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おまけ。帰宅後のまったり


魔力というものは厄介で、溜まりすぎても完全に使い切るまでやってしまっても体調に影響が出るものです。

魔力切れを起こした私はあれから3日ほど寝たきりとなり、急ぎ事後処理に帰ったベルナーク様に代わり呼び出された隣家のハーウッドの一家に面倒を見てもらっていました。

ハーヴは勝手知ったる我が家を整理整頓しつつ、ようやく体を起こせるようになった私に大変呆れておりました。


「どーでもいいが、コレ、返してきた方が良いんじゃね?」

”犬猫のように言うな。トリが”

「自活すら出来ねェ犬以下のガキが吠えるな」


口の悪さで彼に勝てる奴はそういません。キーヴァ君も即座に返る悪口に対応できず固まってました。


「何やらトラブルがあって魔力が回復しないんだそうで、補充に他人の手が必要なんだそうですよ。しかも偏食が激しいので供給者を探すのも大変みたいですし」

”この世界には俺達魔に近しい血が無いのだ。仕方あるまい”

「………妖魔?」


そこ、凝視しても私は妖魔ではないですよ?


「どうやら流れ者の血がお好きなんでしょうね」

「悪食だな。納得した」

”なっ”


キーヴァ君は涙目になってしまいました。これは戦意喪失とみて良いでしょうね。意外と打たれ弱いみたいです。


「そういえばハーヴは師匠の部屋ダンジョンって奥まで行った事ありました?」


ふと気になってハーウッドに聞いてみたら、彼も昔1度だけ師匠の居ない時に入った事があったらしい。奥地まで1週間かかった上死にそうになったからもう絶対嫌だと言われました。

…………攻略できただと!?


「ハーヴィー、ちょっと探してほしい資料があるんですけど行ってもらえませんか?」

「あのなぁ、行きっぱなしじゃないんだぞ?前だって救助されてるし、あんなの自力で戻れるわけないだろ」


聞けば一度通ると戻れないような仕掛けも多々あったらしい。流石師匠、えげつない。


「召喚珠に登録しますんで、どうでしょう」

「自分で行け」

「私じゃ目的地にも着けないし、生きて帰ってこられません」

「それはお前だけじゃねェ」


がんとして拒否されました。残念です。

私はうんっと伸びをして、柔軟を始めました。3日ぶりに体を動かすので関節がガチガチです。


「とりあえず、お前ももう大丈夫そうだな。何かあったらまた呼べよ」

「ありがとうございました。仕事休ませた分はまたタダ働きに行きますね」

「気にすンな」


じゃな、と右手を軽く上げてハーヴは帰って行きました。

本当に隣家のご一家には足を向けて寝られません。

さぁ、後は自分でどうにかしなきゃですね。


「……あー。荷物バラさなきゃなぁ」


旅の荷物はそのまま誰も触れずにリビングのソファに置いてありました。

携帯食やら夜営グッズやら着替えやらを片付けながら、2階へ戻すものはテーブルへ置く。

魔具をバラしている時、キーヴァ君がその中の一つの筒を持ち上げ覗きこんでいました。


"これは何だ?"

「まだ居たんですね」

"それは余計だ。これは何だって聞いてんだ"

「望遠鏡ですよ」


望遠鏡?と筒を覗きながら聞き返してきました。


「魔力量で距離を、密度でピントを合わせるものです」

"へぇ。面白いな"


キーヴァ君はあらゆる方向を楽しそうに覗き見ています。室内にそんなに楽しいものは無いでしょうに。

ちなみにコレ、かなり調整が難しくて発売はされたものの私が買った一個しか売れなかった曰く付きの商品らしいです。


"あっちの高い山の麓にとてつもない魔力持ちがいるな"


…………彼の目には我々と違うものが見えるようです。



そんなこんなで荷解きと補充に半日かかりました。

うん、こんな穏やかで平和な日も良いですね。



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