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ディッター勝負を始めるゲヴィンネン

第398話 本好きのお茶会 後編における貴族院の不思議話のハンネローレ視点です。



「わたくし、一度聞いてみたいと思っていたのですけれど、ソランジュ先生は貴族院の二十不思議をご存知ですか?」


 ローゼマイン様がそう切り出され、貴族院の不思議話についてのお話が始まりました。王族との会話が続くよりずっとわたくしの心に負担の少ない話題です。ソランジュ先生も同じように考えられたのか、その話題にすぐさま興味を示されました。


「……卒業式の夜に踊る神の像、時の女神が悪戯をする東屋、ディッター勝負を始めるゲヴィンネン。それから、開かずの書庫。わたくしは詳しい話は存じませんけれど、ソランジュ先生やハンネローレ様はいくつかご存知なのでしょう? 教えてくださいませ」


 ……ディッター勝負を始めるゲヴィンネンとは、あのお話ですよね。


 話すか話さないか、どちらが良いのかを考えながら、わたくしはソランジュ先生の不思議話に耳を傾けます。ソランジュ先生は「祭壇の最高神」のお話や「時の女神が悪戯をする東屋」のお話をしてくださいました。わたくしが知らないお話で、とても楽しめました。


 ソランジュ先生のお話が終わると、ローゼマイン様が期待に満ちた金色の瞳でわたくしの方を見つめます。ヒルデブラント王子にも同じように期待の眼差しを向けられました。仕方がないので、わたくしは「ディッター勝負を始めるゲヴィンネン」について話しました。


「わたくしが知っているのはディッターを始めるゲヴィンネンのお話です。洗礼式を迎える子供くらいの大きさのゲヴィンネンが夜中にディッターを始めるというものです。目撃情報が多かったとは伺っていますけれど、わたくしもあまり詳しくないのです」


 ……嘘です。本当はもっと詳しく知っています。正確には真相を知っています。




 これはそれほど古い話ではないのです。十年ほど昔のことになるでしょうか。まだ貴族院で宝盗りディッターが行われていた頃のお話です。それよりずっと以前からダンケルフェルガーでは宝盗りディッターの反省会を兼ねて、騎士見習い達はゲヴィンネンでディッターの再現をしていたそうです。


 ある年のこと、誰かが「盤上ではわかりにくい。現地に行こう」と言い出しました。「確かに盤上では地形や障害物もわからない」と賛成する者が多数出ました。

 そして、暗くなった貴族院の上空でゲヴィンネンを飛ばし、その日の反省会が行われたのですが、ゲヴィンネンが小さすぎて見えなかったそうです。その年は仕方がないので、現地での反省会を諦めました。


 しかし、根本的には諦めないのがダンケルフェルガーの騎士です。ゲヴィンネンの駒を特注で大きく作ってもらいました。それは洗礼式を終えた子供くらいの大きさがある駒です。暗い中でも見えるように魔力を帯びて光る青くて大きなゲヴィンネンが仕上がりました。


「よし、これで反省会だ」


 大きなゲヴィンネンの駒ができあがった年は、フェルディナンドという策略家のせいでダンケルフェルガーが初めて敗北した年だったのです。どこが悪かったのか、あの策を破るにはどうすれば良いのか、騎士見習いはもちろん、領地対抗戦を観戦に来ていた騎士達も加わって貴族院の上空で壮大な反省会が始まりました。


 その日のディッター勝負をゲヴィンネンで再現すれば、それぞれの寮の側で特別注文した魔力で光る大きなゲヴィンネンが飛び回ることになります。当然のことながら、あちらこちらの寮で目撃され、大変な騒ぎになりました。


 次の日から貴族院で光るゲヴィンネンの噂が流れ、騒ぎが大きくなったことで、ルーフェン先生によって大きなゲヴィンネンを使っての反省会は禁止されました。

 それ以来、大きなゲヴィンネンはダンケルフェルガーの寮で人を驚かせるために時折使われているのです。


累計100位の感謝SSです。

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― 新着の感想 ―
ダンケルフェルガーがあまりにもダンケルフェルガーすぎた
[一言] ・盤上では地形や障害物が判らない ・現地では駒が小さくて見えない ここで「じゃあ駒を大きくしよう」「暗い中で見えないなら光らせよう」と考えるのが騎士脳。 騎獣に乗って動き回れるんだから、ロ…
[一言] 都市伝説や不思議話、学生時代に流行ったなあ。今とは全然内容が違うんだろうけどな。
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