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リンカネ☆最強魔道士ヒロの異世界冒険  作者: レヴァナント
少年期 ブランド大陸編
19/43

帰り道 仲間

ザイーラに戻る道中、俺達は再びシトラスと話をしていた。


「改めて自己紹介するよ、俺はヒロ・トリスターナ こっちはミステル族のフェル・ファルス。よろしくね。」


小さく頷くフェル。


「ミステル族?聞いた事のない種族ね。まぁ良いわ。私はシトラス・フリルド、さっきは助けてくれてありがとう。私一人でも余裕だったけど、貴方達のおかげで楽になったわ、感謝するわ。」


ペコリとお辞儀をするシトラス。茶色い髪がふわりと上がる。


「所でシトラスはなんであの依頼を受けたの?」


「腕試しに丁度良かったからよ。私はなるべく強い魔物と戦いたいの。」


「なんで強い魔物と戦いたいの?」


「それは決まってるじゃない!」


突然スクっと立ち上がり。声高らかに宣言する。


「このシトラス様が。世界で一番強いと証明する為よ!!」


ポカーンと空いた口が止まらない。フェルはというと少し含み笑を浮かべている。


「それはでかい夢だな。俺も昔は同じ夢を持っていたからな。良いぞ気に入った。」


フェルも同じ夢を持っていたらしい、テンションが上がってるのが分かる。


「なんで世界一を目指してるんだ?」


「そんなの、冒険者なら当たり前の事じゃない。それに、私はお父さんから言われたの、お前は剣の才能があるって。お父さんは立派な剣士だったわ、そんなお父さんの夢が世界一の剣士だったのよ。残念ながら膝に弓を喰らってお父さんはもう戦えないわ。だから私が代わりにお父さんの夢を継いで、世界一の剣士になるのよ!」


シトラスのお父さんも剣士だったらしい。その夢を次いでやろうとの事、親思いなんだな。


「尊敬してるんだな、お父さんの事。」


「そうよ、私にとっては世界で一番の父親よ!」


ニカリとはにかむシトラス。その笑顔は大変可愛らしく、少しドキっとする笑顔だった。


「何よ照れちゃって。」


「いや…笑顔が可愛らしかったからつい…」


「そ、そう… あ、ありがとう」


ぷいっと顔をそらすシトラス。ふわっとした髪から覗く耳が赤く染まっているのが分かる。


あっちも照れてるらしい。ちょっと気まずいな。


「そういえばシトラスって年はいくつなんだ?」


「私? 私は12歳よ。ヒロは、私より年下っぽいけどいくつなのよ?」


「俺は10歳になるな、凄いなシトラス。12歳なのにあんなに強いんだな。」


「ヒロだって10歳であの魔法の腕は中々よ。少なくとも私は今までその年であんな魔法使える人なんて見たことないわよ。」


そうなのか、俺は魔道士をサリーとユイぐらいしか知らないからな。サリーは多彩だしユイは俺より才能あるしなぁ


「俺に魔法を教えてくれた人と、もう一人シトラスと同じ年の子がいるんだけど。その人たちの方が俺より凄いからなぁ、余り自分がそう思ったことなんてないかなぁ」


「謙遜する事はないわ、私が誉めてるんだから誇りに思いなさい!」


胸に拳を当ててドンっとするシトラス。この子の自信を少しでも分けてもらいたい。


「ありがとうシトラス。所でシトラスはこれからどうするんだ?」


「私は剣の聖地である、レヴァンテインに行くわ!」


「剣の聖地… 確かラインハルト大陸にあるんでしたね。僕は行った事はありませんけど。フェルは分かりますか?」


「あぁ、そこなら一度行ったことがある。あそこはラインハルト大陸の奥地。狐族が暮らしてるザオウの村から山道を超えた先にあるな。あそこは血気盛んな若者たちが大勢いて、だれもが剣王にならんと毎日修行をしていたな、俺も今はもういないが先代の剣王と戦った事がある、あいつは強かった。俺もかなわなかったほどにな…。今は新しい剣王が統治しているはずだ。」


フェルでも勝てない相手がいるのか、剣王って称号は伊達ではないという事だな。


「そうよ。私はそこに行って。剣王をぶったおすの!そして私が世界一になるわ!」


拳を突き合わせるシトラス。その眼はギラギラと燃えて、熱い意志を感じる。


「ラインハルトに行くならモールガに寄るんだろう。そこからでないとラインハルト行きの船には乗れないからな。」


「そうなの?初めて知ったわね。てっきり橋か何か架かってるものだと思ってたわ。」


「それは違うな、ラインハルトとモールガは遠く離れている。船で一月はかかる距離だ。道は昔あったがブランドがそれを無くしたのだ。」


フェルの話によれば、ブランド大陸はかつて魔王ブランドが収めた時代に、魔王自らが各大陸とのつながってた道を分断したらしい。そのせいかブランド大陸は他の大陸と違い、魔族が大勢居て。また文明も独自の発展をしているらしい。


「だから他の大陸に行くにはモールガから出ている船を利用する他にないのだ。

その船も月に何度かしか出ていないし、海の魔物が活発な時期は危険を考慮して他大陸へ行けない時期もあるくらいだ。」


他大陸へ行くには限られた時期をしかも危険な中行くしかないのだとか、他大陸から滅多に人が訪れないのはそのためらしい。


「どっちみちモールガには行く用はあったしね。教えてくれてありがとう。所でヒロ逹はどうするの?

 もし良かったら一緒に着いて行って良いかしら?貴方達かなり強いし良い修行になりそうだわ!」


「俺は構わない、どっちみちモールガには行く用事はあったしな。」


「俺も仲間が増えるのは良い事です。これからよろしくお願いしますね。シトラス。」


「えぇ、私が仲間になったら貴方達の旅は楽勝よ。魔物は全部私が切り刻んであげるわ。」


えっへんと胸をそらすシトラス。小ぶりだが確かなふくらみのある胸が小さく揺れて俺の心も躍った。


「そういえばヒロ逹は何で旅をしてるの?」


「そうですね。話せば長くなりますが。俺は離れ離れになった家族を探す旅をしています。」


「家族?なんで離れ離れなの?」


俺はシトラスにこれまでの経緯を離した。

転移事件に巻き込まれたこと。 フェルに助けて貰った事。シルクという天使のお告げを聞いたこと。家族がルーヘヴンとラインハルトそれぞれに転移させられた事、シトラスに出会ったのもシルクのおかげだったな。もしかしたらシルクには見えていたのかも知れない。あそこで助けなければシトラスは生きてはいなかっただろうから… 俺はシルクの信用をさらに深めていた。


「転移されて、グランスバニアってほぼ世界の反対側じゃない…大変ね。それに、天使のお告げねぇ、確かに胡散臭いけど。私は感謝しなければいけないわね。曲がりなりにも助けてもらったって事だしね。」


「そうだね。次に会ったときに言っといてあげるよ。」


といっても、シルクとリンク出来るのが何時になるかは分からない。波長が合えばとは言っていたが。

こっちから呼び出すことは出来るのかな? 今晩寝る時にでも考えてみよう。


そうこう話している内に、ザイーラの街並みが見えてきた。 


俺達は即ギルドに駆け込み。今回の依頼を達成した事を伝えた。


「エルさん、無事デルビニクパンダの討伐を終えてきました。」


どさっとデルビニクパンダのリーダーの首を提示する。


「まさか本当にあの凶暴な群れをやっつけちまうとは… 恐れ入ったよ。ありがとうね。っで、さっそくだが依頼の報酬だ。まず討伐報酬として石金貨30枚。そしてこの大量のパンダ共の素材は今から計算するがざっと見積もって石金貨200枚はくだらないだろう。何しろこれだけの数は前代未聞だからね。アル!さっさと準備しておくれ~」


奥の方からアルと共に屈強な魔族が何人かデルビニクパンダの残骸を運んでいく。


それにしても石金貨230枚か。フェル曰く、それだけあればこの大陸では金持ちらしい。余りの額に舞い踊っていたが、この大陸での話らしい。 


グランスバニアで換金すると1金貨=10石金貨くらいだとか。 そうなるとこれだと金貨23枚か、それでもなかなかの大金だ。


「あれだけの数を退治してくれたんだ。それくらいは支払うさ。それより…シトラスと話をしても良いかな?」


エルがシトラスを呼んでいる。そういえばこの人がシトラスを助けてくれと頼んでいたな。


エルとシトラスは受付の奥の方に入っていく。少しだが話声も聞こえてきた。


「シトラス。あんた大丈夫だったかい? ケガはしてないかい?ちょっと服が破れてるじゃないか、あぁ体は無事なようだね、ちょっと貸してすぐ治してあげるから。」


「ちょっと、大丈夫だから、そんな心配しなくてもちゃんと無事に戻って来たわよ。確かにちょっと危なかったけど。うん、助けてくれたから。大丈夫、今度からはちゃんと考えるから、うん」


んん? エルさん、なんだかシトラスの事凄く心配してるみたいだぞ。シトラスもなんか素直だし。

あの二人ってどういう関係なんだろうか…


しばらく話をした後。シトラスが戻ってきた。 その顔はなんだか少し安堵に満ちているようだった。


「お帰りシトラス。エルさんと何を話してたんだい?」


「大した事じゃないわ。ただエルって人。私がこの町に来てから何かと心配してくるのよね。前に何処かで会った訳でもないのに。ホントなんなのかしらね。」


そういいつつ不満があるわけではないようだ。どちらかというと少し照れくさいって感じの顔をしている。


「えっ?知り合いじゃないんだ?」


どう見ても付き合いのある関係にしか見えなかったぞ。


「違うわよ。 私がここに来たのは大体半月も前よ。その時にギルドに寄ったっけ。驚いた表情をしてたわ。その時からああいう風に私に対してあれこれ話しかけてくるのよ。最初はうるさかったけどもう慣れたわ。悪い人でもないしね」


エルさんは確かに良い人だけど。それにしても初対面であれこれ言うって… う~ん謎だ。


後でこっそり聞いてみるか。


「とりあえず今日はもう休みたいわ。 一日中動いてクタクタよ。」


「そうですね。じゃあミーティングは明日にして今日はもう宿屋に戻りますか。そういえばシトラスって何処に泊まってるんです?俺達は茨の揺り籠に泊まってますが。」


「私は茨の目覚めに泊まってるわ。」


茨の目覚めは、丁度ギルドの反対側の所か、俺達の所とは少し遠いな。


「分かりました。 では明日はギルド前で待ち合わせましょう。俺も今日はもうクタクタですよ。」


「分かったわ。じゃあまた明日ね、ヒロ。フェル。」


「あぁ、夜道に気を付けるんだぞ」


「誰に物言ってんのよ。大丈夫よ。じゃあお休み。」


「ハイ、お休みなさい。」


こうして俺達は別れた、宿屋に着いた俺達は暖かい夕食を担ぎこみ。水浴びをした後、部屋へと戻りすぐさまベッドに身をゆだねる。


「今日も疲れたなぁ。でも色んな事があった…」


初めての依頼をこなして、パンダ共と戦争して、シトラスが仲間になって。


「シトラスか、ちょっと強引だけど可愛くて良い子だよなぁ。」


これからどんな旅になるのかと期待を胸に膨らませる。


「そうだ、寝る前にシルクとリンク出来るか試してみよっと。」


意識的にリンク出来るか… とりあえず、シルクの事を思えば良いのかな。」


「シルク…シルク…シルク…白髪、天使。可愛い。ロリ体型。ちっぱい。シルクの出会ったときの服装って絶対えっちだよな、あんな素肌が丸見えな服で居たら目のやり場に困るっての。俺の方が背が高いから必然的に胸の辺りがちらって見えちゃうしなぁ。あの小さくも少しぷっくりとしてる双丘がちらちらって、うへへへ。それにすげえ良い匂いするんだよなぁ。女の子特融の匂いというか、ユイは甘い匂いだしシトラスは…今日は血なまぐささしかなかったな…またの機会にしよう。シルクは風の匂いかな、俺の思い出の公園に吹く風とそっくりな匂いがする。なんだか懐かしいって感じがするんだよなぁ…ってこんな事考えて会えるのかな?」


邪念がたくさん混ざり込む。変な事を考えてる内に眠気が一気に襲ってきたようだ。俺の意識は深く暗闇へと落ちて行った。


_________________


「この変態…」


シルクが軽蔑する表情でこちらを見ている。どうやらリンクする事が出来たらしい。


「変態とは失礼な。ちゃんとシルクの事を思いなが安らかな眠りについたよ。。」


「私と繋がる条件は確かに満たしてるわ。リンクしてる者同士のどちらかが強い思いで念じればリンクできる、だ け ど!」


シルクの顔がトマトのように赤く染まっていく。凄いな、瞬間湯沸かし器みたいだ。


「貴方がどういう目で私を見てたのか理解したわ!! そんなくだらない事ばっかり考えてたのね。本当心配して損したわ!」


ムキーっと怒るシルク、そんな状態であっても薄着の隙間からはちらちらと見えつつあるので目線が釘付けになる。


「ちょっと何鼻の下伸ばして… ってキャッ」


目線に気付き慌てて胸を抑えるシルク。涙目になりながら睨みつけている、意外とシルクはこっちの方は免疫がないようだ。


「このロリコン!変態!大変態!私に欲情するなんて500年は早いわよ!」


「わー分かった分かった。謝るからさ、ごめんよ。」


誠心誠意を込めて土下座をする。 シルクはフンッとプンスカしていたが一応落ち着いてはくれたようだ。


「改めて。シルクの助言のおかげでシトラスを救えた。ありがとう。シルクの言うとおりにしたから、シトラスを助けることが出来たよ。」


「あぁ、あの子ね、別に私はただ行けと行っただけだわ。 助けたのはヒロの意思でしょ。」


「そうだけど。シルクから教えてもらわなかったら。俺は行く気にもならなかった。そうしたらシトラスはもういなかったかも知れない。だからこれは本当の心からのお礼だ。ありがとう」


「そう…それなら良かったわ。でも貴方も変よね。普通そこまで信じたりするかしら?騙す可能性だってないとも限らないじゃない。」


「その可能性は考えたけど。俺には君が嘘をついてるようには見えなかったからね。何故と言われると説明できないけど。そう感じたんだ。」


「貴方って…やっぱり変ね。」


「・・・・・ お母様もそのくらい信じてくれれば良いのに…」


「ん?何か言った?」


「いいえ、何でもないわ。そろそろリンクが切れる時間ね…」


シルクの体が徐々に消えていく。そろそろ起きる時間か。


「じゃあまたねヒロ、今度は、あんなえっちな事考えてないで、普通に呼び出しなさい。分かったわね?」


「分かったよ。今度は普通に呼び出す。その時は、また僕の世界の話でもしてあげるよ。」


「楽しみにしてるわ。それじゃまたね…」


シルクが光の渦となって空へと消えて行った。 その瞬間。俺の意識もまた深い暗闇の底へと落ちて行く。


「…私も、自由になりたいかな…」


最後にうっすらとそんな言葉が聞こえた気がした。




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