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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界令嬢

こっぴどく振られてしまったご令嬢が元婚約者とその浮気相手を見返す為に精一杯にあがいたなら

 わたくしは婚約者であるオラン王子にお呼ばれされ、それはとてもウキウキとした気分で王城へと向かいましたの。


 もしかしたら正式な結婚が決まったのでしょうか? とか。

 そんな事を内心でキャーキャー騒ぎながら私室へと足を踏み入れたのですわ。


 ですけれど……。


「ミランダ! 貴様との婚約もこれで破棄させて貰う!!」


「な、何故ですの?! 理由を……理由を教えて下さいまし!」


「ふん、理由だと。ならばその目で確かめると良い。……キュール」


「は、オラン様。貴方様のキュールはここにおります!」


 部屋の奥から一人の美しいお嬢様が参られましたの。


 その顔には見覚えがございましてですわ。


「な!? 貴女はキュールさん! 侯爵家のご令嬢が何故此処へ? ……まさか!?」


 まさか!? いや、ですがこのタイミングでの登場。


 否定したくても到底出来るものではありませんでしたの。


「やっと飲み込めたようだなミランダ。

そうだ、俺はこのキュールと婚約を結んだのだ。所詮は親が決めて付き合っていた貴様と違い、俺はこのキュールから本物の愛というものを知った。

もはや貴様に用は無い。潔く身を引けば、伯爵家の子女である貴様の面子も汚す事は無い。俺の優しさに感謝して――そうそうに消え失せるがいい!!」


「そ……んな……!」


「という事ですのでミランダさん、これからはこの私が彼の隣に立たせていただくわ。一つ忠告をさせてもらうと伯爵家にふさわしい、それなりの子息のご機嫌取りに励む事ね。気づいたら行かず後家などと呼ばれてしまいかねませんから。ふふふ」


 そのお言葉に一瞬で頭が沸騰してしまったわたくしを、一体誰が批難出来ましょうか!


「――っ! お馬鹿になさらないで下さいまし! わ、わたくしは……」


「ふん、つまらないにお似合いのつまらない意地だ。残念ながら伯爵家の子女は婚姻を遂げる事も出来ずに修道院行きか? はははは! 貴様の父上はさぞ落胆される事だろうな!」


 ですが……。


 それ以上聞いていられず、挨拶も無しにオラン第三王子の私室を飛び出してしまいました。



 彼とはお互いの父同士が決めた仲。しかしわたくしの捧げた愛は本物であったと自負しておりました。


 それが何故? こんな事になるなどと……。


 あのような性格では無かったはずでしたのに。もしや、あれが本性?


 ではそれに気づかずに愛だなんだと叫んでいたわたくしは……。


「ただのおマヌケさんでしたのね……。それでも、それでもわたくしは――」


「ん? これはミランダ君じゃないか。何故そのような涙に濡れているのか? いや、どうでもいいな」


「ぁ……」


 目の周りを腫らしたわたくしに掛けられる声、その主はわたくしの目元に優しくハンカチを当てて下さいました。


「あ、ありがとうございますシュロー王子様」


「気になどする必要は無いさミランダ君。涙を流すご婦人にする行動とは、いつの時代も限られている。ただそれを実行したに過ぎないのだらか」


 シュロー王子。


 わたくしの元婚約者となってしまわれたオラン王子の兄にあたる人物。


 オラン様とお付き合いが始まって以来、何かと優しくして頂きました。


 しかし、彼とお別れの関係になってしまった以上、もうシュロー王子様とも私的に顔を合わせる事が出来そうにありませんの。


「せめて、このハンカチは丁寧にお洗濯してお返しします」


「何がせめてなのか……。あの愚弟の言い分を気に病む事は無い、と言いたいが、君の性格では難しいだろうな」


「ご、御存じでしたの? これはお恥ずかしい……」


「恥ずかしいのはあんな大声で身内の恥をさらした愚弟だ。使用人たちにも聞かれて、兄として頭が痛い思いだよ。そういう意味では君とおそろいだな」


 オラン王子に悩まされ、心を痛めている同士。という意味でしょうか?


「お、御戯れを。わたくしの頭とシュロー様のお頭では比べるべくも無い高貴な違いがございましてですの」


「そう自分を卑下する事も無いと思うが……。今日はゆっくり湯にでも浸かって、そして体を温めてから長めの睡眠をとるといい」


「過分なアドバイス、感謝致しますわ」


「うむ。それでは失礼するよ」


 シュロー王子様はわたくしの元から去ろうとしますが、わたくしはその背中に声をかけました。


「あの! もし宜しければなのですけど……」


「ん? 何かな?」


 ああ! ついに言ってしまいましたわ……。


 でもこのオラン第三王子の私室から逃げ出してきた今のわたくしには、頼れる方はシュロー王子様しかおりませんもの。



 背水の陣ッですわ……!



「わ、わたくしに――あのお二人を見返す術を教えては下さいませんですの?!」


「見返すか……。そうか」


 静かにお呟きになったシュロー様。沈黙が暫く続きましたわ。


 捨てられた。


 その嘆きの後、こうしてシュロー様にも慰められ、心の底から沸いて出た感情がございませてですの。


 それは見返したいという復讐心。


 淑女としてはしたない、それに王子様に対して不躾な御頼みをしている事を承知で、しかしこの沸々を湧き上がるものを止める術を持ち合わせてはおりませんですわ!


「……少々、君にとっては辛い経験をさせてしまう事になるかもしれないが。それでもいいというのなら」


「構いませんですわ! わたくし、お二人を見返すまで平穏を捨て鬼となる覚悟でございましてですに!!!」


「その言葉、確かに聞いた……! ではついて来たまえ」


「はいですッ!!」




 それから本当に、それは本当に厳しい特訓の日々が始まりました。


 しかし、その苦しさがあるからこそ、わたくしの復讐心はさらに燃え上がり決して治まるという事がございませんでした。



 それから二ヶ月後。



「今日までよく頑張ったなミランダ君。付け焼き刃ではあるが、それなりの物を君に叩き込む事が出来たと思っている」


「ありがとうございますです師匠! 過ごした日々は決して無駄にはさせませんわ!!」


「ああ、では行くといい。既に果たし状は送り込んである。後は決戦の場で堂々と待つのみだ」


「はいですわッ!!!」


 生傷が増えてばかりの手を見て、わたくしは決心の足をその場へと運びました。




 決戦の場、シュターロ峠! 深夜!


 辺りが静まり返った頂上にて、わたくしは彼女らと対峙しましたわ。


「ふん、身の程知らずもこの俺のキュールに挑むとは貴様――はっ、ついに気が触れたか?」


「ふふ、そのような物言いは流石に可哀そうですよオラン様。

……ミランダさん、本来なら貴女との決闘にわざわざ付き合う義理はありません。が、私も貴族の子女。挑まれたなら受けて立つ定め、それが愛しい殿方への思いに結び付くならばなおさらの事」


「流石は俺のキュールだ、可愛い事を言う。さあミランダ、この俺の前に無様な敗北を晒し、地に這いつくばって詫びる姿を楽しみにしているぞ。ふはははは!」


「どうとでもお言いなさいですわ。わたくしは勝ちに来た、それだけですので……」


「可愛げの無い。……それでは位置に着け!」


 王子の言葉を聞き、わたくしたちはそれぞれの雌雄を決する”それ”へと近づきましたの。


「さあ行きますわよ。わたくし達の力、あのお馬鹿さん達に存分に見せる時ですわ!!」


 王子がわたくし達の前へと立ち、そして……。



「では――スタートだ!!」



 高く上げた右手を振り下ろしましてですの……!



 勢い良く熱を上げるエンジンが、その瞬間に食らいつくようにがなり上げました。


 先を走るのはキュールさんの乗るLK。八代目となった伝統のLKシリーズ。


 二リットルターボエンジンは力強い立ち上がりとパワーでわたくしを置き去りにするように走り去って行きましたわ。


 バックミラーに映るオラン王子のドヤ顔。これが己のキュールの駆るマシンの性能だと誇っておりましたの。


「ならばその余裕顔、驚愕に染めて差し上げますわ!!」


 彼女の後ろを走る愛車、軽さだけが取り柄とお馬鹿さんにされたこのFA。そのターボモデルであるFASが、六六〇CCエンジンをフル稼働させて必死に追いかけましてよ。


 互いのマシンが奏でるハードなスキール音。

 バトルの興奮は、まずこれを持って高ぶりますわ。


「直線での勝負にこだわってはおりませんわ。それを存分に味わわせて差し上げますですの!!」


 マシンの性能差は歴然。誰が見ても不利だと考えるのは仕方がありませんわ。


 ◇◇◇


 第一コーナー侵入のため減速、最早お互いの距離は切り離され、バックミラーからもその存在を感知することが出来なくなっていた。


「ふ、あの程度の醜い軽自動車でこの私と勝負しようなどと……身の程を知らない者はこれだから!」


 しかしこれで終わるというのは面白くないわ。

 無様は無様なりの足掻きというものをもう少し見せてほしいものだわ。


 前輪への荷重。それにより遠心力が掛かる後輪へのカウンターステア。

 頭に描いた通りの安定感を発生させた車体は、まるで芸術のようなドリフトでコーナーのインを取ると、軽やかかつダイナミックな馬力の再加速を始める。


 背後に気配を感じる。遅いわね。

 今更のコーナー進入、思わず笑ってしまうわ。


 でもこれで終わりなんて冗談だと思いたい。

 こんなところで付く勝負では……。


 もっと完膚なきまでに叩きのめして、私にバトルを挑んだことを後悔させてあげなければ……!


 ◇◇◇


 わたくしの目は確かにキュールさんのLKを捉えました。


 このまま差は詰められるはず、この子の力を最大限に活かせば!


 馬力に大きな開きがある以上は、アクセルに一分の余裕もありません。

 しかし、このマシンの真価はここからですの!!


 LKの前方に見えて来た第二のコーナー。

 少々早い気もしますが……。

 わたくしはマシンを限り無くインに寄せ――仕掛けました!!


 ターンインの態勢へと切り替えたわたくし。その涼しい顔に冷や汗を流させて差し上げますわ。


「な、なんですって?! そんな無茶な走り方で……!」


「このマシンは軽さだけが取り柄だとお思い? それは間違いですわ! このマシンはこういう場面にこそ真価を発揮する車なのですのよ!!」


「追い付かれ……!? あ!」


 外側から内側へ狙いを定めるLK、わたくしのFASがLKのギリギリ横をかすめるですの。

 横並びになる両者、ここまでがわたくしの狙い。


 目標は二つ目のヘアピン……!


 コーナリングにおいて不利な外側、ここからインを付くのは至難ですの。

 相手もさるもの、決してインを突かせないと加速して来ますわ。


 次のコーナーまでの距離はわずか、本来のマシンスペック差から考えてこの加速勝負、こちら側に勝ち目はありません。


 ……これが平地ならば、ですわ!


 ◇◇◇


「ちぃっ! 相手は速度が乗ってるわ、でもそんな程度のスピードなら……!」


 いくら横並びの状態とはいえ相手はアウト。インのこちらが確実に有利。

 それに馬力差から考えて、いくらスピードが乗った相手でも……!


 コーナー入口、ブレーキングに入った私の隣にあの醜いFAが並ぶ。

 それだけでも嫌気が差す。貧弱なくせにバトルマシンを装うその姿、反吐が出て仕方が無い。


 ここでちぎって……何!?


「前に出たですって!? ……大丈夫よ何を焦ってるの私。バトルはまだ始まったばかり、このくらいの華……持たせた方がむしろこちらの格好がつくというものッ」


 それに相手はまだ抜け切れたというわけじゃない。


 この先はコース最長のストレート。パワーで勝る以上どうとでもなるポイントだ。


「そうよ……。ふふ、むしろあの娘の希望を摘むのにいいポイントだわ」


 そう思っていた、こちらにはまだ全くの余裕があると……。


 ◇◇◇


 このストレート、コースで最も加速が要求されるポイントですの。

 パワーの無いこの子にとっては最大の泣き所でもありますわ。


 力強くアクセルを踏み切るわたくしのFASの隣、彼女のLKがブースト圧を上げていましたわ。


 彼女にとってもここは仕掛けるポイント、むしろLKが最も得意とする戦場でございましてよ。


 たやすく前に出た……いえ、出させたこのストレート。

 さあ――今こそ度肝を抜く瞬間ですわッ!!


 狙うはそう、コーナーのイン……そのさらに内側にある――ッ。


 狙いは決して外しませんわ!!


 ◇◇◇


 また抜かれた!?


 いえ、あの娘はさっき私よりも前に出ていた。

 加速が乗っていた分、此方を抜きやすかったという事ね。


 でもそれだけじゃ――なんですって!!?


「あ、ありえない……! そ、そんなバカな!?」


 だってそうでしょう。確かにFAはオーバースピードでコーナーへと入った。

 横並びにアウトを取らざるを得なかったとはいえ、焦る必要はない。

 あんな無茶な加速ではブレーキにも相応に気を付けなければならないからだ。


 このLKの戦闘力ならアウトからでも抜き返せる。

 相手が立ち上がりに手間取ってる間に優雅に再加速出来る。そのはずだったのに……。



 ありえないものを見た。



 ◇◇◇


 ガードレール外。

 ギャラリーたちは派手な立ち回りを見せたFAに大歓声をあげざるを得なかった。


「うおおお!! な、なんだあのFA!? こ、コーナリングで加速して行きやがったぞ!!」


「うそだろおい!? どうやったらあんな事が出来る?!」


「普通コーナリングってのはスピードを落とさなきゃ抜けないはずだぜ? お、俺目がおかしくなっちまったのか!?」


 ◇◇◇


 遠くに歓声を置き去りにしてわたくしは前へと出ましたの。


 きっと皆さん驚いた事でしょうね。

 これこそが師匠との特訓の成果……! この峠だからこそ使用できる秘技!


 あのストレート終点のコーナーには小さな側溝が彫られておりますの。

 これにイン側のタイヤを引っ掛ける事によって――スピードの減速をコーナリング中に取り戻す事が出来るんですわ!


 本来オーバースピードで進入すればアウト側へ膨らむのは確実。

 しかし、側溝に落としたタイヤがそれを防ぐんですわ!


 進入時よりも鋭さを増しながら、コーナーを抜けて行くこの感覚っ!


 わたくしも初めて聞いた時は耳を疑いました。

 しかし師匠はこの技を熱心に教えて下さいましたわ。マシンのスペック差を埋める数少ない方法。


 それは、マシンの軽さと旋回性能と――この技ですわ!


 ◇◇◇


「おかしい、どうして差が縮まらない……! どうして開いていくの!」


 よしんば旋回で負けたとして、この子のパワーを持ってすれば簡単にストレートで抜き返すことができる。


 だというのに。


 コーナーを繰り返す度、そもそも縮まるどころが広がっていく。


「ありえない……っ」


 奥歯が軋む。認めたくない現実に噛みしめてしまうからだ。

 ブースト計は正常に作動している。何一つ問題はないはずなのに……!


「こんな……こんな事って!」


 コーナーが迫る度にブーストが抜けて行くのが歯がゆくて仕方がない。

 条件は向こうの方が不利なはずなのに。


「負けてなんていない! この子のスペックはあらゆる面で上回っている。……なのにっ!」


 ほんの少し、いつもよりもムキになってコーナーへの進入速度を上げただけで、まるで初めて乗った時のように言う事を聞いてくれない。

 いつものようなラインを描けなくなる。 


 知り尽くしているはずの特性が、全く別の生き物のようにまるで理解が出来なくなっていく。


 怖い……。信じていた私のマシンが。


 想像以上に膨らんでいくライン。無理に抑えようとすると今度は逆方向に膨らむ。

 己が初心者だった頃のようなイージーミス。


「認めたくない……っ。わ、私がこんな無様を晒すなんて……!」


 ◇◇◇


 五連続のヘアピンを抜け、最後はこのストレートを抜けた先にあるコーナーだけ。

 そこを抜ければゴールは目前ですわ。


 フロントガラスの向こう、ガードレールの脇にチラリと映るギャラリー。

 おそらく外では大歓声が響き渡っている事でしょう。

 コースにタイヤを食べさせながら走り続けて来た甲斐があるといもの!


 しかし、決して気を抜いてはなりませんの。


 勝負はそう――最後まで分からないものなのですから……!


「来ましたわね……!」


 バックミラーに映るヘッドライト。

 ヘアピンから抜けて来た彼女のLKが最後の加速態勢に入りました。


 お互いに熱ダレを起こし掛けているこのタイミング。


 これが最後の大勝負! ですわ!!


 ◇◇◇


「負けられない!! あんな……あんな醜い軽自動車なんかに――!」


 ◇◇◇


「おおおお突っ込んで来たぞ!! あのLK尋常じゃないスピードだぜ!」


「横並びになった……。そのままコーナリングに入ったぞあの二台!?」


「インがFAのままだ、すげぇブレーキングドリフトだぜおい。でもLKの立ち上がりなら巻き返しは――何!?」


「アンダーだ!! LKがアンダーを出したぞ!!」


「スピードが乗り過ぎたんだ! 外に膨らんで行く! やべぇ!? ガードレールに一直線だ!!?」


 ◇◇◇


 体に走った衝撃。


 熱くなっていた頭が、白く冷めて行く感覚に襲われた。


 曲がり切れず、車体側面をガードレールにぶつけて。


 フロントガラスの向こう側、遠くに消えて行くFAのテールランプを見つめながら……。


「負け……た?」


 認めてしまった。どんなに嫌な現実でも、私は……。


「くっ……、ぁあ……! わ、私が……ぁ」


 悔しい。悔しくて、フロントガラスに雨がぽたぽたと降り当たるように、視界が滲んで行く。


 負けた。


 負けてしまった。


 ただ、ひたすら無様に……。


 ◇◇◇


「負けた……? キュールが、ミランダに?」


 ありえない報告を聞いて、愕然とおろした腕。


 俺の手に持っていたスマホが地面にポトリと落ちた事に気づいたのはしばらく後だった。


 ◇◇◇


「やったやった! やりましたわお師匠! シュロー様!!」


 麓の駐車場へと到着したわたくしは、精一杯に頑張った愛車を止めて、一人待っていたその方へと飛びつく様に勝利の御報告を行いましたの!


 わたくしの我が儘を聞き入れ、走りの術を叩き込んでくれたシュロー様。


「よくやったなミランダ君。私も鼻が高い思いだ。浮かれすぎも良くないが……今日ばかりはそれもいいだろう」


「ありがとうございます! 貴方様がいらっしゃらなければ、わたくしっ……! うぅ……」


「やれやれ、その泣き癖は変わらずだな。胸を貸そう、今は存分に泣くといい」


「うう……っ! しゅーろーしゃまぁああああ!」


 感極まったわたくしを、篤いお胸で受け止めてくれたシュロー様には感謝しかありません。


 この方のおかげで、わたくしは今こうしていられるのですから!


「うぅ……大好きでしてのぉおお!」


「ははっ、ムードも無いな。だが、私達らしいと思わないか、ミランダ君?」

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