墓参り
水谷誠司は明日人と横浜の実家に向かい、父と三人で墓参りに行った。
明日人が無事に成人したことの報告だ。
――墓前に報告。御袋には土下座で謝っても許してもらえねぇだろうなぁ……。
墓前に手を合わせながら、ぐじぐじと水谷は明日人との関係について、自分を責めた。
一方、明日人は能天気に父と快晴の天候について話している。
「温かいね。お天気だし」
「母さんの機嫌が良いんだろ」
「そうだね。お婆ちゃんのお墓参りの時、大体晴れてるもんね」
「帰りに蕎麦でも食って帰るか」
――呑気過ぎるだろ。……俺が一人で悩んでて、アホみたいじゃねぇか。
「セイちゃん。お腹空いた。早く帰ろ」
水谷は自己嫌悪を切り上げ、父の車に乗った。
*
「……墓前に報告しにくい」
父と別れて家に帰ってから、明日人に本音を漏らした。
「なんで?」
「なんでって……そりゃ、色々……複雑になっちゃったし」
「複雑? 何が?」
「え? そりゃ、俺達の事とか……」
「えー。お婆ちゃん喜ぶと思うけどなー」
――それは、無いだろ。
明日人は、水谷と違って自己肯定感が高い。
それにはうっすら気がついていたが、自分と明日人が深い関係になったことが、喜ばれるという発想が全くなかった。
「なんでそう思うのか、全然わかんねぇよ」
「えー。お婆ちゃんセイちゃんにお嫁さん来てほしかったって、俺に話してたもん」
「は?」
「俺がお嫁さんだったら、良かったね。って、言ったら『本当に、そうね!』って、言ってたよ?」
「……確かに、言いそうだけど、それ何年前の話だよ?」
「俺が横浜に何回か来た時だから……十三年前?」
「七歳の時かよ……」
――子供相手になんつー話をしてたんだ。御袋……。
「だから、将来は俺がお嫁さんになるーって……」
「御袋に言ったのか!?」
「いや、俺が思っただけだよ。流石に恥ずかしくて、言えなかった」
明日人は、水谷と関係してることに後悔も後ろめたさも無いのか、赤くなって照れた。
「えー。悩んでるの俺だけ……?」
「なんで、悩むの?」
明日人はキョトンとした。
「そりゃ、世間体とか……」
水谷は言葉に詰まった。その後の言葉が思いつかない。
「セイちゃん。俺がお嫁さんなの、嫌?」
明日人は不思議そうに聞いた。
そんな、かわいい質問をされては、余計に困る。
「嫌じゃない……」
「じゃあ、良いじゃん」
明日人は笑顔になると、ゲームを始めた。
「……友達と、恋愛の話とかで……話噛み合わないだろ?」
「あー。俺、超年上好きって宣言してるから、噛み合った試しがない」
――いや、言うなよ!
「セイちゃんは、友達と恋ばなする時どんなだったの?」
――そもそも、友達がいねぇよ……。
「恋ばな、したことねぇし……」
「他人に興味無さそうだもんね、セイちゃん」
「まぁ、そうだな」
そういうことに、した。
「あ。アイテムあった。このゲーム、絶対隠しルートあるよね……でも、セイちゃん、バラさないでね!」
明日人は今日も楽しそうだった。




