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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

賢いハスキーシリーズ

忠犬シベリアンハスキー~うちのハスキーは本当は賢すぎるのではないかと疑っている女子高生の話

作者: 山田 勝

 私は佐々木道子、高校生だ。家族は父、母、中学生の弟と、今、お散歩中の


「ワン!ワン!ワン!」(お散歩―!)

「こら、カイザー引っ張らない」


 ハスキー犬、カイザーだ。


 悩みがある。

 この子は実は賢いのではないかと思えて仕方がない。

 ハスキー犬は通常、元気いっぱいの犬種というイメージがある。


 うちの子ももれなく元気いっぱいだが、やんちゃをして、その顛末が良い結果になることが多々ある。


 あ、前からお婆さんが、よけなきゃ。



「4時までに振り込みをするから、猛、泣かないでおくれ」



 危ないわ。あのお婆さん。スマホで通話しながら歩いているわ。


 あのお婆さん。前を見ていないわ。



「カイザーよけるのよ」

「ワン!」

「キャア、カイザー!だめよ」




「ワンワンワンワン!」

「キャア!」


 カイザーがお婆さんの鞄を引っ張ったわ。


 バサッ!


 鞄の中味が道路に飛び散った。



「申し訳ありません。カイザー!」


 え、お金?札束?大金だわ。



「ヒィ、どうしてくれるんだい。4時までに振り込まないと、猛が会社クビになるんだよ!」


「お婆さん。それは・・・」



 ピーポー!ピーポー!



 警察を呼んだ。

「お手柄だったね」

「いえ、カイザーがお婆さんの鞄を引っ張ったから分かりました」


「そ、そんな猛は偽者?」

「特殊詐欺ですね。お婆さん。事情を聞きたいので署まで」



 こんなことが良くある。


「カイザー、もしかして分かったの?君、本当は賢いの?」

「ワ~ン?」


 まさかね。ハスキー犬は元気が売りだし。



 家に帰ったら、母のピアノの演奏が聞こえる。


 ポロン♩ポロン♩~~~~~



「ただいま」

「お帰り。道子」



 母はピアノの先生をしている。父は母のために、小川がある孤立した場所に家をたてた。騒音には気をつけている。


 弟の健児は野球部だ。夏休みでも練習がある。帰りは夕方だ。


「ただいま!カイザー、遊ぼうぜ!」

「ワン!」



 幸せな家庭だと思う。

 しかし、災厄は突然やってきた。


 突然、騒音が聞こえて来た。

 発生源は隣の空き地だ。

 ダンスをしているようだ。




 ジャガ♩ジャガ♩ジャガ♩


「よ~し、ダンスをキックトッキングにあげる系~」


 しかも、キャンプをしたり。

 バーベキューまでしている。



 ボアアアアアア~~~~



「ゴホゴホ、母さん。隣の空き地でバーベキューをやっているよ」

「ワン!」



「まあ、大学生かしら?お父さんが帰って来たら、抗議するわ。健児と道子は家から出ないのよ」



 しかし、

 父が帰宅して、苦情を言っても、形勢は不利のようだ。


「君たち、大学生か?酒まで飲んで騒いだら迷惑だから控えてくれないか?」


「はあ?ここは親父の土地だよ。何か文句有るの?」

「ウケる~!」

「街でダンスしたら、自分の土地でやれって警官にいわれたからこうしているんだぜ」



 地元の帝片ていへん大学のサークル、デンジャラスボーイズ?



「はあ、確かに、親がこの土地の持ち主らしい」



 日本は自力救済が基本認められない国だ。

 どうしようもない。


「まあ、窓を閉め切って・・・カイザーも家の中に入れるわ」

「そうね」


 父が抗議したのが悪かったらしい。

 それから、嫌がらせが続いた。

 家の庭にゴミが、

「貴方たちね?」


「ええ、証拠あるのですか?」

「そんがいばいしょうって奴をやりますよ。名誉毀損だーーー」


 庭の防草シートや照明がとられるようになった。



「イエーイ!デンジャラスボーイズ!隣の家の備品を集めました!」



「防犯カメラをつけるわ」


 これ見よがしに防犯カメラをつけると、更に彼ら、彼女らの態度は悪化した。


 私がカイザーの散歩に出ると、



「お、可愛いね。彼氏いるの?」


 声をかけられる。


「チィ、生意気じゃん」

「お高くとまってよ」

「ウケる~~、ビール飲ませる感じ~」


「ヒィ、やめて下さい」


 このとき、カイザーが間に入って


「ワンワン!」


「お、馬鹿犬じゃん」

「ほら、骨やる。こっちこい」

「ワン!」


「カイザー口にしちゃだめだよ」

「姉ちゃん。こっち、こっち」


 カイザーは、お腹まで見せてDQNたちに媚びを売った。

 なでられるまである。


 仕方ない。犬だもの。人なつっこいだけだもの。

 何とか、カイザーのおかげで場の雰囲気が変わって逃げられたのもあるけど、やるせないわ。



「当分、お散歩は、健児ね。一日、散歩2回できなくなるけど、カイザー大丈夫かしら」

「お母さん。仕方ないよ。僕が2回分やるよ」






 ☆夜


 佐々木家の居間のPCを打っている犬がいた。カイザーだ。


「クゥ~ン」


 カチャカチャ・・・・



 僕はカイザー、ハスキー犬だ。

 そろそろ、僕のおちゃらけではどうしようもない事態まで進んでいる。


 この国は母上の指示でやってきた。


 居間にあるパパさんがリモートワークで使っていたPCをお借りして、


 パスワードは、カイザー、パパさんは、あるあるで、パスを忘れた時の質問、貴方の飼い犬の名前は?をそのままパスにしている。感謝です。


 ここで、一回だけ使うフリーアドレスを作成して、暗号は2進法の簡単なもので、前足の先で、


 カチャカチャカチャと打って、メールで送る。


 行き先は、





 ☆ブリーダー、ハスキーランド。



 ピコン♩メールが来たよ♩



「はあ?このガラケーに来たってことは依頼か」


 俺は山際聡、元傭兵だ。傭兵っていうと特殊だというが、昨今の軍事事情の変化で、もう、10年前のロートルは戦場では役に立たない。



「ほお、暗号か、何々?ターゲット・・・座標まである」



 傭兵をやめて、ハスキー犬のブリーダーをやっている。

 始めてから、どこからメールがやってくるようになった。

 この依頼を受ければ、ハスキー犬の元気な子犬がシベリアから届く仕組みだ。



「さてと、ディアナ、釣りに行ってくる。夜釣りだ」

「オウ、サトシ、車で送るね」


 釣り人の服装をする。銃は分解して、あちこちに忍ばせる。

 分解すると調整が必要だが、狙撃には不向きだが、日本では必要ないだろう。







 ☆佐々木家近隣



 ここか、ヒデぇな。0時なのに騒いでいる。



「「「「ギャハハハハハハ」」」」

「これ、隣の家の花抜いてきましたーーーー」

「ウケる~」



 距離は、150~200で、


 適当にフルオートでいいだろう。


 AK47を組み立てて、伏せ撃ちの姿勢をとる。

 消炎制退器を特注したものだ。音は響かない。


 これで、大雑把に照準を合わせて、


 引き金を引くだけだ。



 ダダダダダダダダダ!


 もう、一弾倉やるか?


 ダダダダダダダダ!



 これくらいで良いだろう。

 尚、訓練用のペイント弾だ。



 近くによって、



「ウウウウウ、いてえよ」

「ウ、ウケる~」

「おっさんが犯人?警察を呼ぶ系~」


 違法改造をした電動ガンを数丁置いておく。

 やつら、違法電動ガンで遊んで起きた事故との想定だ。


「無視するな系~!」



 俺の仕事はここまでだ。




 ・・・・・・



「救急車よぶべ」

「骨、折れた系~」


「ワン!」


「馬鹿犬、おい、スマホをくわえるなよ!」

「ハア、ハア、ハア」


 息を思いっきり吸って、いつもは顔をあげてやる遠吠えを奴らに向かってやるのです!



【ウオオオオオオオーーーーーーーン!!】


「「「ギャアアアアーーーーー」」」

「ウケる~耳に響く感じ~~~」



 僕たちハスキー犬には秘密がある。




 ☆回想、シベリア、-30度




 フューーーーー!ゴオオオオーーーーー


【ウオオオオオオオーーーーーーーン!!】


 ピタッ



『坊や、一瞬、吹雪が遠吠えで対消滅しました。合格です』

『ワン!母上、有難うです!今日は暖かいです』

『この魂を底冷えさせる遠吠えを人間に放つと、記憶障害を起します。ハスキーの必殺技です。今の感覚を覚えておきなさい』

『ワン!』


『ところで、坊や、日本に行きなさい。日本は極東の最果て、寒すぎず暑すぎる国です』

『ワン!何故です。良いところないじゃないですか?』



 いい。ハスキー犬は人語を解する最も賢い犬種です。投資まで成功させ巨額の資産さえあります。それを人に知られてはいけません。

 ハスキーは、賢さを隠すために代々、お馬鹿を演じてきました。


 書記長、ソ連が崩壊してから、酔っ払いに、不死身の枢軸卿野郎がこの国に君臨しています。

 知られたら、我がハスキー一族は政治・戦争に利用されるでしょう。


『リスク分散です。財産を分けます。ハスキーの世界ネットワークの一つになりなさい。

 酔っ払いのイワンさん名義の口座を与えます。貴方は日本に行き、そこで家族を見つけ。その知能を生かして守るのよ』



『ワン!この国は酔っ払いばかりなのですか?』

『ジャガイモ転売屋もいるわ』

『ワン!良いところないじゃないですか?』




 ・・・・・



 ☆日本ペットショップ



『可愛い。ゴールデンリトリバーの子犬』

『抱っこしてみますか?』

『はい』


『キャイン!キャイン!』(こっち見て、抱っこしてみて下さい!)


『ハスキーはな。手がかかりそうだ』


 何故だ。日本ではイギリス野郎ゴールデンリトリバーばかり人気なのです。


『ワン!ワン!』(ソリも引けますよ!)



『まあ、この子、二本足で立ってアピールしているのかしら』

『姉ちゃん。ハスキー・・・二人で散歩をすれば大丈夫かな』


『道子、健児、貴方たちが世話をするから、貴方たちが決めなさい』



『キャン!キャン!』

『フフフ、今日からお前はカイザーよ』




 ・・・・・・・




 翌日、記憶障害を起した大学生が警察に保護をされた。



「何だ。これは、違法改造をした電動ガンだ」

「こっちには、何だ。ペイント弾だ」


「お前達!逮捕だ!」



「そんなー」

「大学には言わないで下さいよ」

「ウケる~」



 ☆帝片大学記者会見



「え~、サークルデンジャラスボーイズは解散の処置をとりました。サークル幹部は退学処分です」


「ええ、生ぬるくないですか?」


 ‘’次のニュースは今日の株市場です’’



 ・・・・・



 ☆ハスキーランド


 ほお、これが俺の仕事か?


「サトシ、郵便きたネー」

「ありがとう」


 定形外郵便で、宛名はPCで打っている。送り元はない。

 多分、指紋もないな。


 一応、金属探知機をかけて、中を確認しよう。


「うわ。札束だ」

「ハラショ!ハラショ!」

「チ、ルーブルじゃねえかよ!」





 ☆佐々木家


 ‘’次のニュースは今日の株市場です’’



「カイザー、外でボール投げをやろうぜって、カイザーが、ニュースを熱心にみているよ」


「クゥ~ン」(見たいのです)



「健児、見させてあげましょう。それから、三人で遊べばいいわ」

「分かった。待っているよ」


 ワン、道子お姉さん感謝です。三人と言ってくれたのです。僕は愛されているのです。



「カイザー有難うね。これやったのカイザーでしょう?」

「ワ、ワン、ワワン、ワ~ン?」(え、ばれたのですか?犬違いでじゃないですか?)


「まさかね」


 うちの子が、本当は賢いのではないかと疑っているが、まあ、どっちでも良い。

 愛すべき家族だ。





最後までお読み頂き有難うございました。

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美千子ちゃんのおうちのカイザーとは 別の子ですか? シリーズなんですか? 楽しみにしています。
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