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憎たらしいクラスメイトが、お前みたいな冴えない奴を好きになる奴なんていないと言ってきた。いや、こんな俺でも好きになってくれる女子は居る! そう信じていたから、可愛い彼女が出来ました!

 それから数カ月が過ぎ、冬の季節となる。俺は粉雪がチラホラ舞う中、家へと向かって歩いていた。


 ──すると、コンビニから出てくる篤を見かける。このまま歩いていても追いつくことはないけど、一緒の方向を歩いているだけで嫌になる。俺は角を曲がり近くの公園で時間を潰すことにした──。


 公園に着くと自動販売機で温かいコーヒーを買い、ベンチに積もった雪を振り落として座る。さすがに雪の中、公園を利用する人は居ないため、シーン……と静まり返っていた。チビチビとコーヒーを飲んでいると、愛羅さんが公園に入ってくるのが目に入る。


「一人でどうしたん?」

「篤が目の前を歩いていたから、時間潰しをしようと思って」

「あぁ……」

「愛羅さんは?」

「うちは夢君が公園に入っていくのが見えたから、気になってん」

「あぁ……そういうことか」

「うちも時間潰す!」と、愛羅さんは言って、ベンチの雪を払うと、俺の隣に座った。


 ──何をする訳でもなく、二人で雪を見つめる。


「なぁ、夢君。テーマパークで買った魔法石、持ってる?」

「うん、持ってるよ」

「あれって体温で色が変わるんやろ? ちょっと見せて」

「良いよ」と俺は返事をして、上着のポケットから魔法石の玩具を取り出した。


「冷たいと青なん?」

「うん」

「じゃあ、温めてみて」

「分かった」


 俺は魔法石を右手でギュッと握り温める──少ししてパッと手を開くと魔法石はまだ所々が紫色に変わる程度だった。


「これが完璧?」

「いや、完璧に変わると赤だよ」

「へぇ……」と、愛羅さんは返事をすると、俺の方へと左手を伸ばし、魔法石を握っていた俺の右手をギュッと握った。


「これならどうやろ? 完璧に変わるかな?」

「さ、さぁ、どうだろ?」


 愛羅さんのスベスベで温かい手が、みるみる俺の体温を上げていく。


「ふふ……こうやって手を握っていると、何だか醜い魔法使いの、あのシーンを思い出すね」


 貴重な魔法石の力を使い果たし、もうアルウィンが元に戻れないことを知るソフィア。彼女は魔法石を握り締めたアルウィンの手を取り、涙を流しながら謝罪する。そんなソフィアをみて、アルウィンは優しく微笑み、ソフィアの手を包み込むかのように握りしめる。あのシーンの事か。


「確かに……」

「──うちな。小さい頃からガサツとかデリカシーがないとか言われとってん。でな、可愛いものとか恋愛ものとか、似合わへんって言われてきてな。可愛いと思って始めた偽の関西弁以外、本当は興味があるのに隠すようになってん」


「そうだったんだ……」


 愛羅さんはそう言って、悲しそうな表情で俯くと「だから……篤にあぁ言われた時、涙が出そうなぐらい、むっちゃ悲しかってん」


 顔を上げると、にっこり微笑み「でも夢君はあぁ言ってくれたから、すごく嬉しくて、あぁ……夢君をテーマパークに誘って本当に良かったと思えた。ありがとな」


「うん」

「うちがな。夢君ならテーマパークに誘っても大丈夫だと思ったのは、周りに馬鹿にされようが、自分が好きなものを貫き通せる夢君なら、ありのままのうちを晒しても差別することなく接してくれると思ったからねん」

「あー……なるほど、そうだったんだね」


 愛羅さんが突然、落ち着かない様子で髪を撫で始め「あのな……うち、夢君のこと好きやねん」


「え、本当?」

「うん、本当や。もちろん恋愛の意味やで」と愛羅さんは言って、髪を撫でていた手を止める。


「嬉しいな……実は俺も、オタクで冴えない俺を差別することなく、優しく接してくれる愛羅さんの事が、ずっと好きだったんだ」

「そうなんや……うちら両想いだったんやね」

「うん」

「ふふ……なぁ、そろそろ色が変わったかな?」

「どうだろ? せーので見てみようか?」

「そやね。 じゃあ──せーの!」と、愛羅さんが声を掛け、握っていた手を離す。魔法石はきちんと赤色に染まっていた。


「はは、本当にアニメの通りになったね」

「そやね。じゃあ……その続きしちゃう?」


 その続きとはつまり、愛を確かめ合ったことで魔法石に力が戻ったことを喜び、二人はキスをするシーンの事だよな!? 俺はゴクリと唾を飲みこみ「うん……したい」


「じゃあ、目を瞑ってや」

「分かった」


 俺が目を瞑ると、フワッとシャンプーの香りがして──人生で初めてのキスを交わす。信じ続けていれば、誰にだって奇跡は起こるんだ。それを実感する一時だった。



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