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リンカネ☆最強魔道士ヒロの異世界冒険  作者: レヴァナント
少年期 ブランド大陸編
27/43

ラカへの旅路不自然なリンク

 ラカの町へと旅立って、かなりの時間が立った、今日が旅をして何日目なのかは数えもしなくなった。最初は楽しかった。旅というのは俺の憧れでもある、原因になったのがデルタの転移で、家族が無事か分からない中、楽観視できる状況ではないにしてもだ。俺の心は羽馬のように昂ぶっていた。


 しかし、その昂ぶる感情は、時間が立つと共に、消え失せて行った。


 雲一つない空模様、長く続く変わらない景色、道行けば魔物達は頻繁に現れる、長旅のせいで体が軋むがそれでも進み続けた。歩きすぎで足が痛くなる度にキュアをかけ続けた。痛みは治るが体力は戻らない。食料も底をつきそうだ、量はそれなりに積んだつもりなのに。


 幸いにも肉食で食える魔物はそのまま解体し、焼いて食う事が出来るから餓死する心配はなかった、最初はそれも旅の醍醐味だと思い、一人興奮していたのだが、すぐに飽きてしまった。


 フェルとシトラスが居るからまだやれてるようなものだ、フェルは慣れているし適度に心配してくれている。夜の見張りも進んでしてくれている、とても頼りがいがある。シトラスもまだ疲れてはいないようだ やはり旅をしてきた二人は強い、俺は痛感した。

 

 舐めていた訳では無かったが…… 舞い上がる気持ちが前面に出すぎて、反動が来ている。正直俺だけだったらとっくに音をあげていただろう。長い旅路にほとほとうんざりしていた。


「フェル…… 後どれくらいかかりますかね」


「なんだ、へばってきたか、まだかかるぞ、半分にも達してないからな」


その言葉を聞いて崩れ落ちそうになる、ザイーラでの生活にすっかり順応していた俺には辛い一言であった。


 前世でも経験がなく、この世界ですら10の年までヌクヌクと暮らしていたから当然でもある。


 今夜も、道中で出くわした、レッサーウルフの丸焼きと、フェルが何処からか取ってきていた変な色合いの木の実を食した。こうした食事をする度に、茨の揺り籠の美味しい料理が脳裏に思い浮かび、嫌でも比較してしまう、あぁ…… もう一度味わいたい物だ。


 俺が一人でそうした事を考えながら、シトラスに愚痴をこぼしたりもしたが、意外にもシトラスは文句は言わない。舌が肥えてるとか、慣れてないだけよとかで返してくれる。それに魔物も案外微妙な味の癖があって美味しい物よと言い出す、俺にはどれも味は変わらないように思える。


 そう思うとレインボーフィッシュは最高の食材なのだと俺は一人でに感じていた。あのロシアンルーレットを体現したようなあの魚は、甘さも辛さも苦さもどれもあの魚だけで味わえる、至高というのはあの魚の事なのではと思い始めていた。


 ドラゴンの肉とかは最上級の味がするらしいとフェルが言っていた、何が違うのかと聞いてみたところ、思わず笑みがこぼれる程の肉汁と柔らかさ、それに味わったことのないうま味がするらしい、フェルから笑みがこぼれるのだから相当な物だと思うのだが、今ドラゴンの肉を食った事のなく、現状に不満を持っている俺にとっては嫌味にしか聞こえなかった。でも、いつか食ってみたいと秘かに決意をしていた。


 行く先々で色んな魔物と出くわす、大木に凶悪な人の顔で枝をはわせてくる人面樹。巨大な斧を振り回す豚のような形のトロールマッド、でかい翼をなびかせ、暴風を巻き起こすウィングバード。どいつもCランク以上と認定されている凶暴な魔物達のようだ。


「ふざけんなよもおおお」


 俺はそいつらに、鬱憤をはらさんとばかりにフレイマリーブラスターで一掃する。CランクだろうがBランクだろうが今の俺にはどいつも同じ、精神的に参ってる俺のストレスの捌け口となっていた。辺りは竜巻で荒れ地となる、シトラスとフェルは馬車内で見守るように見てくれていた。


「今日も荒れてるわね、大丈夫なのかな?」


「あいつは長旅は初めてだ。色々と不安定なんだろう、まぁ落ち込んでいるよりは良いんじゃないか?」


「それもそうだけど、情緒不安定じゃない?」


「このやろこのやろこのやろ!」


 道を塞ぐ魔物達を魔法で一掃する。魔力は有り余っている為手当たり次第に打ちまくる、昂ぶる気持ちを魔物に八つ当たりし、手当たり次第食える奴を食し、歩みを進める、ただそんな日々をしていた。


 そんな感じの生活が数か月は続いていた。


「シトラスは……平気なの?」


「当たり前じゃない、まぁ私も最初ははヒロみたいな状態だった時もあるけれど、もう慣れたわね」


「すごいなぁ……」


「慣れれば平気よ、後は体力をつける事ね」


「体力トレーニングはしているはずなんだけど……」


「足りないわね、身を焦がすくらいには走り込みなさい、それより、今日もやるわよ」


 シトラスが鞘から一つの剣を取り出す。一見何の模様もついてないただの鉄剣なのだが、これはザイーラで売っていた、名をヘックスと言ったか。魔力に耐性のある剣、俺のエイフリードみたいな形をしている。シトラスには既に双剣があるため、この剣を使う訳ではない、では何故入手したかというと、魔法剣、エアストの練習の為だ。


 魔法耐性があるという事は、ちょっとやそっと魔力を込めた所では壊れないという事だ、俺の土魔法で作った木剣では、魔力を込めすぎるとバラバラになってしまう。シトラスは魔法制御に関して言えば雑であった。勢いよく込めすぎるのか、それとも留まらせる制御が苦手なのか、魔力を込めすぎてバラバラにした俺の木剣は百程度では済まない。


 まぁ、日に木剣を何本作ろうとも俺の魔力は尽きはしないのだが…… 今の俺は魔力切れを気にしたことはない、この体には、無限の魔力が込められていると自負している、まぁ他の魔道士を見ていない俺だ、あぁセリアが居たか、ザイーラで会った、しかし彼女の魔法も結局見れず仕舞だ、魔力量を図る基準にはならなかった。


 そう思っていると、シトラスが魔力を込める、ヘックスの周りに淡い光が浮かび、剣の外側に覆うように展開される、次第に渦を巻くように炎が展開されていくのだが、途中でその炎は消え、魔力も分散していった。


「あぁ~、また失敗、難しいねこれ」


 数百回目の失敗、もう数を数える事もなくなった。これでも最初は魔力を込める事すら出来なかった物だから、それからすると、かなり上達したと俺は思う。俺も魔法制御に関してはかなり時間を食った方ではあるからシトラスはかなり筋が良いと思う。


「今のは良かったよ、もっとイメージを持つと集中しやすいと思。シトラスはどんな風に魔法剣を使いたいの?」


「それはもちろん、どんな相手でも攻撃を通して、一撃で葬り去る、絶対的な火力ね」


「じゃあそれを形にするんだ、シトラスの中にあるその思いをどんな形で表せばその通りになるかをね。常日頃からのイメージが魔法を使う上で一番大事な事だから」


「そんなの、漠然と思うだけじゃ駄目なの?」


「抽象的だと魔力を固定するには難しいかな、シトラスは感覚派だろうから、それでも出来そうな気はするけど。具体的に何処に込めたいか、どういう形にしたいかを思いながらやった方が良いよ」


「う~難しい~」


「外に纏わせたいからこうすればいいのよ!」


 唸ったシトラスは、剣を手に持ち、柄を掴んで魔力を込めようとした、そんな事したらケガすると思うけど。


「痛っ!」


 予想通りかなと思った、シトラスの指から血が出ていた、どうやら切ったようである。


「あちゃー、馬鹿ね私は、こんな素人でもやらない事するなんて、まぁいいわ唾でもつけとけば治るでしょ」


「大丈夫?今なおすよ、手貸して」


 俺は水魔法でシトラスの傷口を綺麗に洗い流す。そうしてシトラスの手をガッチリ掴む、剣をずっと振っているからか、掌の豆が何個も出来てコブになっている、一体どれ程剣を振ったのだろうか、しかし、それでいて、女の子らしい柔らかく暖かい感触もちゃんと感じられる、ユイシスもこんな暖かさだったなとしみじみ思いつつ、しばらく堪能していた。


「ちょっと、直すんじゃないの?」


「あぁ…… うん、ごめんごめん、今直すね。癒しの風よ、キュア」


 癒しの風が手の周りを覆い、シトラスのキズを治していく。傷口も綺麗になくなる。


「ありがとう。なんか手を握る程でもなかったとは思うけど…… お礼は言っとくわ」


「いやいやいや、手を握っての回復はとても重要、体温を感じ取り、魔力の通貨するのに適した、とても重要な行為なんだよ!!」


「そうなの?でも戦闘中はそんな事してないわよね?」


「戦闘中とこうした状況では集中の度合いも違うから……」


 我ながら苦しい言い訳だ、手を握るのは、確かに通りが多少は良くなるが、一番の理由は、単純に手を握りたいからという理由だからだ。


「そうなの?じゃあこれからもケガしたらよろしくね」


 ヨシッ! 俺はシトラスに見えない角度でグッっとこぶしを握り締める。


 その行為をフェルが呆れた顔で見ているのを俺は見逃さなかった。


 そして、何日かが経過した後、町と思わしき影が遠目に確認することが出来た。


「フェル!シトラス!見てください町ですよ町!やっと着いたんですねええ!!」


「嬉しそうにはしゃぐのは良いが、まだあんなに遠いからな、まだかかるぞ」


「それでもやっとですよ、もう俺はクタクタです!着いたら速攻で宿屋に行きます!良いですね!」


 この長旅から解放されようと思うと自然とテンションも上がる。体も心もグッタリしていた。シトラスも最近は何時ものツヤがある顔ではなく、やつれた青い顔をしていた。フェルは表情は変わらないが、ふぅという安堵のある息が聞こえた。彼もやはり疲れていたようだ。


 ラカの街はザイーラの街よりは活気がないようだ、人の数も賑わいもそれほどではない、何処か嫌な臭いをかもしだしていた。


_____________


「ようこそ、平和と安心の街ラカへ!私はこの町ラカを隅々まで知り尽くし、旅人様にラカの素晴らしさを知ってもらう事を第一と考えています、フンと言います。旅人さんはどちらから来ました?」


 ラカに着いた俺達は、突然、陽気なしゃべり方をしてきたフンという小太りでアラビアンな恰好をした人族に捕まっていた。


「ザイーラから来ました。」


「ななななんと!ザイーラからですとは、それは大変だったでしょう、お疲れ様でございます!」


「えぇ、大変でした。早速俺達は、体を休めたいので、この町のオススメの宿屋を案内してほしいのですが……」


「分かりました。この町一番の宿屋を紹介しますね!ところで旅人様、その指輪、とても綺麗ですねぇ。かなりのお値打ち物では?もしよろしかったら、私商人も営んでおりまして。こちらで相応の値段で買い取らせていただきますけど??」


 フンが指差してきたのは俺の小指にはめられた邂逅の指輪だった。


「いえ、売る気はないではないです。これはある人から貰った大事な物ですから」


 シルクから貰い、ユイとのつながりのある邂逅の指輪、例え何があっても、手放す事はないと思う。


「そうですかそうですか…… これは大変失礼をしました」


 フンがニヤリと不気味に笑う、奇妙に思ったがそれよりも疲れたお腹がすいた俺は、フンの案内についていった。


「ここがこの町一番の宿屋です。ごゆっくりどうぞ」


 きらびやかな男の絵が描かれているそこは、宿というには派手すぎる外装をしていた。


「本当にここが一番なの?」


「俺が前来た時は無かったが…… 色々と変わったのかも知れんな」


「ヘンテコとしか言いようがないわね。まぁいいや、疲れたし入りましょう」


 中に入る、中はビカビカとした装飾で埋め尽くされていた、蛍光がそこらかしこにつけられ、受付と食事も出来るのだろう。大広間には多数のテーブル、壁には良く分からない人物の壁画や、あのデルビニクパンダの顔が飾られた剥製等が有り、見渡すだけでも退屈しない作りとなっている。なるほど見た目のインパクトはあるな。


「変な所ねぇ~無理やり着飾ってるようにしか見えないわ」


 俺もそう思う、まぁ紹介されたんだ、多少は眼をつむろう


「いらっしゃいませ、旅人さん。本日は宿泊に?」


「はい、それと暖かい食事を頂けませんか?」


「わかりました、宿泊は石金貨5枚となります」


 俺は石金貨を払う、ヘックスを買った時にだいぶ使ったが、まだまだお金は有り余っていた。


 テーブルにつくと食事が運び込まれて来た。久しぶりの暖かい食事、ブランド大陸で取れる、山菜の盛り合わせ。ワーシープを丸ごと焼いた物、旅の途中で取った木の実を味付けとして使っている。


 俺達は久しぶりの暖かい食事に胸を躍らせた。一口食べる度に活力がみなぎるのが分かる。


「うめぇ…… うめぇよぉ……」


「大げさねぇ、あ、これ美味しい!」


 むしゃむしゃとしゃぶりつく俺達。久々の味のある食事に俺は泣きながらしゃぶりついた。


「ふぅ~ お腹いっぱいです。ご馳走様でした」


「結構いい味してたわね」


「そうだな、食事は中々の物だった」


 皆満足そうな表情をしている。皆顔色も良い。満腹になったからか、急に眠気が襲ってきた。疲れが回ってきたかもしれない。


「じゃあ、俺はそろそろ部屋に行く、お前らもゆっくり休むと良い」


「そうですね、俺も眠気が…… 明日はこの町を見て回りながら、モールガまでの計画を建てましょう」


「そうね、長い旅でクタクタだわ。じゃあ明日ヒロ、フェル、おやすみなさい」


 俺は部屋に入り、体を綺麗にした後、すぐさま就寝をする。


「そうだ、しばらくシルクとリンクしてないな、今日呼びかけてみるか」


 俺は眼をつむりシルクにつながるよう意識を集中させる、頭の中でノイズが走るような感覚、思い出すのはシルクとの過去、数回しか話していないが、鮮明に思い出せる。ノイズが消える、やがて意識が遠くなる。遠くで、誰かの足音が聞こえた気がしたな、俺はそのまま意識を暗闇へと沈める。


____________________


 眼を開けるとそこは何時もの白い空間、周りには色のない景色が続いている。正直殺風景だと何時も思う もっと可愛らしい景色だったらなぁ、ピンクとかは安直か……


「もう少し景色に色が欲しいなぁ」


「殺風景で悪かったわね、久しぶり、ヒロ」


その空間内に一つの光がふわふわとこちらへ寄ってくる。そして、輝きを増すと、シルクの姿が現れる。


 彼女の姿は雪の結晶よりも白く輝いていた。まるでこの空間そのものみたいに。淡い水色がかった白い髪、膝元までありヒラヒラと揺らす純白の衣装。そして背中に生えている、優しく体を包み込んでくれそうな翼もだ。彼女の頬はほんのりと紅く染まっており、それが彼女の可愛らしさを引き立てている。俺が、天使って居るのかな?と問われたら。迷わずシルクを思い浮かべると思う、そんな天使様は前と変わらず俺の所に現れてくれた。


「久しぶり、シルク、結構長い間会ってなかったけど寂しくなかった?」


「それは少し自意識過剰ね。そうね、寂しいとまでは言わないけど、ヒロと話せるのは嬉しいわ。何せこっちは、何も起きないし何もない所だし、退屈すぎてどうかしそうだわ」


フゥーとため息を吐くシルク。


「そうなのか?こっちは疲れたよ、長旅というのは想像していたものとは全然違っていたね」


「ねぇ、ヒロ。その話を聞かせてくれないかしら?私は貴方のお話を楽しみにしていたのだから」


「良いよ。シルクが望むなら、俺もシルクとお話ししたいからリンクしたんだ」


 ペタリと座りこむ、その横にシルクも座る、俺は胡坐をかいて、シルクは体育座りで俺の顔をじっと見つめる。俺は今までの事を思い出しながら話し出す。


 そこからは俺にとっては至福とも言える時間だった、ゴーレム退治の事、フェルの黒獣化と変化して、元に戻るまでザイーラで過ごしていた事、ザイーラでの思い出、ラカに着くまでの辛かった事など色々だ。


「そうえいば、シルクから貰ったこの指輪を売ってくれって人が居てさ、なんかすごい価値があるらしいんだって」


小指についている邂逅の指輪、魔力を込めるとかすかに光り出す。


「その指輪?あぁ、確かにそれはかなりの値打ち物よ。その指輪についてる宝石は売ればこの世界の価格が一気に変動する宝石だからね」


 そんな凄い物を俺とユイにくれたのか……


「それは凄いな…… そんな高価な物、俺達にくれて良かったの?」


「良いのよ、私が持っていても意味がない物。それにアレはただの指輪じゃないからね、ヒロ、決して無くさない事ね、無くしたら私とのリンクも出来なくなるわよ」


「えっ、そうだったの?前に運命の波が同調したとか言っていたから、指輪は関係ないかと思っていたよ」


「正確には、波長が同調して、かつ指輪をつけている事ね、指輪に施してる私の魔法でリンク出来るってわけだから」


「そうなのか?じゃあユイとリンクした事はあるの?」


「あの子はないわ、指輪はつけてるけれど、波長が合わないもの」


 ユイとはリンクしてないのか、ユイが無事かどうか確認出来るかと思ったけど、甘くはなかったね。


「うん、無くさないようにするよ、シルクと会えなくなるのは俺も寂しいからね」


「そうね、じゃあ続きを聞かせて、貴方の旅の続きを」


 話を再開する、シルクと話すと、シルクは興味津々と聞いてくれる、彼女はその深緑よりも綺麗な深碧色の瞳をキラキラとさせて、俺の言葉一つ一つに反応してくれる。話している方も興が乗るものだ。


「黒獣化した後にフェルが犬になったんだけどね、それが可愛くて、しかもモフモフしてるんだ、シルクにも触らせてあげたかったよ」


「犬って貴方の世界に居た。顔が可愛くて、人に従順な小さい獣の事でしょ?こっちの獣は皆凶暴で顔つきも怖いし、人の事を襲ったりするもんね、モフモフって柔らかいの?」


「そう、すっごく柔らかいんだ。毛皮よりも触り心地も良いんだ」


ふとシルクの背中に生えてる翼を見てふと思う、あれも柔らかそうだ、どんな触り心地なんだろう?


「シルク、シルクのその翼も柔らかそうだよね、触っても良いかな?」


「えっ?」


 衝動に駆られた俺はシルクの背中に手を伸ばし、純白の翼を手に掴んだ。


「キャッ……」


 思いがけない悲鳴をあげて、身をひるがえすシルク、見ると深碧色の瞳から、じわりと涙を浮かべていた。


「い いきなり何をするのよ……」


「ごめん、ちょっとシルクの翼を触りたいと思ったんだ、凄く柔らかそうな形だったから」


「さ、触りたいなら一言欲しかったわ、そうしたら心の準備も出来るのに、いきなり触るなんて、マナーがなってないわね…… びっくりしたわ」


「ごめんごめん、じゃあ改めて、触っても良い?」


「そこまで触りたい?そういえば貴方って変態だったわね…… ちょっとだけよ、ハイ」


 そういって背中を向けるシルク、長い髪の間から見える首筋が大変美しかった。体は小さいが、目の前ある翼は体を包みそうなほど大きかった。


「じゃあ、触ります」


 一礼をして、その両翼に手を伸ばす。ファサっという音と共に両手がシルクの両翼に埋もれた。柔らかい、まるで羊の毛に埋もれてるような、いやそれよりも柔らかい感触が掌いっぱいに広がっていた。


「ンッ……」


 シルクが体を一瞬ビクンッと揺らしがすぐに治まったらしい、何も言わずに触らしてくれる。


 もしかして……


 優しく撫でるように触る。


「アッ…」


 小さな声が漏れる。体がプルプルと小さく震えている。


 今度は指でスッと縦におろす、


「イヤッ……それ……は…っ…ダメッ!」


 今度は体全体をくねらせるシルク、この反応で確信した。シルクは翼を触られるのが駄目らしい。というかこれって感覚繋がってるんだな…… ちょっと楽しくなってきた。


 翼をこねくりまわすように触る。体中をくねらせ、体制を保つのも難しいようだ。時折小さく甘美な声をあげながら、それを聞かれたくないのか、口元を抑え、プルプルと震えている。その様子が俺を刺激し、調子に乗らせる。そうして俺は、翼の外側をついばむように口に咥えた。


「ヤァ……イヤ! そこっ… んぅぅぅ!!」


 体を思いきり震わせ、ペタリと座り込むシルク。顔が紅潮しており、ハァハァと荒い息をたてている、目線は下を向いていて深碧色の瞳には涙が浮かんでいる。汗も掻いたのか白い髪が額にペタリと張り付いている姿は、とても刺激的な姿だった。


 しばらくすると、シルクが落ち着いたのか、ゆっくりと立ち上がる。


 俺はシルクに正座させられていた。シルクの顔は熟れたりんごよりも真っ赤に染まっていた。


「バカバカバカバカヒロのバカ!!! ちょっとって言ったでしょ! なんてことしてるのよ!この変態!」


「ごめん、つい楽しくなって」


「ついじゃないでしょ!触るならまだしも口に咥えるってどういうこと!?お陰で変な気分になっちゃったじゃない」


「変な気分って?」


「変な気分って、こう……って私に何言わせるようとするの!! とにかく反省しなさい! まったく、ちょっと調子に乗らせるとこうなんだからもう……」


「十分反省しております、シルクの翼は羽毛布団よりも柔らかく、触っていて大変心地良かったです」


「余り反省してなさそうな顔ね、まぁ良いわ。次からは咥えるなんて事はしないでね……分かった?」


「ハイ、分かりました。」


 咥える以外なら良いんだな。さて次はどんな風にいじろうか。


 そんなことを思っていると、景色が急激に黒に染まった。そして、シルクの姿も確認できなくなった。


「えっ?どうなってるんだ?リンクが切れるにしても不自然じゃないか?」


 意識が遠ざかる。今回のは何処か不自然だ。何時もはシルクが光の粒子となって消えた後に戻されるのに。


 強烈な違和感を抱きつつ、俺は再び現実へと戻っていくのであった。












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