オラクル
「ヒロ様、もう日が昇りましたよ。あらっ
おはようございます。昨夜はお楽しみでしたね」
「おはようございます師匠。 ナンノコトでしょうね」
早朝支度を終え出かけようとする前に、様子を確認しにきたらしい。
そして部屋に入ると同じベッドで抱き合っている二人。
勘違いされてもおかしくはない。
「信じてはもらえないかもしれませんが、特に何もしてませんよ。」
「あら、そうでしたの。まぁ…ヒロ様にそんな度胸あるわけないですね。」
昨日の事は全部聞いてましたし、分かってましたけどね。」
盗み聞きとは卑怯なり! そりゃユイが来たんだから当然だろうけど。
「それでは、今日は予定通り私は買い出しを行います。
日が沈むまでには戻ると思うので。その頃には集まっててくださいね。」
「分かりました。 行ってらっしゃい師匠。」
師匠を見送った後。まだ夢の中にいるであろうユイを起こす。
「ユイ、もう師匠は出かけたよ、ユイもそろそろ起きろ~
早く起きないと町を回れないぞ」
「ふわぁ~ おはようヒロちゃん… お休み」
「寝るんじゃあない!!」
二度寝しようとするユイを叩きお越し準備をする。
支度を終えた俺達は宿屋を出て、商店が並ぶ方へ向かう。
「ユイは何を見たい?」
「う~んとね。 まず服屋でしょ。
そして来るときに見つけたキラキラしたのがいっぱいあるお店!
でっかい銅像も見たいし。 ギルドも見てみたい!!」
「いっぱいあるなぁ… とりあえず近い所から手当たり次第見てこうか。」
「うん♪」
まず服屋さんに入る。
「ようこそパントルへ あら子供さんね。って…ねぇねぇそこの君。」
「えっユイ?」
「ユイちゃんって言うのね。君凄く可愛いね ちょっとこれ試着してみる?」
取り出してきたのはキラキラとしたドレスだった。
「わぁ~ 凄くキレイ! ユイ着てみるね~」
試着室に入り着替えだすユイ 数分後にカーテンが開く
「ジャジャーン どう?ヒロちゃん ユイ可愛い?」
そこには綺麗に着飾ったユイがいた。
小さく結ってもらった髪がぴょこぴょこ跳ねて可愛らしい
「おぉ…うん、最高に可愛いよ」
思わず祈る。それ程までに可愛かった。
「うんうんやっぱり逸材あるねぇ~
じゃあこれとこれ、後これも試着していこっか!」
あれよあれよと次々着替えさせられていく
まるで着せ替え人形のようだ。
「うわー いっぱい着せてもらっちゃった。
う~ん やっぱり最初に来たこのドレスが一番かわいいなぁ」
最初に来たドレスを気に入ったらしい。
お値段はっと… 銀貨5枚か。
ちょっと高いけど買えない額ではない。
「あらお嬢ちゃんそれ気に入ったの?
うーんお嬢ちゃん可愛いし色々試させてくれたから、4枚で良いわ」
1枚オマケしてくれた。やったぜ
「ではお願いします。ユイ、ここで着ていく?」
「うん♪」
銀貨4枚を渡し、ユイは先程のドレスを着替えて出てくる。
そのまま服屋を出て街中を観光する。
冒険者ギルドは凄かった。
中に入ると多種多様の種族がいた。
足が6本生えてる亜人、顔が馬で体が人の奴。
翼の生えた者、小人族等もいた。
ギルドを出て中央の銅像を見て回る。
初代国王であるリュケルム・エルド・グランスバニア。
その銅像の柵の回りには、歴代の王が描かれている。
ずらっと並んだ似顔絵の最後、現国王が描かれている。
現国王、ティムエル。エルド・グランスバニア。
王についてから20年、内政と防衛に長けた王であり。
この大陸が平和かつ攻められないのは彼のおかげらしい。
その後もグルっと町並を見て回る。
武器を扱ってる店では目を魅かれる双剣が置いてあったのだが。
頑固そうな店主が不審な眼をしてみてきたのでそそくさと退散した。
店から出るとき。
小さいフードを被った人と入れ違いになった。
後ろで何やら言い争いをしていたが。俺には関係のない事だろう。
そんなこんなで、そろそろ日も暮れそうな頃。
商店街を見て回ってた途中、怪しげな三角テントが張られた所に立ち寄る
ある人物と出会った。
「いらっしゃい。 あらっ? 貴方久しぶりね。」
何を言ってるんだこいつはという顔をする。
「あら? 私の事分からないの? 案外薄情なのね」
女性の声。
体は白のローブで隠されている。
綺麗な手だな。そんな事を思う。
白銀の髪が見えるがそれ以外は分からない
顔の部分は怪しげな文様をした仮面でおおわれている。これじゃ姿が分からない。
「そんな恰好で話しかけられても。貴方が誰なのか全然分からないんですが…」
「あらごめんなさい。余り人前で姿を晒したくないのよ。
今回もちょっと用事があるからこの町に来ただけだし。
はぁ~、やっぱり興味本位で弄るんじゃなかったかしら…」
そういって仮面を外す。その時俺は言ってる意味を理解した。
「君は…公園に居た…」
「やっと理解した?お久しぶり天馬君、天使様よ。」
そこには生前、俺が死ぬ前、大好きな公園で出会った白銀の少女であった。
今は姿がはっきり見える。長い白銀の髪に少したれ目。瞳は濃いエメラルドグリーンをしてる。
顔立ちは幼い。前に見変わってるようには見えない。
「どうして君が…こっちの世界に!?まさか君も転生して…いやありえるのか?
どうなってる?なんでここに、君は一体?」
「ヒロちゃん落ち着いて…」
スーハー 一旦深呼吸をし落ち着かせる。
「大丈夫?」
「あぁ 大丈夫さ、少し混乱してただけだ。」
「貴女は? あらまぁ可愛い子ね。天魔君、貴方こっちでは順調じゃないの?」
「ユイはユイシスだよ、初めまして、ユイシス・トリスターナです。
所でさっきからテンマって誰の事?
ヒロちゃんはヒロちゃんだよ?」
「すまない。こっちではヒロ・トリスターナって名前なんだ。
天馬は…もう使ってない。」
「そうなの…ふふっ、分かったわ。私もヒロって呼ぶ事にするわ。
私の名前はシルク・アインベルク
シルクって呼んで良いわ。」
「分かった、シルク。
それでどうしてここにいるんだ?」
「簡単よ。私が元々こっちの世界の住人って言うだけ。
あっちの世界にいたのは、まぁ分かりやすく言うなら私の固有魔法の力ね。
理由は今は言えないわ」
「それで…その胡散臭い魔法使い様ここで何をしてるんだ?」
「色を見てるのよ。」
「色とはなんだ?」
「色は色よ、運命の色」
「前も色がどうとか言ってたな、どういう意味だ?」
「言った所で分からないでしょ。」
確かに…運命の色とか言われても、俺に分かるわけがない。
「後は占いも少しやってるわ… せっかくだし貴方たちの事見てあげるね。」
そういうとシルクは立ち上がり俺達の顔を覗き込む。
エメラルドグリーンの瞳に凝視される
正直落ち着かない。
「あら? うふふ 貴方達。赤い夜の日は気を付けた方が良いわよ。」
「赤い夜の日?」
「そう…空が真っ赤に染まるの。
その時に運命は狂うわ、どうなるかは私も分からない。
だから気をつけなさい。」
「いきなりそんなこと言われて信用するとでも…」
「まぁ信用してくれなくても良いわ。それと、これを貴方達に上げるわ」
取り出したのは二つの指輪だった。
片方は緑の宝石。
片方は黄色の宝石。
それぞれを俺とユイに手渡してくれた。
「これは?」
「それは邂逅の指輪。その石に魔力を込めるの。
すると指輪同士が輝き惹かれあう特性を持ってるわ。
近くにいなければ意味ないけどね… 大事に持っておきなさい。」
「良いのか?金ならないぞ」
「お金は良いのよ 私お金に困る生活はしてないもの。
使い道がなかったから渡したのよ。」
ウフフと笑うシルク… 何を考えてるのか分からない子だ。
「用も済んだし、もう店じまいにするわ。またどこかで会いましょう。ヒロ君…」
そういうとまばゆい光を発するシルク。目を開けた時、シルクの姿はなかった
「今の人…なんだったんだろうね。」
「さぁな… どうにも要領を掴めない子だったが…」
「それにしてもこの宝石超綺麗だねぇ さっそくはめてみるよ~」
「う~んはまんない… あっここならぴったりかも」
左手の小指にスポっとはまる。
俺も左手の小指にピッタリとはまった。
「魔力を込めて見よっか。 むむむ~ん」
指輪に魔力を注ぐ。すると指輪同士が共鳴し、輝きを放つ。
すると指輪が磁石のように惹かれあい お互いの小指がくっつく形となった。
「アハハハハ、何これ面白~い 指がくっついちゃったよ」
「惹かれあうって言葉通りの意味かよ…
変なもん寄こしてきたなあの子…」
からかわれてたのだろうか?
不思議な子ではある…
また会う事はあるだろうか?
「さてと…そろそろ日も暮れそうだね… じゃサリーの元へ行こっか♪」
「はぁ~い」
観光も終わり。 今日も1泊した後家へ戻る。
サリーにシルクの事を伝えると妙な顔つきをしていた。
「シルクって名前知ってる?」
「いえ… ですがどこかで聞いたような、すいません分かりませんね」
やっぱり知らないか。まぁ師匠でも知らない事はあるか。
「それよりも… 赤い夜の日が気になりますね。
その時に何が起きるのか…」
注意しておく必要はあるが。
何が起きるのだろうか…
その後夕食を取り。一晩過ごした後、町を離れる事にした。
帰り道の山道は魔物が出る事はなく。夕刻までには帰る事が出来た。
シルク登場です。 彼女が次出てくるのは何時になるのやら…




