4 2人で漫画家。
数日後
「あれから湊くん見ないな。」
絵糸が事故にあった日から数日後藤宮は絵糸が事故にあったことを知らずに一人美術室で絵を描いていた。
「はーい!じゃあ今日はもう終わり、片付けてー。」
藤宮は部活動時間が終わり一人帰っていた。
「えっ...」
「藤宮さん...」
そこで私服にジャージを羽織った姿で一人橋の上から夕日を見ている絵糸に出会った。
「み、湊くん...久しぶり...」
「久しぶり...藤宮さん...」
会話が続かない...
「えっと...湊くん最近学校で見なかったから...どうしたのかと思ったよ...」
「ああ、まあ学校いってないし...」
「えっ...あっ...そ、そうなんだ。」
「...理由は聞かないのか。」
「えっ...いや、聞いていいのかなって...」
「別に...」
夕日が沈む...
「藤宮さん...藤宮...俺さ...」
「えっ...うん...何っ...」
強い風が吹き服がなびく...
そして絵糸の羽織っていたジャージが落ち右腕が見えた...
いや...見えなかったという方が正しいか...
絵糸は右腕をなくしていた
「藤宮、俺、右腕なくなったよ。目の前で千切れちまってさあ。
俺全然運動とかしてなかったから。足腰弱かったんか。トラックの目の前でこけてそれで...」
何で俺こんなこと藤宮に言ってるんだろう...
こんなこと言っても意味ないのに...
藤宮は悪くないのに...
悪くないのに...
ああ、そうか、俺今藤宮を悪者にしようとしてるんだ...
あの日藤宮を送らなければって...藤宮は何も悪くないのに...
分かってる分かってるのに..口が止まらない。
現実から逃げたい。誰かのせいにしたい。だって俺は何も悪いことしてないのに。何で俺ばっかり...
「...だからあのとき藤宮が!...うっ..うう...くそっ...何でだよ...何で俺がこんなめに...ごめんっ...俺がバカだったんだっ...今のは..なしにしてくれっ...俺が悪いんだっ...俺がっ...」
絵糸はすべてを言い切る前にあまりの苦しさに泣き出してしまった...
途端に藤宮が絵糸に抱きついた。
「えっ...」
「いいんです。湊くん。私を悪者にして。私が悪いんです。だって湊くんはこんなにも優しいじゃないですか。」
「えっ...優しい...?」
俺は優しくなんてない今だって君を...
「昔、私が迷子になって泣いてるときに、助けてくれた小学生がいたんです。私は、引っ越しをしたばかりで初めて小学校に行く途中でした。
その子は私とは違う学校でしたけど一緒に学校まで連れていってくれました。
そのあととても怒られたそうですけど私には何もいってきませんでした。
それだけじゃなく次の日迷子になっていた公園で遊ぶ約束もしてくれ、その際見せてくれたその子オリジナルのマンガは元気をもらい、自分もマンガ家になるという夢をもらいました。」
「それは...」
「あなたですよ。湊くん。私を助けてくれて、夢をくれてありがとう。
そんなあなたのためにできることなら私は何でもしますよ。」
「藤宮...」
「...でも、すみません、湊くん。今からきついことを言います。今のあなたを見るとこれはまだ誰にも言われてないと思うから。」
「?」
「正論です。きついと思います。聞きたくないなら。この腕を振り払ってください。
湊くん、あなたの腕はもう戻って来ません。それはマンガ家を目指しているあなたにはとても辛いことでしょう。そしてそこから立ち上がるにも時間がかかると思います。でも時間は決してあなたに寄り添ったり一緒に立ち止まったりはしてくれません。
湊くん...あなたが今一番叶えたい願いは何ですか?私も手伝います。なのでそのっ...」
俺の願い...俺の願いはマンガ家、マンガ家になって読者に元気を...読者に元気を?
そうだ俺の願いは読者に元気を与えること!別にマンガ界で名を揚げることでも、神作画のマンガを描くことでもない、でも少なくとも絵は描かなきゃマンガじゃない、
「あっ...」
「?」
絵糸は藤宮の腕を見てひらめいた。
「ははっ、忘れてた...俺の本当の夢も君の存在も...!」
「.....えっ!?」
「藤宮!!!」
「はっ、はいっ!!!」
絵糸が藤宮の両手を掴む
「俺たち2人でマンガ描こう!!!」