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名探偵・藤崎誠シリーズ

ワープ(瞬間移動)

作者: さきら天悟
掲載日:2014/12/14

「今日はワープ、瞬間移動について、みなさんと議論してみたいと思います」

司会進行のMCは番組開始の宣言をした。

「まず、パネラーを紹介します」


女性アシスタントがT大物理学教授、科学ジャーナリスト、女性タレント、

探偵、巫女の経歴を紹介していった。


「いつからこの番組は推理ドラマになったんだ。

科学番組だろう。探偵なんか呼びやがって」

大学教授をしかめ面をして吐き捨てた。


今回からパネラーが増えていた。

番組は深夜枠ながら固定視聴者の熱い支持を受け、

プロデューサーはゴールデンタイム進出を狙い、

テコ入れしたのだった。


大学教授は伏し目がちにプロデューサーを確認した。

プロデューサーは、ツカミはOKというように頷いた。

大学教授はこの番組を通じて知名度が上がり、他の番組にもよばれるようになっていた。

彼は学問的知識もさながら、周りの要求を読み取るのも巧みだった。

もちろん役割もあった。

大学教授は科学的な現実路線に立ち、科学ジャーナリストが科学的ロマンを語り、

おバカな女性タレントがピントがずれたことを言うというように。

今回呼ばれた探偵と巫女の役割は周知されていなかった。

プロデューサーがある政治家から紹介されたという噂がスタッフに広まっていた。。



「私は物理学的に可能だと思います」

ジャーナリストが先陣を取った。

これも大学教授とのアウンの呼吸だ。

始めから不可能だ、と言ったら、番組は成立しない。



「私もできると思います」

女性タレントがタイミングよく割り込む。

「だって『どこでもドア』があるじゃん」


「あれは、漫画だろう」

大学教授は声を張り上げた。


「でも、人間が考えたことは全部できるんでしょ」

女性タレントは曇りのない笑顔を見せた。


「鋭い考えだと思います」

探偵は、MCの視線を受けて感想を述べた。

MCが発言を割り振っているようだ。


「ロマンがあっていいですね。

しかし、アインシュタインが物理学的に証明しています。

空間を曲げることができると。

教授それは否定しませんね」

ジャーナリストは物理学教授を見据えた。


「確かに巨大なエネルギーが存在する場合、空間が歪みます。

これは観測されて実証されています。

宇宙上で巨大エネルギーとは星のことです。

質量が大きい星はエネルギーも大きいというこです。

ブラックホールが光を吸い込むというのも、

空間を歪めて落とし穴を作っているためです」

教授は難しい言葉を使わず、丁寧に説明した。

もちろんテレビを意識しているためだ。


ジャーナリストは大きく頷いた。

そして、長方形のフリップを胸に掲げた。

しっかりしたボードではなく、ペラペラの紙だった。



ーーーーーーーーーー

|           |

|           |

| ●     ●  |

|           |

| A     B   |

|           |

ーーーーーーーーーー


2つの●にそれぞれA、Bと記述されている。


「このようにします」

ジャーナリストはA、Bの点が重なるように紙を折り曲げたのだった。


オーっと観覧客の歓声が上がった。


「これは2次元の紙で説明しましたが、

同様に3次元空間でも空間を曲げることが証明されています」

ジャーナリストは立ち上がり、折り曲げた紙を頭上高く掲げた。

「つまり、理論的にワープは可能ということです」


「それは2次元の話でしょう。

仮に2次元に住む人がいるとします。

しかし、彼らには自分たちが住む紙を折り曲げることはできません。

3次元の世界でも、自分たちがいる空間を曲げることなんてできません。

神様でもいない限り」

大学教授はジャーナリストの話をバカにせず、真剣に答えた。


「私は神と意思疎通ができます」

突然、巫女が話し出した。

初めての発言だったが、その一言だけだった。


「神様にお願いできると早いですね。

でも、神様の代わりに巨大なエネルギーで空間を曲げることができます」

ジャーナリストは余裕を見せるように巫女に微笑んだ。


「そんなエネルギーがどこにあるんですか?」

教授とジャーナリストのバトルが始まった。


「核融合があります」


「そんなエネルギーじゃ足りない」


「どうしてそんなことが言えるんですか?」


「太陽は核融合反応で熱エネルギーを発しています。

実際、空間を歪めていますが、足しにもならない程度です」


「ブラックホールはどうですか?」


「それこそワープができなければ、行って実験もできません」


「対消滅はどうですか?」


「物質と反物資とが接触する時に生じるエネルギーですね。

漫画でも出てくる反物資は、すでに生成できる技術は確立しています。

光に近い速度で原子と原子を衝突させるのです。

ごく少数の反物質が発生しますが、すぐに消滅します。

現実的には無理でしょう」


「でも、いつか反物質を自由に生成することができるはずです」


「まあ、使い方を間違えばワープどころじゃないです。

宇宙が消滅してしまいますねどね」


「ん~ッ」


「結局、神様にやってもらうしかないでしょう。

2次元の世界を曲げる事ができるのは3次元の人間。

3次元の世界の曲げる事ができるのは4次元以上の存在」


確かにそうだ。

神様がジャーナリストの紙のように勝手に空間を曲げるはずがない、と探偵は思った。

神が・・・

探偵は頭をフル回転させて推理した。

神が空間を折り曲げてくれないだろうか。


「名探偵にお任せあれ」

探偵は胸に手を当てて深く頭を下げた。

「2次元の住人はこうすればいいはずです」

探偵はジャーナリストから『A』、『B』が記された紙を拝借し、

女性アシスタントから受け取ってペンで何やら書き加えた。


ーーーーーーーーーー

|           |

|           |

| ●     ●  |

|           |

| A     B  |

|           |

|AとBを合わせる|

ーーーーーーーーー


探偵は紙を広げてカメラに向けた。

「2次元の住人がこう書いておけば、3次元の住人がAとBを合わせてくれます。

そうすれば彼らは瞬間移動できます。

だから・・・」



カメラは巫女を捕える。

画面は巫女のアップになった。


「私は神と意思疎通ができます」

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