プロローグ
とある冬の日世間はクリスマスムード真っ盛り。
そんな中会社でいつも通り上司に怒られてる俺は天馬広明、22才独身彼女いない歴=年齢の冴えない青年である。
実は俺は昔から妄想癖がある、というとやばい奴に思えるだろうが実際はそんなことはない。
道端の花を見てエルフの住まう国でエルフの子とキャッキャウフフしてたり。
夜空に浮かぶ月を見て、実は俺は月世界からの使者だったのだ、地球はこれより消滅する!等とくだらない事ばかり考えている。
そんな事ばかり考えてるからか、友達からお前は良くボーットしてて何考えてるか分からないと言われる。
さて、俺の自己紹介が終わったところで、何故今俺が怒られてるのか説明しよう。
まず簡潔に言うと、俺は今日この日寝坊をしてきたのだ、それも1時間近くもだ。
俺は朝が弱く、目覚ましが鳴っても気づかない事が多い。
例え起きても二度寝するなどしょっちゅうあったりする。
布団の中は魔法のように暖かいからついついもう一度その魔法を味わいたくなるのだ。
そうして今日も目覚ましがなったのに気付かず遅刻をする。
しかも常習犯である、上司もまたお前かと呆れられてる。
俺は申し訳なさそうな顔をしながら、頭の中ではまるっきり反省等しておらず、何時も適当な事を考えて乗り切っている。
今日もこの説教中に空から天使が現れ、選ばれし者である俺はその子と世界を旅をし幸せに暮らす妄想をしている。
そうしてる内に説教も終わる、今日は特に忙しい事も無く業務が終了した。
外に出ると景色が暗くなってきている。冬の日はすぐ景色が暗くなるものである。
俺は足取りを早めてさっさと一人夜道を歩く。
数分歩き、俺は小さな公園に辿りつく。
小さな頃から良く遊んでいるなじみの公園だった。
「今日も綺麗だな」と、公園内にポツンと置いてあるベンチに座り、辺りを見渡す。
この公園は昼間は何の変哲もない所だが、夜になると月の光が池に反射し周りに幻想的な空間を演出してくれる、俺はその景色が大好きで、心が躍らない日や特に意味がない日でも、その景色を見るのが好きで、俺は良くここを訪れていた。
しばらくその景色を堪能しつつ、物思いにふけっていると。
ポンっという奇妙な音が裏側の方から聞こえてくる。
「何の音だ?…」
その音の正体を知りたくて、音がする方へと駆け出して行った。、思えばここでの出来事が俺の運命を変えたのかも知れない。
この公園には町の方から入る表側の入口と、奥には古びた小屋があるだけの裏側の方と2種類あり、俺は裏側の方へとたどりつく。
そこに居たのは、この世の者とは思えない程の美少女がだった。
美しくなびく白銀の髪は、月夜の光に照らされ。神々しい輝きを放っていた。
背丈は低く、何より印象だったのは、こんな寒空の下、身に着けているのは薄着一枚という何かのプレイか何か?とも捉えかねないかっこをしていたのだ。
少女は俺の姿を捉えたのか、ゆっくりとこちらへ向かってくる。
彼女の、エメラルドグリーンの瞳に見つめられた俺は、蛇に睨まれた蛙のように、ただそこに立ち止まっていた。
やがて少女が後少しで触れるかもという位置まで近づいてくる。
じっと見つめられ。視界が少女でいっぱいになっている。
そのまま見つめられ、しばらく時が止まっていた。
永遠ともいえる時間を終わらせたのは、俺が咄嗟に出た言葉からであった。
「天使みたいだ、とても綺麗だよ。」
素っ頓狂な顔をする少女。
当たり前である、何をとち狂ったことを言っているのか。
今の世であればそれだけで通報され、下手すれば社会的に死亡してしまうというのに。
っというかこの状況を見られただけで通報されかねない事案ではある。
薄着一枚、近くに男がいるとなれば何か変態的な趣向をしているとしか捉えられない。
すると、今まで何も発さなかった少女が口を開いた。
「何を考えてたのかと思えば、最初にいう事がそれなの?変な人ね。」
「君には言われたくないかなぁ…なんで薄着一枚なの?寒くないの?」
「寒くないわよ、逆に少し熱いくらいね。熱魔法をかけすぎたかしら?」
そういいつつパタパタと胸元をあおり風を送る。
チラチラと見える小さな双丘の膨らみに思わず目をそらす。
「何処見てるのよ?変態さん」
「み、見えるようにしたのはそっちだろう。これは不可抗力だ。」
「でも見てたじゃない。こんな少女に対して、変態さんね。」
グゥと身悶える俺。こんな少女にグサリと言われてしまった。
男として情けないなぁ、と思っていると。少女は再びじっとこちらを見つめて来た。
おーいと言っても反応もせず、ただ黙って見ていた。
そうしてある程度見つめてると、ふぅと一息ついた後に突拍子もない事を呟いた。
「貴方?今満足してる?」
どういう意味だろう、少し考えてみる。
俺はいたって平凡な人生を歩んできている。
不自由と感じたことはない、友達もいるにはいる。
受け身な性格でいじられることは多々あったがいじめられたりはしていない。
ただ、一つあるとすれば、俺は流されやすい性格であった。
何時も人の意見に流されてきたと思う、自分が無いわけではない。
やりたいと思ったことはやるし嫌な物は嫌だと言えると思う。
でもそれを言葉にしては来なかった。流された方が楽だったからだ、
流されて楽をして、今はやりたくもない仕事をほわほわとしている。
最近は楽しみもない、生きてる実感があるとは思えなかった。
そういわれると、今の現状は満足はしていないな。
もっと選択をして、勇気をもってれば、今よりより良い未来があっただろうか、
「満足…してないかなぁ」
ポツリと呟く、こんな女の子に何を言ってるのだろうか。
「そうなの、それがこの運命の正体か…」
「正体?」
「なんでもないわ、気にしないで。私はそろそろ帰るわ、向こうで待ってるわ。天馬広明」
ふわりと後ろを振り返る少女。
気になるのは俺の名前を言っていた事、自己紹介した覚えはない。
「待って、なんで俺の名前を知って!?」
呼びとめようと思った時、既に少女の姿はそこにはなかった。
代わりにそこにあったのは、白く輝かしい羽だった。
「一体あの子は何だったんだろう…」
色々と不思議な少女だったな。と思いつつ、俺は家に変える為歩き出していた。
狭い道路脇を歩いていると、突然光が俺を照らし出す。
何の光だろうと後ろを振り返ると。
猛スピードでこちらに向かってくる暴走したトラックの姿があった。
後になって分かる事だが、極度の疲労で運転手は昏睡状態に陥ってたらしい。
そんな事は露知らず、余りにもあっけなく俺の人生は終了を迎えたのであった。
何ともあっけない最後であろう。 俺は崩れゆく意識の中、公園で出会った少女の姿が見えた気がした。
初の異世界転生物 自分の妄想力をフル稼働します。三日坊主にならないように頑張ります