過保護な愛情
ここはオラクル。 グランスバニア大陸で一番賑やかな町である。
名産のバニア酒に貿易も盛んであり。
世界中からありとあらゆる人が押し寄せている。
特徴と言えば二つの巨大な建造物であろう。
町の中央には、この国の初代の王。
リュケルム・エルド・グランスバニアの銅像が立っている。
そして南方には巨大な冒険者ギルドが。
この大陸には魔物がひしめく迷宮がある。
英雄オルランドゥの遺産が存在すると言われている、オルランドゥの迷宮
その迷宮を攻略し、次なる英雄となる夢を持った冒険者達達で賑わっている。
俺たちはそのギルドから少し離れた所にある宿屋フォーチュンに来ていた。
宿屋について、腹ペコだった俺たちは、フォーチュンの名物 レッドウルフの丸焼き。山に生息するグランドマッシュのキノコに、海に生息するオクトーと言われる巨大魚を頂いていた。
この世界の基本的な食事は。
麦を使ったパンと野生の魔物を使った肉料理に。
海の近い所では魚介系の魔物を使った魚料理。
農作による作物の物等がある。
このオラクルは山々を開拓して出来た土地なのだが。
貿易や冒険者等が集まり。それぞれの出身地の名産が集まるため。
世界の珍味が味わえる町なのである。
「ヒロちゃんこのお肉おいしいね」
美味しそうに頬張るのはユイ
道中は塞ぎ込んでいたが。 町に入る頃には落ち着いたらしい。
何時もの調子に戻り。 あの銅像でっか~いとはしゃいでたり。
道行くオシャレなアクセサリーを売ってる店に興味深々とした表情で見ていたりした。
今はフォーチュンのご飯に興味深々である。
しかしこのレッドウルフの丸焼きは美味しい。 レッサーウルフを焼いた物は食ったことあるが。
なんというか素材の味というか肉そのままっという感じで味気がなかった。
だがこのレッドウルフは 一口頬張っただけで湧き出る肉汁と
口いっぱいに広がる。絶妙な味わい。
付け合せに用意された。特性のソースで辛味を追加して二度おいしい。
キノコや魚も絶品で大変満足だった。
美味しい食事をした後、道行く詩人の歌を聞いて楽しんだ。
「それではヒロ様。明日は私は買い出しを行ってきます。
ヒロ様とユイはこの町を観光していてください。」
そういってこの町の地図と少量のお金をもらう。
中身はバニア銀貨が10枚銅貨10枚が入っていた。
この大陸の貨幣はバニアという名前が使われている。
白銀 金 銀 銅と価値が下がり、白銀は金貨50枚 金貨は銀貨50枚 銀貨は銅貨50枚の価値がある
家には金貨がどっさりと置いてる金庫に、魔石が数個ある。
師匠曰く人族の20年分は生活していけるぐらいは蓄えがあるらしい。凄いなオルバ。
「ありがとうございます」
「日が暮れる前に宿屋に待ち合わせでお願いします。
ユイ… ちゃんとヒロ様に着いていくのですよ。」
「大丈夫ヒロちゃんの事は任せて。
ヒロちゃんが迷子にならないように手をつないであげるから!」
照れくさいので遠慮してもらいたい… あっ。でもユイのやわらかい手を握れるならいいかな・・・
そういいつつそれぞれの部屋に戻っていく。
ユイと師匠が同じ部屋で 俺が一つ隣の部屋に一人である。
部屋に戻り… 剣を外し。ベッドに倒れこむ。
ふかふかの感触が俺を離さない。
「ふゃあ~ 今日は本当に疲れた…」
山道を1日中歩き。 魔物との戦闘も行った。
「そういや斬られた所はどうなってんだろう…」
服を脱ぎ 鏡の前に立ち後ろ向きになる。 うっすらとだがななめに傷痕が残っている。
「若干痕が残るか… 回復魔法も万能じゃないんだな。」
再度キュアをかけてみるが変化はなし。
「今日は迂闊だったな… まさかオークが出てくるとは。」
最初に見たときはオークは師匠が全員ひきつけてると思ったが…
最初から隠れていたのだろうか。
「もっと早く気付けば 斬られる事もなかったなぁ…」
ユイを泣かせることも…
そう思っていると。 コンコンと小さな音が 扉の向こうから聞こえてきた。
「ヒロちゃん… まだ起きている? 入っても良いかな…」
小さくユイの声が聞こえる。 俺は扉を開けて迎え入れる。
「どうしたんだいユイ?」
「ちょっとお話したくてね… アレその傷は?」
ユイが背中の傷痕を指摘する。
「あぁ これは今日斬られたときの後が残ってるんだよ。
痛みはないんだけど傷口まで治らなかったみたいなんだよ。
魔法ってのも万能じゃないんだな。」
「そう… なんだね」
「まったく… 所で師匠はどうしてるの?」
「サリーはもう寝たよ。」
師匠は早寝早起きである。 確かに今頃は既に寝ていたなぁ。
「そうか… 何か話があるんだろ. 座りな」
ベッドから起き上がり椅子を用意しようとする… その時
「ッ!!」
ガバッ ストン…
ユイに押し倒された。
えっ? 何これ? なんで俺押し倒されてんの???
まさか夜這い!? 師匠が寝た直後に!?
ユ ユイ~ ちょっと僕らの年齢じゃ気が早すぎるんじゃないかなって…
いや確かに ユイは大好きだし毎日ユイの事ちらちら見てたし。
最近は少しずつ成長している胸が揺れる度に拝んでいたりしたよ。
ユイが水浴びしてる時に何回か覗き見しようとして師匠にボコボコにされたり。
早朝に訓練してるついでにユイの衣服の匂いを嗅いでたりとかしましたけど!!
いやいやいや今の状況だ。ユイが俺の上に跨り何も言ってこない。
どうしたのかな~? 正直何か怖いから逃げ出したいけど
ガッチリ抑えられてるしな~ 俺喰われるのかなぁ 性的な意味で…
まだ僕7歳なんだけど… そういや生前も7歳の時には既にマセガキだったな…
最近の子は早いとも言うし マテマテここは異世界。 7歳からでも有りなのかも知れない!
ドドドドドドどうするか。ゴールインするか 初めてのGo To Heavenしちゃうか!?
って思ってると。俺の頬に何か冷たいものが当たるのを感じた。
冷たい… それにしょっぱい… これって涙? ユイ 泣いてるのか?
良く見るとユイの瞳から涙が落ちている。
水晶のような蒼い瞳。俺の大好きな瞳。その瞳に涙をともしていた。
どうしてだ? 町についてからはあんなに元気だったのに…
「ユイ?」
ユイは答えない… しばらくの沈黙。
やがてユイが口を開いた
「ごめんね… ヒロちゃん ユイのせいで。
ユイを守るために。 傷痕が…」
「ユイ 心配するなって言ったろう…
傷痕は残るが後悔はしていない。
ユイの為についた傷だ。 誇りにすら思う。
「俺はユイを守らなければいけないからな。」
「ユイはそうしてまで守ってほしくない!!!」
ユイが絶叫する。 その表情は怒りと悲しみが混ざり。ぐちゃぐちゃになっている。
「ユイを守らなければいけない!?
パパとママに言われたから?
ユイがヒロちゃんより弱いから!?
ユイより子供なのに子供扱いしないで!」
「ユイ…」
「ユイだってね… ユイだってヒロちゃんを守りたいの…
ユイは見てたんだよ。
ヒロちゃんがオーガに殺されそうになった時の あの絶望した顔。
自分だって足が震えていたのに… 無理して魔物と戦ってた事…
ユイに心配かけないように大丈夫だって嘘ついて。
知ってる? ヒロちゃん嘘つく時 絶対ユイと目を合わせないの。
それからいつもカッコつけてるつもりで
オルバの真似してるけど全然きまってなかったり。
肝心な時はヘタれて誤魔化したり。
ユイの水浴び覗こうとしてたり!
早朝訓練してるのかなって窓から見てたら。
誰もいないの確認して ユイの衣服に顔突っ込んで臭い嗅いでたり!!!
全部見てるんだからね!」
えっ… あの行為見てたんですか。 すいませんでした これからは控えます…
「ユイだってヒロちゃんを守りたいの!
だから自分が犠牲になればなんて思わないで!
魔法の訓練だって全部ヒロちゃんの為なんだから!
ユイを悲しませたくないんなら 自分の事をまず大切にして!」
ユイ…
お前はそこまで思ってくれてたのか。
子共扱いしていたのはしょうがない 俺は転生者で前世の記憶持ちだ。
前世の頃からすれば。オルバだってちょっとしか年が離れてない。
子供扱いするのは当然だった…
自分を大切にしないのもそうだ。
俺は自分が好きじゃない。
いや… 好きであろうとしなかった。
前世ではそれこそ周りに流されて自分というものを持ってなかった。
もっとこうすれば。 あそこで努力してればという思いが毎日頭の中をグルグルしていた。
後悔と無力と行き場のない不安感。 それが前世での俺だ。
そんな時死んでこの世界に転生出来た。
この世界では充実していた。 魔法が使える。努力もしてる。
知識だってすらすら覚えれる。 何もかもが新鮮な感覚だ。
だけど無意識的に。俺は自分を二の次にしてきたんだろう。
それがユイを心配させた。 ユイを悲しませてたのは俺だったんじゃないか。
まだやり直せるだろうか。 今がチャンスの時だ。 やり直す事の。
「ユイ お前を子供扱いしてたのは謝る。 確かにそうだったかも知れない。
それと、守りたいのは何もユイの両親に頼まれたからじゃない。
俺が心の底からユイが大切だからだ。 それは本当だ。」
「ユイを守れるなら… 多少の痛みも覚悟の上だったし。
その為に剣術も学んでる。 そう思ってた。
ユイを守れるならって確かに自分を大切にしてなかったかも知れない。」
「ヒロちゃんは自分を好きになる事が必要だよ。」
自分を好きに…
「分かった。」
「そして… ヒロちゃんだけには背負わせない。 ユイもヒロちゃんを守りたい。」
キリッとした表情。 覚悟を決めた顔だ。
「俺はユイを守る。 だから変わりに俺を守ってくれ。
俺が自分を大切にしてなかった時には叱ってほしい。
俺が落ち込んだ時には慰めてほしい。
俺が前に進めない時には。一緒に一歩を歩んでほしい。
俺が自分を好きになれるように。傍にいてくれないか?」
「わかった! ユイ… ヒロちゃんが自分を好きなれるように頑張るよ。
だから。 誓いの証に。」
そういってユイは顔を近づける。 そして。
…チュ
暖かい感触… やわらかい… ユイにキスをされた。
初めてのキス… こんな柔らかいんだな。
「プハッ… 約束だよヒロちゃん。」
そのまま布団に潜り込むユイ。
余程恥ずかしかったのだろう。 布団に顔をうずめながら時折ジタバタしている。
チラリと見える長耳が真っ赤に染まっている。 可愛らしい。
思わずユイを抱き寄せる。
ユイが一瞬ビクッてなるが離れようとはしない。 嫌ではないらしい。
「あったかい… 安心するよ。」
俺はユイのきれいな金色の髪を撫でる。サラサラしていて触り心地が良い。
「明日はどうしたい?」
「明日はいーっぱいデートするの。 ユイを悲しませた罰だよ!」
やれやれ明日は大変な一日になりそうだ…
しばらく撫でていると。小さく吐息が聞こえる。 どうやら寝たようだ。
寝顔が可愛らしい。
「ふぅ… さて俺も寝るか。 お休みお姫様…」
おでこに軽くキスをした後目をつぶる。
疲れていたようですぐに意識が途切れて行った。
こんな青春過ごしたかったですね…
世界地図作る必要がでてきましたね。 現在判明してるのはグランスバニア大陸とブランド大陸
予定では後3大陸くらいはあります。
次回はさらに進みます




