12,余韻の風に乗って
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俺は有芽からのメールを読んでいるときは涙をこらえるのに必死だった。今日は散々、パーソナリティーのハルこと本名は悠くんに迷惑をかけてしまった。
メールを読んで、もっと心をかき乱されるかと思った。ラジオが終わったら放心状態みたいになるのかと思っていた。
けれど、そんなことは無かった。番組終了と同時に緊張の糸が切れても、再び号泣することも、放心することも無く。なんだか心が軽くなった。
悠には凄く優しく笑うんですね、と言われてしまった。
俺は結構夢見がちだから。
ラジオネーム有芽さんは、本当に有芽だったんじゃないかと思う。きっと社長に言ったら、それでいいんじゃない? と笑いながら言われると思う。
丁度、流していたエンディング”迷わないで、探さないで”の曲が終わり、音が途切れた時、ラジオは、プログラムで別番組の録音してあった再放送に切り替わった。
ふわりと花びらなんかを舞い上げるような、優しい風が吹いて。
スタジオ横の、事務所のドアベルがチリリンと鳴った。
鈴の音に合わせて、ありがとうと聞こえた気がした。
気のせいかもしれない。けれど、とても久しぶりに、幼馴染の声を――やけに鮮明に思い出した。