予想を遥かに越えてきた身分
「飛龍は?」
「幸いなことにまだ出ておりませぬ。」
銀の髪の女と世話係が席を外した後、王は短く老婆に確認をした。
「じゃが、報せの内容を少し直さねば。お前達、そこな引き出しに紙と筆が入っておろう。持ってきておくれ。」
男達が引き出しを漁っているようすを見ながら王は続けて老婆に尋ねた。
「あれは何者だ?」
「…生死の狭間には神秘がつきまとうもの。おそらくあの様子が本来のあの方なんじゃろうて。かの国が何かしらの術で封じておったのじゃろう。悪鬼や幽霊の仕業ではないの。」
老婆の説明を聞いた男達の顔が明るくなった。
「それなら安心ですな!」
「アレト国め!奇っ怪な術を使いよる!」
この国の民は寿命が長いので、死について非常に恐れている。実体あるものには滅法強いが、幽霊の類いにはまるで使い物にならない。
「と言うわけでお前達、あの方は本来の姿を取り戻された。龍騎士のところへ行って前の報せを燃やしておくれ。あとで新しい報せを持っていくでの。」
「わかりました。」
「それから、葬送の式典は中止。代わりに祝いの宴じゃ。」
「そいつは素晴らしい!けれども、何故かの国の術が解けたんで…?」
「そんなもの決まっておろう。」
男の疑問に老婆は勿体ぶった調子で続けた。
「陛下の愛じゃ、愛!」
王は自分が人生で一番渋い顔をしている自覚があったが、男達に悟られぬよう、顔を手で隠した上で反らした。男達は王が恥ずかしがっているのだと思い、一層酒が旨くなるだろうとニヤついた。
****************
なんか部屋で盛り上がってるみたいだけど、それよりも重大案件が私にはあるッ!
手洗いレクチャーして貰ったあと、トイレの入り口に戻ろうとしたお姉さんに確認する。
「すみません……汚れた下着はどうしたら良いでしょうか…?」
「こちらで預かります。」
ちょっ……それは……流石に申し訳無さすぎる…。しかし躊躇ないな。こっちの世界じゃそれが普通なのかな…?でもここで、じゃ!よろしく!って差し出したら今後一生ケチャップ付きパンツを誰かに洗って貰い続けるってこと!?いやいやいやいや無理ですわ…。せめて水洗いさせてほしい。
「えーっと、それは申し訳ないので、洗濯かごみたいな物ってありますか?」
「…………でしたら、入り口近くにかごがございますので、そちらにお入れください。」
……間が長くない?普通逆じゃない?
「わかりました。ありがとうございます。先に戻っていてください。」
お姉さんが入り口に戻るのを待って隠し持っていた物を取り出す。
「こういうのは時間が経つと落ちにくいからね…。」
水を流しながらゴシゴシ洗う。
「もうちょっと水流が強いと良いんだけど……。」
えっ、なんか水流強くなった?どういう事?
ジャーポットの上を見るとさっきの不思議な生き物?がいた。もしかして…?
「あなたがやってくれたの?」
問いかけると、にっこりしてくれた。かっ……かわ……かわE……。かわいいが過ぎる……。
「ありがとう~~!何かお礼ができると良いんだけど……。」
そう言うと不思議な生き物?はジャーポットの裏側にのたのた動いた。覗いてみるとちょっと汚れている。
「これが気になるのね。ちょっと待ってね…。これで良し。」
水洗いした下着を絞って、手をすすいで、手拭き用の布でこすった。この布も一緒に洗濯かごに入れよう。
きれいになったのを確認した不思議な生き物?は、にこにこしながら短い前足で拍手のような素振りをしている。かわいい~~!何だこの生き物?かわいい~~!!
「じゃあそろそろ行くね。バイバイ。」
手を振ったら手を振り返してくれた。それから不思議な生き物?はジャーポットの中に消えた。このジャーポットに住んでるのかな?っていうか普通に言葉通じてたな?んーっ?かわいいのでヨシ!股の痛みも可愛さで薄れた気がする!ウソウソ全然薄れてない……。めちゃくちゃ主張してる……。
引き続きカタツムリ運行で入り口に戻り、洗濯かごであろうかごにブツを入れ、近くで待っていたお姉さんと共にベッドに向かった。
なんとかベッドに座ると、さっきまでビビり散らかしていたおじさん達はニヤニヤしながら肩を叩きあい、王様?は顔を手で覆ってそっぽを向いて、大婆様は何か書き物をしてる…??どういう状況??
「それでは王妃様、俺たちはこの辺で…。」
「お大事になさってくだせぇ。失礼しまさぁ。」
ウキウキした様子でおじさん達が出ていった。ん?んん? 明らかに目線が私だったよね???ってことはつまり……????
「私が、王妃様、ってこと……?」
「……ハァー…。」
「ホッホッホッホ……。」
股だけじゃなくて頭も痛くなってきた気がする。




