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変な二人  作者: 八車 雀兄


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2/6

二十歳の集い

 明日人(あしと)が『二十歳の集い』から、帰ってきた。



「セイちゃん、お腹空いたー」



「成人しても、あんま、変わんねぇな」



 水谷誠司(みずたにせいじ)は、苦笑いしながら明日人を出迎えた。



「そう?」



「誰か知合い来てたのか?」



「うん。咲希(さつき)が振袖着てたよ。写真見る?」



「うわ。すげぇな。あんな小さかったのに……今、医大生だろ? 高嶺の花って感じだな」



「ホントだよねー。セイちゃんに会いたがってたよ」



「へぇ。――なんで?」



「セイちゃんが、初恋の人だからでしょ」



「へ?」



 水谷はビックリした。



「え? 知らなかったの? 俺と咲希とで、セイちゃんの膝にどっちがのるか、毎回バトってたじゃん」




「全っ然、覚えてねぇ……」




 あの頃は、自分のメンタルがぐちゃぐちゃなまま、明日人を引き取ったので、同級生達とのやり取りなどサッパリ忘れていた。




「えー。俺もライバル視してて、あんなにバチバチだったのに? セイちゃん、俺の周りの女子の初恋ドロボーだったのに、自覚なかったんだ」




 両親より若い水谷が、焼き菓子や即席のオヤツを振る舞うので、女子達の間で高評価だっただけ――の話だ。




「知らねぇよ。なんだよ、それ」




――お前ら……。男を見る目、無さすぎだろ。




 水谷は、振袖姿の咲希を少し心配してしまった。




「咲希たちと、遊びに行けば良かったのに。良いのか? こんなに早く帰ってきちまって」




 交遊関係が広い明日人を気遣ったが、本音は帰ってきてくれて嬉しかった。




「えー。早くセイちゃんとご飯食べたかった」



 明日人が嬉しいことばかり言う。



「ちょっと、早いけど……すき焼きにするか?」



「手伝うよ」



 着替えた明日人がエプロンを着けて微笑んだ。



「酒、買ってきたけど、飲むか?」



「うん! 飲むー♪」



――なんか、凄い……背徳感が、ある気が……。



 寒いので炬燵の上に卓上コンロを置いて、すき焼きを作った。



 水谷は酒も煙草もやらない。



 飲み仲間もいない。せいぜい、正月に父とコップ一杯飲むのが関の山だ。



 でも、今日はワインや、清酒、ビール、カクテル、思いつく限りかごに入れて、買ってしまった。



――酔った明日人が、見たい……。



 どんな風に変わるのか? 一番うかれてるのは、水谷の方だった。



「何から飲む?」



「ビールだねぇ。セイちゃんは?」



「同じでいいよ」



 ビールで乾杯して、二人で飲む。



 少し乾いた冬の空気が緩んだ気がした。



 酒の飲み方は、正直言えばわからない。



――でも、明日人と一緒に覚えれば良いか。



 水谷はハイボールを飲みながら、自分がハメを外し過ぎないように気をつけて飲んだ。



「まだ、飲める? 気分悪くないか?」



「うん。美味しいからね。……でも、酔ってきたっぽい」



 ほろ酔いの明日人が肩に頭を預けながら、水谷を見つめた。



「セイちゃんと、二人でいれて嬉しい……」



 炬燵の中で明日人が、手を握ってきた。



 繋いだ手の甲を、優しく撫でてやると、



「育ててくれてありがとう、お父さん」



 初めて父親扱いされて、水谷は理性が飛んだ。



   *



 翌朝、眠る明日人の隣で水谷は頭を抱えた。



――最低、最悪だ……。




 酒の勢いで、()()()()()()()()




 血は繋がってない。しかし、関係を問われれば、父子(おやこ)と、答える関係なのに。




――よりによって、初めて父と呼ばれた夜に……俺って奴は……。




 水谷誠司は、明日人の昨夜の呼びかけに興奮したことを、激しく自己嫌悪した。

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