真珠の眼をした女の子。1
俺の名前は、鳴鐘純。
42歳、独り者のバツイチ独身。
まあ、俺にも結婚と言うものに憧れて、一緒になった人がいた。
もう15年前の話だ。
あの頃の俺は、まだ若くて世間を知らなかった。
自分で言うのも何だが、何もせずとも子供の頃から目立つ存在だった。
それを嫉妬する奴等は、何処にでも必ず現れた。
そして、小学校から中学まで続く、過酷な集団での無視。
それでも悔しさを堪えて、笑顔で登校した。
自然と、高校は遠い場所にした。
新しい場所で、まっさらになって、自由になりたかったからだ。
しかし、高校、大学と新しい仲間と知り合い、それなりに友達付き合いはしていたけど、結局は自分から過去の事を恐れて、何処か距離を置く様になってしまっていた。
孤独は一段と深まって行く。
だが、そんな俺にも彼女もそれなりに出来た。
だけど、惚れた人達は、理不尽な要求ばかりを繰り返して、それが満たされないと分かると、直ぐに俺のもとを去って行った。
また一段と、孤独が深まる。
そんな時に、孤独な俺に手を差し伸べてくれた、少し歳上の優しい女性。
それが、昔の妻だった。
だけど、その妻にさえ知人の妻子持ちと不倫された。
俺の心は、この時なにか音を立てて崩れ落ちて行った。
『人は信じてはいけない。』
それが、答えだった。
『では、今日はお先に失礼します。』
『お疲れ様。』
『おお、早いな。
今週は後半戦がハードだからな。
ゆっくり休めよ。』
『はい。 では、お疲れ様でした。』
『しかし、オマエは一人身で気楽で楽しそうだよな〜〜。
羨ましいよ〜〜。』
『ま、まあ。
欲しい物を買って、好きな様に生きる!
それが、独身の醍醐味ですから!』
鳴鐘純、バツイチ独身42歳。
周囲からは、自分の好きな様に生きていると思われていた。
だが純は、それを否定する気は無い。
しかし、周りが思っている程、決して楽しくは無い。
夜になると、孤独が自分の身体を包み込むからだ。
『取り敢えず、コンビニでコーヒーでも買って帰るか。』
呟きならがら車のエンジンを掛ける。
そして、車のフロントガラス越しに、真っ暗になった星を眺めた。
『楽しい……か。』
含み笑いを浮かべながら、車を走らせた。