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キラめく瞳は、なにを見て その2

ジャンルを、「文芸」から「ファンタジー」に戻してます。

「新入りくん。知ってる? 今日の最高気温」

「まだ高いんですよね」

 司が、動物病院にチラシを置いて回った帰り道。

 たまたま近くで仕事をしていた黒石と合流して、とくつみしょに帰っていた。

「そう! もう、十月なのに。変よね、ほんと」

 黒石がヒールを鳴らして歩く。

その足音が、急に止んだ。

「黒石先輩、どうしたんですか?」

 数歩だけ先に行ってしまっていた司は、すぐに戻る。

「あれ。おかしくない?」

 黒石が指した先。

 そこは公園だが、誰も遊んだりしていない。

 けれど、子どもはいた。

 ただし、植え込みの一角に複数人が固まって。

「あの子どもたちですか?」

「……ヤな予感」

 ぽそりと呟かれたそれを、司が聞き取った瞬間には、黒石は動いていた。

 ヒールを鳴らし、子どもたちのいる方へ近づいていく。

「ちょっと! そこで何してるの!」

 その声に、子どもたちが振り返る。

「やべっ」

「逃げろ!」

 散るように、子どもたちが走り去る。

 黒石はそれに構わず、手で植え込みをかき分けていく。

「黒石先輩、今のは……」

 小走りで追いついたところで、黒石の目つきが険しくなっているのがわかった。

「あの、黒石先輩……?」

 黙ったまま、植え込みを見ている黒石。その見つめる先を、司も覗く。

「えっ……」

 そこには、黒白のネコが横たわっていた。

 近くで人間が見ているのに、顔を上げもしない。

 その理由は、すぐにわかった。

 下半身のほとんどに、べったりと赤黒いものが付いている。

 その上には、小石や木の枝。

「サイテー……」

「えっ?」

 聞こえたそれに、司がネコから黒石に視線を移す。

 だが、再び黒石の口から出たのは、

「もうダメね。息が小さい」

「ま、まだ生きてるんですか……?」

「お腹が上下に動いてるでしょ。かすかだけど」

 黒石の言うところを見れば、たしかにネコのお腹は動いている。

「……黒石先輩。この子の傷口を押さえたら、動かしても大丈夫でしょうか」

「えっ、まぁ傷口は足の一か所みたいだし、大丈夫だと思うけど……」

「わかりました。ありがとうございます」

「わかりましたって……」

 黒石の反応を気に留めることなく、司はバッグを開けた。その中から未開封の水を出す。

「ごめん。しみるかもしれないけど」

 そう断って、ネコの下半身に少しずつ水をかけていく。

「少しは清潔になったかな……じゃあ、運ぶよ」

 もう一度バッグに手を入れ、タオルを出し、それでネコを包む。

「し、新入りくん。もしかして、助けるつもり?」

「はい。ここから近い動物病院、まだ開いてると思うんです」

 言いながら、司は慎重にネコを持ち上げていく。

「黒石先輩、ごめんなさい。僕のバッグ、預けてもいいですか?」

 すぐに黒石の声が返ってくることはなかった。

 代わりに、ほんの少しの間の後、バッグが砂と(こす)れる音がして。

「……あたしも行く」

 司が振り向くと、黒石が司のバッグを肩にかけていた。

「ほら、ボサッとしないで。急がないと」

「は、はい」

次回「その3」は、2月6日(金)16時10分に投稿予定です。(順調に行けば、ですが)

もし延びるようであれば、更に翌週の13日(金)の同時刻になりますので、よろしくお願いいたします。


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