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美人な幼馴染に振られてしまったけど、もう一人の可愛い幼馴染は俺に優しいです!

 俺は愛実の提案に乗って、イメチェンすることを決めた。せっかくだからと一緒に見て回ろうと約束をし、当日を迎える。俺たちは服屋で自分好みの服を買い、雑貨屋で自分の好きな匂いの香水を買い、そして美容院へと向かう──。


 当たり前の事なのかもしれないが、今まで美香に合わせて色々と考えながら選んでいたから、自分が思ったまま買い物が出来て、とても充実しているように思える。今もこうして自分が思う髪型に出来て、満足だ。付き合ってくれている愛実に感謝だな。


 俺はベリーショートにしてもらうと、待ち合わせ場所のベンチへと向かった。愛実の方はまだのようで、座って待つ。

 愛実はどんな髪型にするんだろ? 楽しみだなとソワソワしながら待っていると、遠くから笑顔で手を振りながら近づいてくる女性が目に入る。


「まじかよ……」


 愛実は長かった髪をバッサリ切り、ショートボブになっていた。しかも茶髪にしていて雰囲気がガラッと変わっている。


「どうかな?」

「めっちゃ可愛いよ」


 これで化粧をしたら、どんだけ可愛くなるんだろって思うぐらい。


 愛実は照れくさそうにうつむくと「ふふ、ありがとう」


「先輩の方もカッコいいですよ! 何だか昔に戻ったみたい」

「あぁ、そうか。昔は短髪だったからな」

「はい。その方が先輩らしくて良いです」

「ありがとう。それじゃ飯にしようか?」

「はい」


 俺達は肩を並べて歩きだす──。気のせいかな? 肩と肩との距離が妙に近い気がする。意識したせいで動きがぎこちなくなってしまう。


「ねぇ、先輩」

「ん?」

「──昔みたいに手を繋いでくれないんですか?」


 甘えた? ようにそう言う愛実の言葉に心臓がドキンッと高鳴る。


 え? それってどういうこと? 確かに昔はよく手を繋いで遊んでいたけど……大きくなった今とじゃ意味が違うだろ? そう思いながら愛実の表情をみると、だんだん暗くなっているように見える。


 ──いや、きっと彼女にとっては今も昔も変わらないのかもしれない。


 俺は躊躇いながらもゆっくりと愛実の手に向かって手を伸ばし──優しく握った。柔らかくて温かい手がとても懐かしく感じる。


「ふふ」


 愛実は今にもブラブラと手を揺らして歩きそうなぐらいの満面な笑みを浮かべると、正面を向いて歩き出した。その笑顔をみて俺は思わず「ふ」と笑ってしまった。


「どうしたの?」

「何でもない」

「ふーん……」


 愛実は不安そうだけど、子供っぽくて可愛いなんて言えないもんな。


 ※※※


 俺たちはファミレスに着くと、お互い好きなものを注文して、会話を楽しみながら食事を楽しんだ。食後のコーヒーが来ると、スティックシュガーの封を開ける。


「ねぇ、先輩。聞きたいことがあるんだけど良いかな?」


 俺はコーヒーに砂糖を入れながら「ん、良いよ」

 愛実はコーヒーをスプーンで混ぜながら、黙り込む。何か言い辛いことを言おうとしているのか?


「私がこんなことを言って良いのか分からないけど……先輩は美香と付き合っていて楽しかったですか?」

「え?」


 突然の質問に、砂糖を全部入れてしまう。


「あ、ごめんなさい。突然で困ってしまいましたよね?」

「あ、いや、大丈夫」


 内心、動揺しているものの俺はそう答え、空になったスティックシュガーを皿に置く。ゆっくりスプーンでコーヒーを混ぜながら「──楽しい時もあったっていうのが正解かな。正直、いま振り返ってみると、最近は合わせるのがやっとで楽しんでいなかったと思う」


 愛実は表情一つ変えずに、持っていたコーヒーをゴクッと一口飲むとテーブルに戻し「やっぱり、そうだったんですね。勘違いじゃなくて安心しました」


「やっぱり?」

「実は前に、デートしているところを見かけた事があって、先輩が楽しそうにないなぁ……って感じて」

「あぁ……そうだったんだ」

「盗み見るようなことをして、ごめんなさい」

「いや、大丈夫だよ」

「良かった。ところで先輩、次はどうします?」


 俺はコーヒーを一口飲むと「俺の用事は済んだけど、愛実はどうしたい?」


「私もこれといって用事は無いです」

「じゃあ今日は帰ろうか?」

「はい」


 俺たちはゆっくり会話をしながらコーヒーを飲み干すと席を立つ。


「それじゃ忘れ物ないね」

「はい。──あの、先輩」

「なに?」

「今日は楽しかったです。また遊びましょうね」


 彼女の一言が嬉しくて笑みが零れる。俺も同じ気持ちだ。


「あぁ、また遊ぼうな」


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