったのか、過呼吸とも言えるほどの咳き込みをしている。


 そいつらは小太りな顔つきをしていた人族だった、ボサボサに生えた黒い髪にちょびひげが口の周りを囲うように生えている、まさに絵に書いたような盗賊だった。


「おい、お前達、昨日侵入してきたのはお前達の他にもいるだろう、そいつは何処に行った?」


「知らねえよそんなこと、大体知っていても教えるか…… ウワッ!」


 男が怒声を上げる、言い終わる前にフェルが槍を首筋に突き立てる。深紅の瞳が男たちを捉えている。この眼は魔物達に向ける眼と同じ、つまりフェルは本気でこいつらを殺すかもしれない。それも躊躇もなくだ、その意思を男たちも感じ取ったのだろう。顔を青くし瞳には涙を浮かべていた。


「ひぃぃぃ~~」


「命が惜しければ正直に話せ。生憎俺は殺生をためらう男ではない」


 その脅しで十分だった。男達は素直に口を割った。


「襲ったのは3人だ。俺とこいつと、後一人居る、俺達はそいつに指示されて盗みに入っただけだ。そいつの事は前にも一緒に盗みを働いた事があるが、俺達とは比べ物にならない。そこの坊ちゃんの指から悟られず指輪を盗るなんて造作もない程の腕前だ、そいつは足音たてず、姿を眩ませ、一瞬で目標物を取る事が出来るんだ。目の前で見ていた連中が盗られたのに気づかないくらいにな。」


「その男は何処に行った……」


「それは知らねえよ」


 槍の先端をクイッと上げるフェル。


「知らないとは言わせないぞ」


「本当だ、俺達は奴にここにザイーラから来たカモがいると聞いただけだ。後の事は何も知らねえ!本当だ。信じてくれ!」


 しばらく槍をつきつけて眼をじっと見るフェル。


「そいつの顔は?」


「分からねえ、俺らも確認しようとしたんだが、何故か顔だけが暗闇に覆われていたんだ、すまねえ、分からねえよ」


「お前達に依頼を頼んだ奴は誰だ、言え」


「アーデントって言ったらお前さん、信じるか?」


「知らないわよそんなの、私たちはこの町に来たばかりなんだから分かるわけないでしょ」


 シトラスの言う通り、俺もその名前を聞いても何も分からなかった。


 だが、フェルだけが一人驚愕の表情を浮かべている。どうやら何か知っているようだ。


「アーデントか……本当にそうなのか?」


「あぁ、言っとくが嘘はついていないぞ」


「そいつは、また厄介だな」


「アーデントって何なんです? それに厄介だというのは?」


「この町の自警団だ、治安の悪いこの町の抑止力となっている組織だ。正義感の強い魔族の男がリーダーだったはずなのに、一体どうしてなんだ…」


「その男はいなくなったよ、今は新しい奴がリーダーについている。それと同時に、方針も変わったのさ 表向きはまだ町の象徴だが、裏ではかなりあくどい事もやっているらしいぜ」


 アーデントという組織、そこに頼まれたこいつら、そして俺の指輪を奪っていった奴。


 とにかく、指輪の在り処を見つけて、取り戻さないといけない。


 俺は焦りにも怒りにも似た感情を抱えていた。


 俺達は一旦町に繰り出し、アーデントについて町の人達に話を聞いて回った。


 ある道具屋の主人は、昔酒におぼれて定職にもついてなかった自分を職につかせて更正してくれたと言っていた。


 ある町の女性は、横暴な冒険者に襲われた時に、組織で報復をしてくれたと言っていた。


 ある人は、お金がなく食糧が買えなく倒れていたところに来て。パンを恵んでもらえたとも言っていた。


 アーデントという組織に助けられた人はたくさんいるみたいだ。なのに何故盗みの依頼を出したのか。


 それに、何人に聞いても、組織の場所は知らないと言われる。一番重要な情報が欲しいのに…


「アーデントに助けられた人は大勢いましたね。そうなるとやはり不思議なんですよね。どうしてこんな事を……」


「分からん、だが人が変われば実態も変わると言うものだ、盗みを働くという事はやはり金銭の問題だろうか……」


「いずれにしても早く探し出さないといけないね。こうしてる間にも見つけれる可能性は少なくなるわよ」


「どういうことなんだい?」


「盗品っていうのはね、足がつくまえにさっさと別の所に隠すものなのよ、馬車を使ったり、貿易商に頼み込んだりしてね、ひどい時は冒険者に依頼をして安全に運び込んだりね、彼らは依頼の報酬さえもらえれば中身なんて確認しないからね、危険なのは分かるけど、それで目途がつかなくなるのはヒロの本意じゃないでしょ。そういう時は、独断で行く時もあるけど」


 それは盲点だった、そうか、盗んだ奴らにとってはとっとと売り払って、足がつかないようにしたい、それなら、時間をかけていると既にこの町にないかも知れない可能性もあるのか……


「それなら、この町に詳しい奴に聞いた方が早いな」


「誰ですか?」


「お前達もあっただろう、フンだ」


 フンか、そういえば彼は一番町に詳しいと自称していたな、ここに案内される間にも、ラカの町について凄く話していた事を思い出す。彼ならば何か分かるかも知れない。


 俺達は期待を込めて彼の元へと向かった。昨日と寸分違わずに同じ場所、ピエロのような不気味な笑みを浮かべながらまるでそこが自分の居場所であるかのようにそこに存在していた。


「おやおや旅人さん。そんなに血相を変えたりして一体どうしたのですか?急いだ所で良い事なんて一つもありません。ゆっくり進めば見落としてる事もすぐに見つかるでしょう」


「ゆっくり行きたい所なんですけどね。フンさん。貴方に一つ聞きたい事があるんだ。この町を誰よりも詳しいと自称する、貴方だけにしか頼めない事だ」


「おやおや、それは嬉しい限りですね。さてどんな事でしょう?」


「この町で、他の町荷物を運ぶとしたらどんな手段を取る?」


 するとフンは真面目な顔になり考え出す。その顔付きは、どこまで答えていいのか考えている顔付きだった。数秒の時が立ち、考えがまとまったのか、彼はその顔を元に戻し軽快に口を開いた。


「その話ですと、もしやアーデントに掴まされましたな?」


「やはり、アーデントなのか」


「そこのお兄さんは分かっているようですね。そうです、この町の象徴とも言うべき存在、それがアーデントなんですよ」


「そいつらの居場所を知りたい知っているか?」

 

 そういうとフンはある方向を指さした。そこには細長い建物が1つたっていた


「あの細長い建物が見えますよね。そこのさらに奥、路地裏を通り、狭い道を抜けると。開けた場所に出ます。そこの一角にある、でかでかとした看板をぶら下げた所そこがアーデントの住処と言われています。そこに、六角形で刻まれた紋章が目印ですよ」


「貴方達そこに行くつもりで?」


「そう、俺は取り返さなければ行けない大事な物があるから」


「そうですか、私はやめといた方が良いと思われます。あそこにはラカの重要な拠点地下手に手を出せば返り討ちにあうだけです」


 そういうとフンはまた奇妙な笑いを浮かべる、話は終わったという事か


「さぁ旅人さん、他にもラカのいいところをたくさん紹介しますよ! 付近に生息するサイバースパイダーの足の酒とか、奇妙な風景を描くヘンテコな画家とか!」


「ありがとうフンさん、さらばだ!」


「あぁん旅人さんはやい、お気をつけて~」


 返事を待たずに全速力で駆け出した、心臓が今にも破裂しそうなくらいだ。


「ちょっとヒロ! 焦りすぎよ。もうちょっと落ち着いても良いでしょう!」


 落ち着けるわけがない。こうしてる間にも、居場所が分からなくなるかもしれないのだから。


 止まっている暇なんてない。


 ぜぇ…… はぁ…… と息が切れる、呼吸が定まらない。それでも駆けていく


 やがて狭い路地道の裏を走り、無造作に置いてある木箱をどけながら進むと、また大きな道通りに躍り出る。


 入口付近にあった建物群と遜色ない。いや、こちら側の方が実は町の中心なのだろうか?まだ昼前なのに人通りが激しく入り乱れている。商店が所々にあり、景気の良い声がそこらに聞こえてくる。この町にもこういう場所があったのだろうか。


 だが、今は観光気分じゃない、目的の建物を見つけなければ。


「はぁ、ヒロったら焦りすぎよ。ほら手分けして探すわよ」


 バラバラに散らばり、詮索を開始する。


 目当ての建物は物の数分で見つかった。


「ここがそうなのか?」


「そうだ、あそこをよく見て見ろ」


 そこは3階建ての屋敷みたいな建物だった。住宅街に並ぶ名のある名家のような存在感がある。

正面から見ると大きく六角形の紋章が刻まれている。間違いないだろう。


正面から、その建物の扉が開く。中から話し声と共に誰かが出てくる所だった。


「二人とも、隠れろ」


 俺達は物陰に隠れ様子を伺う。出てきたのは二人の男だった。一人は背丈が低く、人族の子供と同じくらいだ。青い肌色の顔をしており鼻と耳が尖っていた。もう一人は対照的に、屈強な成人男性よりもさらに一回り大きく、その大きさにつりあうような黒く光る筋肉と紫色に輝く大角が眩しく光っていた。


「なぁデューオ。今日仕入れたあの緑に光る指輪、あれってなんなんだ?ボスが大層ビックリしていたぞ」


「さぁな、俺にはただの小綺麗な指輪にしか見えなかったけどな、何かのマジックアイテムなんかな?」


「そいつは良いなぁ、俺の怪力をもっと膨れ上がらせるマジックアイテムとかだったら是非つけてえぜ」


「お前がそれ以上筋肉つけた所で気持ち悪さしかねえからやめろやめろ それにお前のその太い指じゃあ入れようとした瞬間に壊れてしまう」


「そいつはひでえなぁ、お前だってあんな綺麗なの似合わなすぎてつけた瞬間に輝きを失って毒の指輪になっちまうよ」


「なんだとてめえ!!!」


 緑色に輝く指輪。間違いない、邂逅の指輪だ。


「それで、ボスがこの町から出るのにどれくらいかかるんだっけ?」


「なんだ?聞いてなかったのか?あと半日もたたずにモールガに向かうってよ、お前話聞いてなかったのか?まったく、図体だけが取り柄だなお前はよ」


「しょうがないだろ、覚えてないもんはしょうがないんだし。それに俺が覚えてなくてもお前だったら覚えてると思ったから言ったんだよ」


 どうやらアーデントのボスとやらはモールガに向かうらしい、こうしてはいられない。時間がない、そう思った俺は魔力を込める。


「まって、何考えてるのよ!?」

 

 シトラスが静止しようとする。


「決まってるだろ、ここにあるのは分かったんだ。持ち出される前にカタをつける」


「落ち着け」


「落ち着きなさいヒロ」


 二人の声が重なる。


「俺はいたって冷静だ」


「冷静じゃないわよ、そんな考えなしで事を起こす奴じゃないでしょ!焦る気持ちはわかるけど。もしこのままヒロが破壊したら町の人に気づかれるし、もしかしたら警戒して指輪を隠すかも知れないじゃない。そうしたら見つけれなくなるわよ」


「そうだ、少し冷静になれ」


 二人に止められ、俺は今にもはちきれそうな魔力を抑える。

 

 大きく深呼吸をする。


「落ち着いた?場所は分かってるんだから、何処か非常用の入口があるはずよ、こんな大きな建物だもん。入口がひとつなだけなわけないじゃない」


裏手側に回る。そこには鉄格子で覆われており、簡単には入れそうにない。


「ここは、ダメか、開かない、他には……」


 キョロキョロと周りを見渡す。すると、一つの小さな通路が見える。排気口か何かだろうか? 丁度子供ならなんとか入れる程の大きさだ。ここなら中に入れるかもしれない。


「良い所があったわね。ここから入れそうじゃない?」


 大きさ的に、俺とシトラスは難なく入れそうだが……


「俺は厳しいな」


 そう、フェルが入るには狭すぎる穴だ。


「そうね、確かにフェルは入れないわね、私とヒロで取り戻してくるわ」


「平気か?」


「平気よ、フェルは近くで見張っていてほしいわ、もしかしたらすれ違いになるかも知れないしね」


「分かった。だが無理はするなよ。ヒロ、今のお前は冷静さを欠いているからな」


 手を触れるとベチャリとした感触を感じる、古くこびりついた油が、手にまとわりつく、気持ち悪い。


 火魔法で入口を溶かす。中を見ると薄暗い中億に灯りがついてるのが見える。


「汚い所は余り入りたくないな……」


「そんな事言ってるんじゃないの、ほら、さっさと言って取り戻すわよ 大事なものなんでしょ?」


「あぁ、何よりも大切な物だ。よし、行くか!」


 俺とシトラスはアーデントの内部へと潜入していった。





生きてはいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ