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他部署と営業部 その2

「じゃあ、ちょっと会議に行ってくるから」

「いってらっしゃい」


 昼休みが明け、各々が午後の仕事に取りかかる。

 司も、午前の採用話のことは一旦置いて、午後の仕事を始めていく。


「さて。私、外に……あっ」


 動く気配が止まった隣を見れば、天原がデスクに両手をついて固まっていた。


「天原先輩、どうかしたんですか?」

「部長から頼まれてた書類、午後イチで部長に渡さないといけなかったんだけど……」


 そう言って、クリアファイルに入った書類を見せる。

 クリアファイルの表には、部長の字が紙いっぱいに書かれた付箋が一枚。

 その内容は字が読めないのでわからないが、赤いインクから重要事項な事は読み取れた。


「これ、手渡しって書いてあるんだけど。どうしよう……しかたない、私が帰ってから渡すしかないわね」


 書類をデスクに置き、天原はバッグを上げる。そして中身を軽くチェックすると、肩に掛けた。


「あの、天原先輩。もし良ければ、書類は僕が貫田部長に渡しましょうか?」

「えっ、いいの?」

「はい」


 けれど、天原はすぐに書類を渡さなかった。


「あ、でも……うーん、もう入社から半年経ったし。大丈夫かな……」


 独り言のように呟く、天原。

 段々と声は小さくなり、とうとう天原の口が閉じた。


「……じゃあ、お言葉に甘えて。四階に居る部長に届けてもらっていい?」

「四階ですね」


 復唱し、天原からクリアファイルごと書類を受け取る。


「ドアを出て右手の階段を上がれば、四階の倉庫に行けるから。司くん、お願いね」



(二階……三階……四階。ここだ)

 目の前にあるのは、所々に錆が付いた金属製のドア。

 そのドアから中の声が漏れてくる。


「だから、この日は営業部が……」

「そうなると……」


 聞き馴染みのある貫田部長の声以外に、二つの声がしている。

(……よし)

 深呼吸して、司はドアをノックした。しかし、中から反応は無い。

 もう一度ノックするが、変わりがない。

 そこで、思い切って右手で拳を作って強く叩いてみた。書類は、左脇に挟んだ。


「……今、会議中だ!」

「ぬ、貫田部長にお届け物です!」


 やっと中からした声に負けないよう、司も声を張る。

 すると足音がして、ドアが開いた。

 そこに立っていたのは、眼鏡をかけた貫田部長。


「平田くん。どうしたんだい、ここに来て」

「天原先輩から預かった書類を渡しに来ました。急ぎの物だったので」


 脇に挟んでいた書類を、貫田部長に渡す。


「あぁ、これか。ありがとう、平田くん。じゃあ、戻っ――」

「まぁまぁ。そう急いで帰すこと無いでしょうに」


 貫田部長が閉めかけたドアを、誰かの手が止めた。そしてドアが、大きく開かれる。

 そこに現れたのは、細い目で長身の男性と、鋭い眼光のがっしりした体格の男性。

 ドアを押さえているのは、細い目の男性で。半歩ズレたところに、鋭い眼光の男性は立っている。


「貫田営業部長? これは新入社員の“人”ですよね?」

次回、その3の投稿は、来週をお休みして3月20日(金) 16時10分の予定です。

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