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11.旨い話には裏があった


自国ではありますがオフラス領は遠いし明日は早いので、本日はお宿泊まりです。こちらに来る際よく使っている竜燐亭ですが、なんでもヴィエントの鱗をどこからか貰い受けたらしくて、それを家宝として飾っているんだそうです。見ましたが普通の鱗でしたね、呪われてないです。

さて、今日は何を食べましょうか。


部屋に帰って簡単に湯あみをしてから、とっても良い匂いがする1階の食堂に降りてきました。夕食にはちょっと早いですが、明日こそ走り回るでしょうからしっかりガッツリ食べるべきですよね。

ナイスバディなお姐さんに本日のおススメ大盛りとエールを一杯頼みました。


まだ夜の営業が開始したばかりなので、私以外にお客はおりません。

しばし夢中で飲み食いしていたのですが、ふと気が付いたら目の前にワインを飲んでいる人がいるではないですか。誰も居ないのに相席ですか?


思わず目を合わせてしまいましたが、ちょっと後悔です。

目の前にいやがっ……いらっしゃったのは、懐柔のランド様だったのです。


金の髪を黒に染めちょっと身なりの良い感じの服を着てますが、到底領主様にもお貴族様にも見えません。それにしても何でお忍びなんてしてるんでしょう。

もくもくもくもく。とりあえず口腔内のお肉を胃に送ってしまいましょう。


「先ほどぶりですが、お元気そうで何よりです」

「むぐ。わざわざこちらまでご足労ありがとうございます?ですかね」


ランド様はニッコリ微笑んでワインをたしなむ。


「いえ、あの時はキア様の件しかお話しできなかったですしね。あの後キア様から話を伺いました。それでイレヴゥイシュト様の情報をアスラン様に早めにお伝えしたいと思って来たのですよ」


……だからといって単身でここに来るのは領主としてどうなんでしょう?

そんなに顔に出したつもりはないんですが、正確に読んだランド様は「ウーヴェが貴女の後ろにおりますよ」と苦笑混じりに教えてくれました。


「……まさかと思いますが。ベルナーク・イレヴゥイシュト様が何かの討伐依頼の補助などを持ちかけられたのでしょうか?冗談でも……駆け出しの竜医相手にそんな要請は無いですよね?」


念のために先に言ったハズが「ああ、それは残念でしたね」と朗らかに流されました。


「先の話だとは思いますが、イレヴゥイシュト様はクルージュ国を探っているようなんです。私どももそれを把握してからなのですが、貴女が当家に来たら連絡をとあったので、おそらくその同行依頼だと。彼は、貴女方が担当していた国の要人には、私のところと同じように貴女を探す依頼をしていると思いますよ」


……ちょ、何事もなかったように言っちゃいましたよこの人!

勘は当たっていたのに、相手が悪すぎたようです。何だったの私の釘!!


「師匠じゃないんで―「いえ、アスラン様をご所望でした」です。ほほぅ……………なんですとっ!?」


言葉まで被されたら反論しようがない。絶句ですよ、絶句。

私が口をパクパクする姿に満足したらしいランド様は、ちょっと表情を引き締めて話題を変えました。


「ところで……アスラン様はクルージュに不穏なうわさがあるのはご存知ですか?」


ぐっと身を寄せ静かに喋りだす様子に事の深刻さを感じましたが、私は話題に疎い方なのでサッパリ分かりません。小首を傾げてしまう。


「この2か月で私の知る竜医が二人ほど、あの国で行方を絶っています。竜やズメウの力も通じない何かがあるようですよ」

「…そのお二人は、私も名を知っている方ですか?」


ええ恐らく、とランド様が言って続けて出た名に驚く。一人は竜医の中でも魔力が高いと言われていて、討伐依頼の補助でも師匠の次くらいにはよく姿を見かける方だったのだ。前線にも立てる方なので、普通の人族などが敵うような方ではない。

尚且つ彼の足……というか、相棒もよく知っている。白竜ホワイトウィルムだ。普通のウィルムとは別格で、師匠のペットだが野生種であるリントヴルムのムーちゃんとほぼ対等に闘える強さを誇っていた子なのです。


「私はアスラン様を探されたのは、イレヴゥイシュト様自ら調査に向かうための補助かと考えております。オルフェーシュ様の代わりにね」

「私は竜医としても本当にひよっこだし、何より人族ですよ?」

「オルフェーシュ様の力を継いでおられると聞いております」

「……師匠には最後までいつまで経っても半人前めと揶揄やゆされていたんですけど」


師匠の力とは何だろう。そういや昔、師匠が自分はズメウでは無いと言っていたが、それが何か関係あるのだろうか?なんだか分からなくなってきました。


「ところで。何でランド様はこんなトコまでいらしたんですか?」

「それは勿論。あのイレヴゥイシュト様が人を探すのに他者の権力を利用するのを初めて見たからです。そんな貴女に興味を持つのは当たり前でしょう?」


とってもキラキラな笑顔を見せてくれてますが、台詞のせいもあってすっごく胡散臭いですよ。


「ですから、彼がこちらに来る前に、腹を割って貴女とお話ししてみたかったのですよ」

「………………来る前?」


嫌な予感しかしない言い回しじゃないか。ランド様はとっても楽しそうに止めを刺す。


「ええ。貴女の為に、ルフを連れてやってきますよ」

「ッ!?」


なんということでしょう。私、もうキア様のチョロさを笑えません。むきだしの落とし穴に落ちた気分です。しかし彼はその後更なる追撃を入れてきました。


「あぁ忘れてました。彼ご自慢の黒龍種ニドヘグも来ますから、狩りと言わず演習でも良いかもしれません。楽しみですね」


……先にそれ(ニドヘグ)言ってくれたらお里に飛んで逃げましたのに。




その後の残りの食事は、なんか味がなかったです。

そして気が付いたら朝で、領主様の竜舎前に居ました。


………時間、飛びすぎじゃない?何か魔法かけられたのかな……。


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