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エレナとフラン

オラクルに行ってから10ヶ月余り経過した。


あの後もちょくちょくオラクルには寄っている。


だがシルクに会ったのはあの日の一度きりだ。


あの奇妙な占いの館は見当たらない。


あの時が奇跡的に運が良かったのだろう。


聞きたいことは山ほどあるが見つからないのなら仕方ない。


オラクルから山道を通り帰路につく


山で魔物を見る事がめっきり無くなった。


うわさでは討伐隊が全滅させたとか。


山の魔素の量が無くなったため、魔物が住めなくなったとかいろいろだ。


まぁ魔物が出ないのは良い、無駄に戦闘をしないのに越したことはないからな。


家に着くとそこにはアイリーンが居た。


そして、横にあるベッドには、可愛い赤ん坊が2人仲良く眠っている。


事が分かったのが、最初にオラクルに旅立った後の事である。


お腹を擦りながらオルバに何かを告げた後、オルバが年甲斐もなくはしゃいでた。


理由を聞くとアイリーンが妊娠した事が分かった。


つまり俺の弟か妹が出来るのである。


皆で男の子か女の子かどちらが生まれてくるか想像しあいながら話した。


アイリーンの出産はスムーズに終わった。


大変だったのがオルバがずっとオロオロしながら心配そうにアイリーンの名前を呼んでいた。


むしろオルバの方がまいってた可能性もある。


父親なのに情けないぞ…


生まれてきたのは双子の子、どちらも女の子である。


先に生まれて来た藍色の髪色をしてる子がエレナ。

後に生まれて来た金色の髪色の子がフランと名付けられた。


二人の妹エレナとフランはすくすくと成長していった。


かまってほしいと泣き

おしっこをしたら泣き

うんちをしたら泣く

特に意味もなく泣いたりもする。

夜泣きも頻繁にする。


つきっきりで世話をしていたアイリーンとオルバはすぐノイローゼになった。


師匠だけは

「これくらいが普通ですよ。

 ヒロ様の時はまったく泣きもしなかったのでやりがいがなかったです。」

 とイキイキしている。


ユイも疲れてはいるがお世話は楽しいらしい。

今ユイはエレナを俺がフランをだっこしている。


エレナの方はユイに抱きかかえられてご満悦の顔をしている。


一方フランは何処か不満気な顔をしている。

おいこらお兄ちゃんの何処がいけない…

そんな不満気な顔も可愛らしいからつい許してしまうが…


___


ある日オルバと一緒に魔物退治に出かけた事がある。


何でもはぐれレッドウルフが群れで暴れていて困ってるとの報告を受けたオルバが。俺を一緒に連れて行ってくれた。


オルバが仕事で俺を連れて行くのは初めてだった為ワクワクした。


報告のあった場所に行くとレッドウルフが4頭群れで畑を荒らしていた。


「ヒロ…ちょっとそこで見ていろ」と言うと


腰から剣を抜いて一目散にレッドウルフの群れに切り込んでいく。


即座に散開するレッドウルフ。 オルバは散開に遅れた1頭を確実に首を飛ばす。


他のレッドウルフが襲い掛かる。 それをオルバは瞬く間にはねのける。


オルバの動きは無駄のない洗礼された動きで。かつ力強い。


思わず見惚れてしまった。 元は名高い冒険者であったらしいが。


その名に恥じない見事な戦闘だった。


聞くところによるとオルバは器用な男らしく


剣術の基本のスタイルを三つとも上級まで会得している。


静流:剛剣:無双の三つのスタイルだ。


静流は、相手の動きの流れを読み切り受け流しつつ急所を狙うスタイル。


剛剣は、とにかく破壊力を重視するスタイル。

大型の魔物の戦闘だと剛剣の放った一撃が決めてで勝利した事も珍しくないらしい。


無双は、とにかく手数が多い。威力は剛剣に劣るが一切反撃させない。二刀使いもいるらしい


オルバはそのどれもが強い。実際組手しててもまだ勝つヴィジョンが見えない。


魔法を使い。かなり距離を取ればもしかしたらとは思うが。勝てないだろう。


とにかく動きが早く、一歩の踏込みで一気に間合いを詰めてくる。


俺みたいな半端者は距離を取るしかなく。接近戦であれば勝ち目はない。


だから剣術も並行して学んではいるが。なかなか上達しない。


体力もついてきたし、筋力も上がってる 体はまだ成長期なので無理ないようにはしている


技術面ではどうだろうか…


オルバの剣撃を何度か凌げるようにはなった。だが反撃は取れない。 


いまだに1本も取れないでいるしなぁ…


何時かは1本取れるように試行錯誤を繰り返す。


ある日魔法を組み合わせられるのではないかと思い。剣に魔法を込めてみる。


実験は成功した。


振り下ろした所に爆発をもたらしたり、風圧を纏い切れ味が上がったり。


土魔法で強度を変えたりする事が出来た。


魔法剣の完成だ。


調子に乗って組手中にそれを披露する。


一瞬オルバが驚いた顔をする。 


これでましになったと思い、打ち合うが。結果は何も変わらない。


意表はつける、鍔迫り合いになったらこっちが勝つだろう。


だが肝心のオルバの斬撃を躱せない。


剣の性能が上がろうが技術や体の性能は何も変わっていないのだから。


やはりオルバから1本取るには純粋に強くなるしかないのだろう。


無駄に終わったわけではない。だが今は使うには早すぎるだけだ。

これからも魔法剣は発動しつつ、純粋に剣技と体力をつけよう。


___________________


3年後…


10歳になった… 体もぐんぐん成長中だ。今ではユイよりも背が高い。


剣術も静流の中級までは上達した、道流… 相手の攻撃の流れを読み回避する戦術。


まぁそれでもまだオルバには勝てないでいる。


剣術の腕もあるが経験の差が圧倒的に足りないのであーる


3年の間に魔族語を覚えた。 これはブランド大陸等で使われている言語である。


オラクルで種族毎の言語が載っている本を見つけたのがきっかけだ。


その本は白銀貨1枚という破格の価格であった為買えなかったが。


師匠が魔族語を使えるらしいので教えてもらった。


なぜ使えるのかと聞いてみたところ。


昔ブランド大陸の周辺に住んでいたらしい。その時に覚えたという


魔族語は人族の言葉とニュアンスが近い為。割とすぐに覚えられた。


ブランド大陸に行く事はないだろうが、損はないだろう。


ユイもこの3年で成長した。魔法も俺と同じく上級まで獲得している。


火魔法だけは適正のせいか初級までしか使えないが。 


風と水に関しては俺より凄いかもしれないと師匠が言っていた。 


オルバやアイリーンも、最近は子供たちの世話で忙しそうだ。


エレナとフランも3歳だ。二人とも元気に成長している。


エレナは活発な子だ、良くユイといたずらをしている。この前は何処で拾ってきたか分からないが。


羽虫の死骸をドアの間に挟んでいた。 部屋に戻った俺はそれに見事に引っかかった。


俺は大の虫嫌いなのでこういういたずらはやめてほしい


見ると隅っこの方でクスクスと笑っているエレナがいた。


引っ張り出してお説教をするが… エレナは反省のはの字も見せない態度だった…


まぁこれくらい元気な方が子供らしいか…


フランは相対的に大人しい子でお姉ちゃんっ子らしい。 


良くエレナに引っ付いている。 


最近はそうでも無くなったが、エレナが近くにいないとぐずりだして泣いてしまう事がある。


そういう時、何処にいてもフランがエレナの所にすぐ駆けつける。


まるでエレナがぐずるタイミングがわかるみたいにだ。


双子だけの特別な何かがあるのだろう。


今はそんな二人と真ん中にユイが挟まり一緒にお昼寝している。実に微笑ましい。


この日はオルバとアイリーンは倉庫で何やら探し物をしているし。


師匠は少し出かけてくると言っていた。


なので手持無沙汰なので家でゴロゴロしている。


部屋周りの掃除でもしようかと思ったが。


ユイと師匠が完璧に掃除してくれるので何もする事がない。


最近はエレナとフランもお手伝いとしてやってくれているしね。


「さてと… ちょっと外に出るかぁ」


可愛い妹達とマイエンジェルの寝顔をずっと見てるのも良いが少々暇である。


オルバ達からは今日は特別な日だから夜には戻ってろと言われた。


何の日だっけ…


ユイの誕生日はもうやった。ユイにはオラクルで見かけた羽型のヘアピンを上げた。


じーっとみていたがお小遣いで足りなかったのだろう。 


後日オルバに土下座して買ってもらったのである。ユイが大層喜んでいた。


後両親のペンダントもユイに返した。 


俺がもつよりユイがもってた方が良いと思ったからだ。


今では羽型のヘアピンに首にはペンダント。


指にはシルクから貰った邂逅の指輪と小物が充実してきた。


次は腕輪とかプレゼントしても良いかも知れない。


外に出てやるのは基本の型の素振り。


そこに魔力を通しながら行う。


魔法剣エステア。


魔力を通して様々な効果が出るようにした。


強度を上げたり切れ味を良くしたり。


一振りすれば斬撃に氷の刃を出したり、爆風を起こしたりと色々だ。


便利な魔法ではあるが、長時間の展開は出来ない。


なぜだか分からないがゴッソリ魔力を持ってかれる。


俺の魔力総量もかなり上がってはいるが、エステアを常時発動させるとすぐガタがくる。


なので少しでも発動時間を長引かせるために。なるべく発動させたままにしている。


慣れさせるためだ。 


筋トレしたり走り込みしたり素振りしたり魔法の練習してたりであっという間に時間は過ぎる。


日が落ちかけてきたので家に戻る。


家に戻ると。何やら中が騒がしい。


ただいまと声をかけ家に入ると、バタバタとエレナとフランが出迎えてくれた。


「「お兄ちゃんおかえり~ ねぇねぇ早く来て来て~」」


二人の声が同時に響く。


藍色の髪と金色の髪がパタパタと揺れる、可愛らしい。


「ただいまエレナ。フラン。二人とも慌ててどうしたんだい?」


「「いいから早く~」」


二人の妹に連れられて。俺は大広間に着く。


部屋に入ると皆揃っている。そして一斉に…


「ヒロ…誕生日おめでとう!」


あぁ…そうか 今日は俺の10歳の誕生日だったか…


すっかり忘れていた、そういやこの時期だった。


「あぁ、そうでした。今日は俺の誕生日でしたね…」


「何忘れてるんだよ。10歳の誕生日だぞ、もっと喜べ。」


オルバに窘められる。


「そうだよヒロちゃん…ユイの時はあんなにはりきってたのに

 自分のは忘れてるのはどうかと思うな。」


ユイがメッってする。


「ヒロ様は自分の事にはルーズですからね。」

「そうなの、いっつもユイちゃんの尻ばっか追いかけててね。

 育て方間違えたかしら~」


師匠とアイリーンにも窘められる。 俺の居場所はいずこへ…


「さてヒロ様。ヒロ様に渡したいものがあります。」


そういうと師匠達は奥から何かを取り出した。


一つは黄緑色のローブだ。高級そうな素材で編みこまれている。


触ると魔力の流れを感じるから、マジックアイテムか何かか?


「これはシンドラと言います。狐族に伝わる技法で編みこんだローブです。

 生地にはクルセイダースパイダーの糸が編みこまれており、風の加護を持っています。

 身に着けてみてください。」


そういって身に着ける。サイズもぴったりだ


それに軽い、服を着てるとは思えない軽さだ。これが風の加護か?


「これね、ユイも一緒に手伝ったんだ。ヒロちゃん気に入ってくれた?」


「そうなのかい?うん、大変気に入ったよ。

 ありがとう 師匠、ユイ」


二人は笑みを浮かべる、大変ご満悦のようだ。


「そして俺達からはこれだ!」


持ちだしてきたのは一筋の剣であった。


その剣を鞘から抜きさす。 刀身は細く曲線を描いている。


蒼色に光りどちらかというと短剣に部類されるものだ。


「父様…これは?」


「これは俺が冒険者時代に手に入れた、エイフリードって短剣でな。

 軽くて持ちやすく。それでいて頑丈だ。

 生半可な攻撃じゃ絶対折れない。お前にぴったりだなと思ってよ。


「良いんですか?こんな凄いの頂いて…」


「いいんだよ。剣ってのは使ってやらねえと錆びついちまう。

 俺の愛刀は既にあるし、宝の持ち腐れって奴だ。

 ただし手入れはちゃんとしろよ、錆びついて使えないなんて馬鹿げた事しないようにな。」


凄くうれしい。


蒼の輝きが眩しい。


試しにヒュンヒュンと振り回す。


重さを感じない、そして振りやすく思った通り動いてくれる。

なるほど俺にピッタリな剣だな


「凄いですねこれ…父様ありがとうございます。」


こうして10歳の誕生日に素敵なプレゼントをもらった。


後に生涯持っていたと言われる二つの思い出を。






エレナ・トリスターナ

双子の姉。活発でいたずらっ子、フランと何時もそばにいる。

フラン・トリスターナ

双子の妹。大人しい子 お姉ちゃん大好き。



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