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過去の自分と未来の自分

作者: YI

小学校に入学したら友達を作り楽しくお喋りするのが憧れの学校生活だった。

しかし私にはそんなことは一度も巡ってこなかった。

「何か喋って」「あって言ってみて」この言葉が私が小学校に入学してからクラスの子に最初に言われた言葉だった。

今でもその時の状況、気持ちを鮮明に覚えている。

私の名前は花守優希(ゆき)。今日は高校の入学式だ。

高校生活もきっと今までと変わらない。友達もできず、周りからは変わり者扱いされ、ひとりぼっちな生活だろう。

私は話したくても話せない「選択性緘黙症」という病気を持っている。原因は自分でも分からない。小学生の頃は単なる性格だと思っていて気にしていなかった。けれど、国語の授業の音読で私が話さないことにより授業はストップ。先生も「読み終わるまでずっと立ってなさい」と言うだけで時間だけが過ぎて行った。すると先生から「人に助けてもらおうとするのは甘え。もっとしっかりしろ。」と言われその時間は苦痛でしかなかった。それ以来私の心は崩れていき、自分は甘えているのだと強く思うようになり相談するのは甘えと言う考えが頭から離れなかった。悔しくて私はネットで調べ、選択性緘黙症という言葉に出会い、自分はこれなのだと思った。中学生の時私は卓球部に入っていた。小学校のクラブ活動で卓球をやっていた私は中学でも卓球を続けようと思った。正直言うとあまり上手ではない。でもスポーツの中では卓球が好きだ。けれど、顧問の先生が私と相性が悪く、部活も楽しめず、中学校生活は終わった。そして高校は知り合いのいない少し遠い高校を受験した。そして入学式がやってきた。満開の桜の中新入生の笑顔も綺麗に輝いていた。しかし私の心は不安と緊張に支配され笑顔なんてない。学校で笑顔になった覚えもない。「これからまたあの生活が始まるのか・・・」そう思い私は自分の教室へと向かった。ホームルームが始まるまで周りの子たちは友達を作っていた。

「私には友達ができない・・・」そう思っていると隣の席の男の子が私に話しかけてきた。

俺、中森純一。よろしくな。私は心の中で宜しくと言いながら頷いた。「不思議だ。話さない私のことを変に思わないのかな?」そうしていると担任の先生が教室に来てホームルームが始まった。クラスのみんなのことを知るために自己紹介が始まった。この学校での自己紹介は一人ずつ自己紹介をするのではなく、まずは隣の席の子と話し、その後は自由に会話をしていくと言うやり方だった。私の隣はさっき私になぜか声をかけてくれた中森くん。自己紹介が始まった。

「さっき名前言っちまったけど改めて。俺は中森純一。もし伝え辛かったら紙に書いてでもいいぞ。」

私は中森くんが私の心を読めているみたいで驚いた。私は紙に自分の名前を書いてみせた。「花守優希か、いい名前じゃん」そう言われ私はなぜかドキドキした。人前だから余計緊張が増してるのかな。すると中森くんは私を引っ張って代わりに私のことを紹介してくれた。周りの子も違和感なく「宜しく!」と言うだけだった。そして自己紹介の時間が終わり今日は下校。すると中森くんが「花守ってさメールとかやってる?良かったら交換しようぜ!」私はそれを聞いてスクールバックからスマホを取り出し、メールを交換した。そして帰りも駅まで一緒に帰った。中森くんは「じゃあまた明日!」と言って帰って行った。私は自分の家に着くと安心感に包み込まれた。ここが私にとっては憩いの場所。するとメールが1件届いていた。確認すると中森くんからだった。 内容は「今日の入学式どうだった?緊張するよな〜。これから宜しく!」私は何で返せばいいのか分からなかったので「こちらこそ宜しく」と送った。次の日学校に来て席に座ると中森くんが「おはよう!花守!」と声をかけてきてくれた。私は頷きで返した。中森くんは「昨日のテレビ番組見た?面白かったよな!」と会話をしてきた。私は面白かったと紙に書いてみせた。中森くんは「そうだよな!」と楽しく話していた。中森くんは「花守も何か聞きたいこととかあったら遠慮なく言えよな!メールも交換したことだし」私は聞きたいことが一つだけあった。どうして私にそこまで優しく接してくれるのか?それだけが気になっていた。授業も終わり、帰りの準備をしていると中森くんが「今日も一緒に帰るか!」そう言って私は今日も中森くんと一緒に帰った。そして私は家に着いたらスマホを取り出し中森くんに「どうしてそこまで優しく接してくれるの?」と送った。すると驚くべき返事が返ってきた。「花守ってさもしかして選択性緘黙症?」その返信に驚きを隠せなかった。知らない人が多い病気なのに何で知ってるの?私は不思議な気持ちでいっぱいになった。私はすぐに「そうだよ。でも何で選択性緘黙症のこと知ってるの?」と送った。「実は俺も昔そうだったんだ」と返ってきた。私はさらに驚いた。中森くんが選択性緘黙症だった!?私から見るとそう思えない。「花守、何か俺に相談したいことあるか?」とメールが来た。

相談・・・甘え・・・昔の言葉が再び私を苦しめる。それでも私は思い切って中森くんに私の過去の出来事を話した。

すると「そいつ言っていることおかしいよな。相談=甘えって。もちろん我慢するのも大事な時はある。けれど全てが甘えってわけじゃないだろ。誰だって辛い経験をすれば傷つくし、人に頼ることなんてみんなしてることだよ。」私はその言葉を聞いて今までこの言葉が私の心を閉ざしていたのだと確信した。

「中森くんは何でそんなに優しく接することができるの? 辛い目にあって人を恨んだりとかはしないの?」

「もちろん最初は恨んだり、自分を責めていたことはあったよ。でも、もし自分が選択性緘黙症じゃなかったらその人たちに合った適切な対応できてたかな?と考えたんだ。多分、いや絶対できてなかったと思うんだ。だから今は過去のことを恨むよりも今と向き合って少しでも選択性緘黙症で苦しんでいる人の力になりたいなと思ったんだ。」

私はそれを聞いて恨みとか過去の事とかバカらしく思えてきた。何だか私変わった気がする。

「でもそんな中生きているの辛くなかった?」と送ると

「生きている限り、これから必ずできることがある。俺の好きな言葉でさ、励ましにもなっているんだ。だから今は経験者として選択性緘黙症で苦しんでいる人を助けたいと思ったんだ。それで大学で心理学学んで、心の病気とかそういうのを知って、助けていきたいなと思っていたんだ。」

生きている限り・・・できることがある・・・その言葉で私は今までの自分は間違っていたのだと気づいた。

私は「ありがとう。大事なことを教えてくれて」と送った。

中森くんは「何かあったら遠慮なく相談しろよな!高校生活一緒に楽しもうぜ!」と送ってきた。

2年後。私たちは3年生になった。中森くんのおかげで私は文化祭や修学旅行を楽しむことができた。気づけば不安や緊張も弱まっており、楽しい気持ちでいっぱいだった。後でわかったことなのだけど、自己紹介をする前、中森くんが周りの子に私が選択性緘黙症かもしれないことを伝えていたみたい。私は心の闇を取り除いてくれた中森くんにすごく感謝している。そして彼への想いも次第に強くなっていた。進学先を決める時、私は中森くんと同じ大学を受けることを決めた。そして私は中森くんと一緒に心の病気で悩んでいる人の助けになろうと思った。私は熱心に勉強し、大学に合格。

中森くんから「おめでとう!お互い頑張ろうな!」とメールが来た。そして私は中森くんに想いを打ち明けた。すると中森くんも私の事が気になっていたみたいで、両思い?ってやつ。私を正しい方向に導いてくれた中森くんは私にとって特別な存在。この気持ちはこれからもずっと無くならないと思う。高校を卒業し、春が来て私たちは大学に入学した。前の私とは違って満開の桜のように私も笑顔になっていた。私たち二人はこれから先悩んでいる人の心の支えになりたいと強く思い共に大学生活を送っている。悩みを抱えている人がいたらその人の心に寄り添って助けてあげてほしい。それが私の一番の願いだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 中森君、良い人ですね! 前向きな未来にホッとしました。
2022/11/09 20:16 退会済み
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