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司の初仕事 その1

先週の30日をお休みしたので、3話を投稿できる形になりました。

長さとしては短いですが、悪しからず。

「この書類は……」

 司は、デスクの上にある仕分け終わった書類をファイルに挟んでいく。

「平田くん、入社からずっと悪いね。なにぶん、書類整理が苦手で」

「い、いえ」

 書類を挟み終わり、重くなったファイルを種へ戻しに行く。

 その途中、空っぽの椅子が視界に入った。

(柴山先輩は、外回り……天原先輩と)

 司が入寮してから一か月、とくつみしょへ入社してから約二週間が経つ。

 歓迎会の翌朝、ただ柴山は「悪かった」と頭を下げてきた。そのため、柴山が犬になったことは尋ねにくく。

(偶然とはいえ、柴山先輩の正体……を見てしまったのは悪かったな)

 棚の引き戸を開け、抱えたファイルを戻して、次のファイルを取り出す。

「新入りくん、書類の整理は順調?」

「は、はいっ?」

 ふいに背後から声をかけられ、司の口から変な声が飛び出す。

「なに、変な声出しちゃって」

 声をかけてきた黒石は一瞬、眉を寄せてから。

「部長からオッケー出たから。新入りくん、来週の火曜はあたしと一緒に外回り行くよ」

「ほ、ほんとですか、わっ」

 司の腕から力が抜け、危うくファイルを足に落としかける。

「だから、今週中に書類整理の目途(めど)つけといてね」

「は、はい」

 ファイルを抱え直しながら、司が返事をすると、

「いやいや。もう随分、整理できているよ。ほら、平田くんが来る前と比べると……ねぇ?」

 デスクについている貫田部長が、司を見る。

「は、はは……」

 それに、司は乾いた笑いで反応した。

 たしかに、入社してすぐに見せられた棚の中はひどかった。棚にファイルはあるものの、それに挟まった書類はわずか。ほとんどの書類がファイルの間や上、果ては下敷きになっていた。

 不幸中の幸いは、棚に納めれらた書類がぐしゃぐしゃになっていないことだ。

「天原、ただいま帰りましたー」

 その声に、室内にいる全員の視線が玄関へ向く。

「おかえりなさい」

 これは、とくつみしょの決まりだと司は説明を受けた。

 誰かが外へ出るときは「いってらっしゃい」、帰ってきたら「おかえりなさい」と声をかける。

 実家では無かったその習慣に、最初こそ司は慣れずに照れや戸惑いがあった。最近やっと、それらが薄れてきつつある。

「あの、天原先輩。柴山先輩は……」

 司はデスクで薄手のコートを脱ぐ天原に近づき、声をかける。

「ちょっとだけ用があるから、それ済ませたら帰るって話よ。タロになにか用事?」

「あ、いえ……」

 天原から離れようと、後ろへ下がりかけたところで。

「新入りくん、言わなくていいの? さっきのこと」

 黒石の声が、司の足を止めさせる。

「天原先輩。来週、外回りに行けることになりました」

 その報告を、きっと天原は喜んでくれる。

 司はそう思っていた。

「そう……じゃあ私もついて行こうかな、外回り」

 目を伏せ、少し暗いトーンの声での反応。

「天原先輩、なにかあったんですか?」

 予想外の反応に出遅れた司の代わりのように、黒石が言う。

「えっ? あぁ、いいの、こっちの話だから」

 そう言って、天原は笑顔を浮かべる。

「ほら、仕事しよ。彩も司くんも。あと少しで、お昼休みなんだから」

 椅子に座り、デスクに向かう天原。

 いつもと変わらないその様子に、司はホッとした……はずだった。

(どうして、こんなに不安なんだろう……)

 ハッキリとした答えが出ない司の脳裏に、ふと父が浮かぶ。

(まさか……いや、違うはず)

 そっと頭を左右に振り、浮かぶそれを消して。

 司は、目の前の仕事に集中することにした。

次回「その2」は、来週の土曜(9月13日)16時台に更新予定です。

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