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憎たらしいクラスメイトが、お前みたいな冴えない奴を好きになる奴なんていないと言ってきた。いや、こんな俺でも好きになってくれる女子は居る! そう信じていたから、可愛い彼女が出来ました!

 次の日の朝。愛羅さんが教室に入ってくるのを見かけ、席を立つ。──するとなぜか、篤が愛羅さんに近づいた。


「あれ、お前。そういうの付けるんだ」と篤が言って、昨日、愛羅さんが買ったソフィアのキーホルダーを指さす。愛羅さんはムッとした表情を浮かべ「なに? あかんの?」


 篤は見下すように笑いながら「似合わねぇ。女子かよ!」


「うちは女子や!」


 あいつとは出来るだけ関わりたくない。でも……でも、さすがに頭きた! 俺は制服のポケットに忍ばせていた魔法石の玩具をギュッと握りしめ、愛羅さんのもとへと向かう。


「──愛羅さん、ちょっと良い? 廊下で話したいことがあるんだ」と、話しかけると、愛羅さんは何か言い足りない様子だったが、俺に付いてきてくれた。


 本当なら篤に向かって言い返してやりたい。だけど愛羅さんには悪いが、今の俺に出来るのは引き離す事ぐらいだ。教室を出て、廊下の端で立ち止まる。篤が付いてきてない事を確認すると「気にしなくて良いよ」と愛羅さんに声を掛けた。


「分かっとる……分かっとるけど、メッチャ腹立つねん!」

「そうだね。気持ち、凄くわかるよ。俺も似たような事をあいつに言われたしね。でもあいつと関わるのは、あと1年だけ。ここで相手にして更に悪化させるより、無視していた方が楽しく過ごせるんじゃないかな?」

「せやけど……」


 そりゃ、直ぐに納得なんて出来ないよな。俺も気持ちを落ち着かせるのに時間が掛かった。何とかしてあげたい。何か掛ける言葉は無いか。


「──あのさ」

「なんや?」

「愛羅さんは女子だよ。昨日、一緒に遊んで魅力的な所を沢山みて、その……可愛いなって思った」

「え……」


 愛羅さんは目を丸くして驚く。そりゃ、行き成りそんなことを言われたら驚くよな。自分で言っていて、今すぐこの場から立ち去りたいぐらい恥ずかしい。そう思っていると救いのチャイムが鳴った。愛羅さんは屈託のない笑顔を見せると「ふふ、ありがとな」と言って、教室へ入っていく。


「ふー……」


 とりあえず元気が出たみたいで良かった。俺はそう思いながら教室へと入った。


 ※※※


 それから数日が経つ。言い返して来ないのがつまらないのか、篤はそれから絡んでは来なかった。休み時間に入り俺が自分の席で携帯をいじっていると、「なぁなぁ、夢君」と愛羅さんが話しかけてきた。俺は携帯を上着のポケットにしまうと「ん? なに?」


「夢君の部屋にDVDプレーヤーあるん?」

「うん、あるよ。どうしたの?」

「良かった! 醜い魔法使いの実写版DVDを買ったんやけど、二人で観ようや」

「良いけど、お、俺の部屋で?」

「ごめんな。うちの部屋でって言いたかったんやけど、家にはプレーヤーが居間にしかなくて」

「あぁ、そういうこと。良いよ」


 愛羅さんは両手をポンっと合わせると「堪忍な。それで観る日やけど、日曜日でえぇ?」


「うん、大丈夫」

「ほな、楽しみにしとるから」と愛羅さんは言って、小さく手を振ると自分の席の方へと戻っていった。


 俺の部屋か……とりあえず片付けて、掃除しておかないと。


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